五月の風

ほんの数日前には眠っていた緑が、一時に芽吹き始めた。麗しい五月。風が薫るのも道理だという気がする。
季節がひっそりとその息づかいを変える、そういう日が一年には何度かあって、目の前で起こるその美しいできごとを、わたしたちはただ黙って感じているしかない。

いずれにせよ、この時期の木々のきらめきは、ものぐるおしい。木立のなか歩きながら、自分がどこか何かに還っていくようで、熱狂のなかしんとしていくこころをうっとりと、鬱蒼と眺めている。

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