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「肉食者は菜食者より骨折率が高い」の真相

【骨折率と食べ物の相関関係】

 病気は、1つのメカニズムによって発症していくというほど単純なことはめったにないが、多くの研究によって「動物性タンパク質の摂取」と「骨折の発生率」との関係が明確に立証されてきている。

 2000年にはカリフォルニア大学医学部サンフランシスコ校による研究が報告された。

 この研究は33カ国、87件の調査によって、「植物タンパク対動物タンパクの摂取量比較」と「骨折の割合」との関係を分析している(AJCN.2001)。

 この調査によって、植物性タンパク質の摂取量が動物性タンパク質の摂取量に比べて高くなれば、それだけ骨折率が低くなる、という見事なほどの相関関係があることがわかった。

 こうした研究は、次のような点で説得力がある。

 ・一流の研究雑誌に掲載されている。
 ・筆者が分析やデータの解釈を慎重におこない、研究報告を多数盛り込んでいる。
 ・「動物性タンパク質と骨折率との関係」に関する「統計的有意性」があることから、その可能性・信頼度はきわめて高いものがある。

 この研究結果を月並みなものとして片付けてしまうことはできない。なぜなら、87件もの調査結果を代弁しているからだ。

 またカリフォルニア大学サンフランシスコ校「骨粗鬆症性・骨折研究会」による別の研究は、65歳以上の1000人あまりの女性を対象にしたものだ(J. Gerontology.2000)。

 研究者は、多国間研究のものと同様、女性の食生活を、動物タンパクと植物タンパクの摂取量を比較することによって特徴づけようとした。

 7年間にわたる調査のあと、「植物タンパクに対する動物タンパクの割合」が最も高かった女性は、最も低かった女性に比べ、骨折が3.7倍も多かった。

 さらにこの研究期間中に、動物タンパクの比率が高かった女性は、最も低かった女性に比べ、ほぼ4倍も早く骨を失っていたのである。 コリン・キャンベル/トーマス・キャンベル〈チャイナ・スタディー〉より

✔️【反論〈オックスフォード大学の研究〉】

 ではカウンターとして、2020年11月のBMC Medicineに載ったオックスフォード大学のコホート研究を紹介したいと思います。

 肉食の人(2万9380人)、魚を食べる人(8037人)、ベジタリアン(1万5499人)、ヴィーガン(1982人)の4郡を比較し、病院の記録や死亡証明書などを基に6~23年間追跡しました。

 肉食郡を「1」として、股関節骨折のリスクを比べた結果、ヴィーガン郡が2.31、魚郡が1.26、ベジタリアン郡が1.25。

 また、足の骨折リスクは、ヴィーガン郡が2.05、魚郡が1.07、ベジタリアン郡が1.01。

 ヴィーガン郡は肉食郡より、骨折率が2倍も高かったというわけなのです。

 どちらもランダム化比較試験ではないので、相関関係にすぎません。

 決定打に欠ける点はありますが、私はオックスフォード大学の研究に軍配を上げるべきだと思います。

【怪しすぎる骨粗鬆症研究】

 まず65歳以上の1000人の女性を対象にした研究なのですが、オックスフォード大学の研究と比べて人数が少なすぎます。

 また追跡期間も、オックスフォード大学の研究が最長で23年間なのに対し、カリフォルニア大学の研究は7年間にすぎません。

 (そもそも、なぜ65歳以上の女性に限定されているのか……)。

【単純すぎる「植物タンパク」vs「動物タンパク」の研究】

 次に33カ国、87件の調査なのですが、こちらはなぜか被験者数と追跡期間が紹介されていません。

 論文には載っているのかもしれませんが、なぜかコリン・キャンベルはそれらを隠して紹介しています。

 また、オックスフォード大学の研究は肉食、魚食、ベジタリアン、ヴィーガンの4群に分けるという、非常に細かい研究ですが、カリフォルニア大学の研究は「植物タンパクvs動物タンパク」という単純なものです。

 こうした理由から、私はオックスフォード大学の研究のほうが説得力があると思います。

【J.Gerontolgy】

 最後に余談を1つ。

 キャンベルはカリフォルニア大学の研究が載ったJ.Gerontologyという雑誌を「一流の研究雑誌」と言っていますが、誰もが知っているNEJM、JAMA、BMJなどと比べて本当に一流と言えるのか、少し疑問が残ります……。

【まとめ】

 ●カリフォルニア大学の研究は具体性に乏しく説得力がない。


 日本の国民病の1つである糖尿病。しかし標準治療は大変危険なものなのです。糖質制限による治療をぜひご検討ください。

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