見出し画像

末世炎上 諸田玲子著

桓武天皇が、京に遷都してから二百年以上たった頃の物語、平安時代も極まり、益々貧富の差が拡大し、貴族の荘園で働く農民も、困窮に耐えきれずに、逃亡し京に職を求めて集まり、羅生門辺りにすスラムを作っていた。その街に住む豊かな髪を持つ美しい娘髪奈女、彼女をさらい乱暴した貴族の悪童たち、そのことで記憶を失った、髪奈女を拾った、役人の橘音近、無為に遊び暮らす名門の子息、在原風見は、忍び込んだ内裏で目撃した殺人に、興味を持った。記憶喪失の髪奈女は、救われた音近に、名を尋ねられ何故か、吉子と名乗る、上品な言葉が、何の苦も無く出てくる。吉子とは、自分が何者か判らない。付け火がはびこり、うだつの上がらぬ役人の、橘音近は宣陽門の、警護に駆り出されていた。かっては政の中枢にいた橘家だが、藤原北家が一族の娘を天皇に嫁がせ、生まれた子供を皇位に即けることで、天皇の外戚となり、それによって権力を維持してきた。末法思想の蔓延る平安京、髪奈女が憑依してる事を知らぬ音近は、吉子と名のる貴族の娘の、身元を探るために、藤原一族に嫁いで、今は藤原家の老女のための施設崇親院に、暮らす叔母の早子の所に、吉子を伴ない預ける。その屋敷の中では政治的な陰謀の話し合いが行われていた。貴族の娘と思い込み、吉子の親探しを始める。頭に浮かぶことを、話す吉子、どうやら摂関家が、関係しているかと思われ、藤原一族につてのある叔母に頼む、だが違った吉子が憑依した人物は、あの世と行き来した、小野篁をおじいさまという、小野小町か、帝や、高貴な女人の名を口にする、それは二百年前の、応天門の変のころの方らしい、応天門に火をつけたとして、藤原氏が政敵の伴大納言を、追い落とした事件。作中に登場する人物は、時を経て同じか、在原業平の末風見、紀貫之の末紀秋実、大伴氏の末伴信人、橘逸勢の末橘音近、藤原氏によって衰退を、余儀なくされた名家、当代の後冷泉帝には皇子が無く、藤原の血をひかない弟の、尊仁親王が東宮に立った、どうしても藤原の血をひく皇子が欲しい藤原、命を狙われる東宮を、一族の大江匡房に、風見と音近は招かれ東宮に拝謁、内裏に火付けをし、それを東宮方の仕業にする、陰謀が画策されている、阻止するよう頼まれ、自らの生きる道を、決め二人は東宮方となる。応天門の変の繰り返しを、しようとしている、似ているのだ、あの時流罪になった、伴善男や、紀豊城は無罪かと思われている。後冷泉帝はとうとう皇子が誕生せずに逝去、生母が藤原氏でない為、尊仁親王は東宮に立ったものの、関白方に疎外され辛酸を滑め、忍耐を重ねて二十三年、三十五歳で即位して後三条帝となる、新東宮は後三条帝の皇子、貞仁親王後の白河帝。平清盛の実父かといわれる帝、ここから藤原氏は衰退します。髪奈女は憑依が解け元の細民の娘に戻った、記憶はない。風見と音近は出世をする。謎の多い応天門の変の実像にも迫る、怪しげな術者も登場し、時空を超えて行き来する、末世炎上。平安時代のミステリー時代小説を、味わっていただきたい。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?