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「小説丸」(小学館)の書店員コラムで紹介した作品まとめ

2021年より、小学館のWEBサイト「小説丸」で、書店員のリレーコラムをやっている。「週末は書店へ行こう!」というタイトルだ。
8名の書店員が毎週1冊ずつ新刊を紹介するのがメインで、関連で「あわせて読みたい本」と「おすすめの小学館文庫」を、これも毎回1冊ずつ挙げている。8名がローテーションを組んでいるので、8週おき、およそ2か月に一回順番が回ってくる。
ありがたいことに、その8名の中に入れていただいていた。

このたび、9回目のコラムが掲載され、私の担当回が終了した。
お連れ様、自分。
というわけで、ここではその9回で紹介した本をまとめて、簡単にコメントする。「あわせて読みたい」「おすすめ小学館文庫」も併記している。


第1回:知念実希人『硝子の塔の殺人』(実業之日本社)
最初だったのでかなり気合を入れて書いた原稿である。知念さんの勝負作、しかも医療ものではなく、本格ミステリのガジェットを盛り込んで書かれた作品なので、個人的にも大好物であった。
※あわせて読みたい本:知念実希人『傷痕のメッセージ』(KADOKAWA)
おすすめ小学館文庫:長岡弘樹『教場』


第2回:貫井徳郎『邯鄲の島遥かなり 第一部』(新潮社)
ゲラを読ませていただいた際、「これはものすごい小説ではないか」と興奮した作品。貫井さんの小説だが、ミステリの要素はほぼ入っていない。でもこんなに面白いなんて、と思った。
※あわせて読みたい本:船戸与一『風の払暁 満州国演義一』(新潮文庫)
おすすめ小学館文庫:月村了衛『東京輪舞』


第3回:逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)

これもゲラで興奮しまくり、出版社の人に売り方などのアドバイスをした思い出の作品。発売後、やはり大きな話題になり、最終的に本屋大賞を受賞したことはご承知の通りだ。
※あわせて読みたい本:大木毅『独ソ戦』(岩波新書)
おすすめ小学館文庫:船戸与一『砂のクロニクル』


第4回:伊藤彰彦『最後の角川春樹』(毎日新聞出版)
この連載中、唯一のノンフィクション。この頃読んでた本で圧倒的に面白かったので書いてみた。後に角川春樹氏はTV番組「日本のドン」で、「出版・映画界のドン」として登場され、話題になった。その角川春樹伝説の大半を本書で知ることができる。
※あわせて読みたい本:中川右介『角川映画 1976-1986』(角川文庫)
おすすめ小学館文庫:早見和真『小説王』


第5回:葉真中顕『ロング・アフタヌーン』(中央公論新社)
葉真中さんは2021年の『灼熱』(新潮社)がめちゃくちゃよかったので、このコラム期間内に一度紹介したいと思っていた作家だ。優れた「作中作小説」でもある。
※あわせて読みたい本:葉真中顕『灼熱』(新潮社)
おすすめ小学館文庫:『超短編!大どんでん返し』


第6回:楠谷佑『ルームメイトと謎解きを』(ポプラ社)
このコラムは当初、全6回と聞いていたが、あと3回続く、との連絡を受けていたタイミングである。こういう表現はよくないかも知れないが、この時期に読んだ作品の中でも特に「期待値を遥かに上回る作品」だったので、紹介した。
※あわせて読みたい本:青崎有吾『体育館の殺人』(創元推理文庫)
おすすめ小学館文庫:『ミステリと言う勿れ』


第7回:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)
文字通り、今年の「台風の目」的な作品。発売後の話題の広がり方などは出版社の戦略が見事に当たったのだと思う。素晴らしいミステリがちゃんと評価され、売れていくのは嬉しいものである。
※あわせて読みたい本:浅倉秋成『俺ではない炎上』(双葉社)
おすすめ小学館文庫:水沢秋生『ミライヲウム』


第8回:岩井圭也『最後の鑑定人』(KADOKAWA)
2021年の『水よ踊れ』以降、出す作品が全て面白い岩井作品。岩井さんも一度紹介したいと思っていた作家さんだ。実は『生者のポエトリー』(集英社)が出た時に紹介したくて候補に挙げたのだが、他のレビュアーさんと被ってしまったので諦めた経緯がある。
※あわせて読みたい本:岩井圭也『竜血の山』(中央公論新社)
おすすめ小学館文庫:翔田寛『真犯人』

第9回:小川哲『君のクイズ』(朝日新聞出版)
そしてこれが最終回。満を持して書いた感じ。
SF作家・小川哲さんによる、本格的な「クイズ小説」である。
※あわせて読みたい本:伊沢拓司『クイズ思考の解体』(朝日新聞出版)
おすすめ小学館文庫:藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄異色短編集 ミノタウロスの血』

以上の全9回だ。
実はこういうレビューものをやる時に、自分がなんとなく決める「縛り」みたいなものがあって、それは「出版社が被らない」こと。今回もその縛りを守ったかな、とついさっきまで思っていたが、まとめを書いていて新潮社が被っていることに気付いた。惜しい。
ともあれ、ここれ紹介した作品はどれも自信を持ってお薦めするものばかりだ。ぜひ手に取ってみていただきたい。

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