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028:インタラクションの向きを「身体」から「マインド」に変える

ヒトはスマートフォンを使用するときに、ふたつの身体になっている。生物学的身体と点としてコンピュータに認識されるミニマルな身体である。ミニマルな身体は、そのかたちを変形可能な知覚原理としての身体がコンピュータに最適化したものである。

ヒトとコンピュータとのあいだで、ヒトの行為は最小化されている。そして、最小化された行為が、ヒトとコンピュータとのあいだで反射しつづけ、データを生み出し続ける。ヒトとコンピュータとのあいだの行為の反射の密度があがると、生物学的身体とミニマルな身体とが行為を介して互いに絡み合っていく。そして、ふたつの身体が絡み合いながら、互いを引き伸ばして、粘着質のサーフェイスを形成していく。そのサーフェイスが「マインド」として、ヒトとコンピュータとのあいだにあたらしいインタラクションをつくる依代的な存在となる。

生物学的身体とミニマルな身体は、依代的なサーフェイスを囲い込み、水平方向の互いのインタラクションだけではなく、サーフェイスを介して垂直方向のインタラクションもはじめる。これが「マインド」として、ヒトとコンピュータとに改めて向かい始める。インタラクションの向きを「身体」から「マインド」へと変えるようなことが、ジェスチャーベースのタッチパネル・インターフェイスで起こっているのではないだろうか。それは単に座標の移動とオンオフの繰り返しではなく、ヒトの行為をディスプレイ上の指の履歴を活用し薄く引き伸ばして、マインドの動きを模倣するようにデザインされたアニメーションと重ね合わせることで達成されていく。

Designing Fluid Interfaces のスライドが示すディスプレイ上の「点」をタッチする「指」と、その指がディスプレイに反射したかのように表示されている「指」。ここでは、生物学的身体の「指」がディスプレイのミニマルな「点」に触れつつ、もうひとつの「指」がコピーされている。点を表示するディスプレイがサーフェイスとなって、指の像を反射して、もうひとつの指をつくる。生物学的身体とミニマルな身体が接触する点の集まりが基底面=サーフェイスとなって、そこにヒトとコンピュータとが互いにダイレクトに接触しながら、模倣し合うマインドが生じる。

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