もし、

「わたしが明日死んだとしたらどうしますか」
「死なないから大丈夫だ」

そんな会話を経営者とするのは馬鹿げたことだとは分かっているけれど、少し疲れていたので思わず口をついて出てしまった。ただ、そのことで少し気が軽くなった。3ミリくらい。

「お前と同じレベルの人間は雇えない」

そうなのだろう、きっと。
わたしだって20年を無為にすごしてきたわけではない。
でも、仕事はひとりでするものではない。ここは会社なのだ。チームに新しい人を迎えたい、という希望くらい叶ってもいいじゃないか、と微かに思う。

そんなやりとりがあったあと、前から欲しかったCHANELの時計を買った。自分のためだけの記念。
わたしは、マドモワゼル・シャネルが好きだ。彼女が女性の身体をコルセットから解放しなければ、わたしは今、こうして働いていないと思うから。シンプルで着心地がよく、無駄のない黒い服は、わたしにとっては自立の象徴で、憧れだから。

いつまでも自立して、働いていく。
今関わっているプロジェクトが一旦の成果を出すのが9月末で、それまでは全力で走りぬけると、6月の夜の道を歩きながら、自分に約束した。

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