おわりのはじまり

友人が来てくれた時、たまたま入口で声をかけたわたしに、「なんと、現場にいるなんて」と言った。
「現場にいるどころか、毎日いるよ」と笑って答えたけれど、今まで現場にいなかったのは、このフェスティバルが始まってから3日きり。それ以外は、ずっと現場にいる。
鍵を開け、ゴミを拾い、ここに来る人すべての安全を確保し、すべてが滞りなく心地よく過ぎていくようにつとめる。それが自分の役目だと思っている。

何かが生まれ(もしくは生み出し)、それを世に出し運用していくすべての過程が好きなのだと思う。わたしに、誰よりも得意なことは何もない。その代わり、苦手なこともほとんどなくて、そういう意味では究極に平凡なのだが、こうやって、なにか初めてのことを大きな失敗をせずやることには、比較的向いているのかもしれない。

今回の現場はあと10日あまり。もう終わりが見えてきて、ほっとするのと同時に、少しさみしい。早朝、誰もいない現場で、ひとりでぼんやりするのが本当に好きだ。あのときも、いまも、いつも。

宝物のようなこの場所とも、遠くないいつかさよならすることになる。それが分かっているぶん、なおさら、皆の心のなかにきらきらした思い出を、できるだけつくりたいと思う。あとほんの少しのあいだ。


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