017:光の接着

「情報の接着」という言葉を読んですぐに「光の接着」という言葉が思う浮かんだ.前提になっているのは,「ゼログラビティ」の撮影で使われたライトボックスである.

プレビズで行為を規定された俳優がLEDパネルでできたケージに囲まれる.このケージ内ではLEDの光が厳密に決定されているとともに,光に対応した行為も予めプログラムされたものになっている.そして,光と行為とを記録するカメラの動きも決まっている.

三浦 それからプレビズも大きいんだと思う.動く絵コンテとしてのプレビズで,観客を飽きさせないための快速アクションのつるべ打ちが設計される.かつても絵コンテはあったけれど,いまはCGと合成する作業のために,予算やスケジュールを考えなければならないから,アクションを事前に厳密に指定する必要性が飛躍的に増えたということはありますよね.で,プレビズでパターンを作った後に肉体でそれを演じるわけで,順序が逆になってるんですよね.
平倉 プレビズを使うことで,快感を解放させるタイムスパンが短くなってきてますよね.「タメてタメて解放」っていうんじゃなくて,計算されたリズムで「解放・解放・解放」を打ちまくる感じで(笑),快感をバンバン爆発させる作りになっている.p.309
『オーバー・ザ・シネマ 映画「超」討議』「第5章:破壊・崩壊・エントロピーの映像的・音響的描写」

光と演技を接着するものとしてのカメラがあり,光とカメラとをソフトウェアとが同期させて,ヒトもそこに可能な限り同期しようとする.身体が光とカメラとを接着する.ライトボックスのなかで,身体はソフトウェアとともに接着剤として機能する.このようにして得られるのは,俳優の顔に接着された光である.プログラムされた光が俳優の顔に反射し,カメラが記録する.光が顔に接着し,カメラがその接着を固定する.そして,顔に接着した光は再度,コンピュータ空間に移される.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?