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業界情報 AI

業界情報 AI関連

⚫️2021.10.26日本経済新聞🗞

【サマリー】
AIを使った翻訳機能
メガネ型、イヤホン型
が登場

【思ったこと】
英語を勉強する必要がなくなる
そもそも英語は、嫌な勉強対象ではなく
たくさんの人とつながりをもつためのツール
勉強せずに会話できるならそれがベスト

【思ったこと】

人工知能(AI)を使った即時の翻訳機能が様々な端末に搭載され始めている。KDDIは眼鏡型、中国のスタートアップはイヤホン型を開発。用途や相手、状況に合わせて端末を使うことができる。精度が翻訳者並みに高まるなか、端末開発で使い勝手も良くなることで、言語の壁が無くなる未来が近づきそうだ。

「今日は暑いので水分補給をこまめにして下さい」「分かりました」。9月下旬、飛島建設が手がける兵庫県西宮市のマンション工事現場。日本人の監督者とベトナム人の作業員は互いに母国語でやり取りしていた。監督者が目元につけている片目用ディスプレーにはベトナム語が訳されて日本語で表示された。
会話を実現させたのは同社が翻訳システム開発のロゼッタ(東京・千代田)と共同開発したAI翻訳ソフト「イーセンス」だ。片目用ディスプレーに内蔵されており、Wi-Fi(ワイファイ)環境で利用できる。
現場の作業音が大きくても文字なので意思疎通が容易。足場の悪い建設現場で手を空けておくこともできる。飛島建設の現場では、この翻訳ソフトと連動させたタブレット端末をベトナム人作業員に持たせ、日本語をベトナム語に訳して画面に表示し、双方向で意思疎通していた。
建設現場で働く外国人はベトナム人が多いため、AI翻訳ソフトには英語とベトナム語を訳す機能が標準搭載されているほか、大量の言語データを学ばせているため100以上の言語も追加で対応できる。話し終えてから英語は1~2秒、ベトナム語は3~4秒で訳した文字が表示される。
建設業の専門用語に対応した翻訳エンジンも搭載。例えば、一輪の手押し車を指す「ねこ」は英語で「cat」ではなく「wheelbarrow」と訳す。翻訳ソフトは100超の専門用語を登録し、文脈に応じて正しく訳し分けられる。
飛島建設は現在、約10カ所の現場で片目用ディスプレーを使っており、順次広げていく。外国人作業員との意思疎通は多くの業界に共通した課題でもある。同社の科部元浩・新事業開発チーム課長は「他の建設業や造船など異業種にも使ってもらいたい」と話す。
翻訳に使う端末はこれまで、手軽さを売りにしたスマートフォン用のアプリやソースネクストの「ポケトーク」のような携帯翻訳機が主に使われてきた。端末が多様化すれば様々な用途や相手、状況に合わせることができ、利用が広がる。

自然な会話が期待されるのがイヤホン型だ。中国のスタートアップ、タイムケトル・テクノロジーズは約40の言語を翻訳できるイヤホンを日本や中国、米国など約10カ国で販売している。スマホと連動した2つの専用イヤホンのうち、片方を相手に渡して話す。
イヤホンに内蔵するマイクで拾った発話者の声をスマホアプリのAIで翻訳し、相手のイヤホンから翻訳した音声が即時に流れるので、互いに母国語で会話することができる。スマホはイヤホンと無線でつないでポケットやカバンに入れておくこともできるので、画面を見る必要がない。相手の顔と画面を交互に視線を動かす従来のスマホの翻訳アプリと違い、自然な会話ができる。多くのイヤホンを使って、3人以上で話すことも可能だ。
KDDIは中国のスタートアップ、エンリアルと眼鏡型端末「NrealLight(エンリアルライト)」を共同開発した。翻訳アプリを入れたスマホとケーブルで接続し、眼鏡型端末に搭載されたカメラで案内板などに書かれた英語や韓国語の文字を撮ると、自動で翻訳され、日本語で映し出される。
この機能は観光向けを想定しており、東京・新宿や渋谷などにある携帯電話ショップ4店で体験できる。現在、KDDIは主に仮想現実(VR)を使った動画鑑賞用として眼鏡型端末を販売している。新型コロナウイルスの感染が落ち着き、海外旅行が再び気軽にできるようになれば、翻訳アプリを公開し、利用者が翻訳機能も自由に使えるようにしたい考えだ。
普及で先行しているソースネクストは9月、ポケトークに、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの「Zoom(ズーム)」や米マイクロソフトの「Teams(チームズ)」などのウェブ会議システムに翻訳した字幕を表示する機能を加え、使い勝手を高めた。専用ソフトをパソコンにダウンロードして連動させれば、ポケトーク利用者は無償で利用できる。
スマホでは、米グーグルが28日に発売する新機種「Pixel(ピクセル)6」に、様々なライブ配信の動画を自動で翻訳し、字幕表示する機能を搭載した。カメラに写した画像内の文字やメッセージアプリ「LINE(ライン)」などの投稿も自動で翻訳できる。
AI翻訳の世界市場は今後、急拡大することが期待されている。米調査会社のグローバル・マーケット・インサイツは、2020年に6億5000万ドル(約700億円)だった市場規模が、27年には4.6倍の30億ドルになると予測する。

⚫️210629日経
念じるだけで文字に

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73350060Y1A620C2TEB000

181126日経
目覚めた直後の寝ぼけ眼で、歯ブラシがうまく握れないことがある。指先の動きはぎこちないけれど、視覚と脳の働きが必死にそれを補い、やがて動作が追いついてくる。
同じ理屈が機械にも当てはまる。部品の精度をミクロン単位まで極めなくても賢い人工知能(AI)があれば、ロボットや工作機械を正確に制御できる。
「製造業大国の日本とドイツが築き上げた技術体系は過去のものとなる」。中国広東省・深圳に拠点を置くベンチャーキャピタリストの徐家斌氏は、ハードウエアとAIが接する領域に宝の山があると語る。
ベアリングや歯車などの精密部品は、熟練工の腕に製造を頼る面があった。だが人間は高齢化するし、コストもかかる。機械的な精密さで高品質を競うのは日独などに任せて、むしろAI開発に投資する方が新しい製造業の世界を開拓する早道かもしれない。
日独のメーカーに中国製造業の実力を聞けば、おそらく大半が「まだ道半ば」と言うだろう。職人技を尊び、何事にも几帳面(きちょうめん)な日独の目に中国の人や社会は緩くて「きちんとしていない」と映る。
一面ではその通りだが、その緩さの中に中華イノベーションの源泉があるのではないか。精度はそこそこで安価なものづくりは、中国企業のお手の物。AIなどのソフトは開発した後の製造コストはかからない。
2017年の中国の特許の出願件数は、10年前の5倍近い138万件に達し、AI関連でも米国を上回った。中国のAIが進歩し続ければ、ユルいけれど仕事はちゃんとする低価格な機械製品が、世界の市場にあふれるだろう。中国の弱点だった緩さが、逆に低コストという強みに化ける。
先端技術が中国に盗まれているとトランプ米大統領が怒っている。日独には、ものづくりでは中国に追いつかれないとの自負がなお根強い。とはいえ技術の進歩は一本道ではない。習近平(シー・ジンピン)政権が掲げる「中国製造2025」は、必ずしも日米欧への追随を意味しない。
AI開発の碼隆科技(マロン・テクノロジー)社は、博士号を持つ研究者が集まり14年に設立した。たとえば磁気共鳴画像装置(MRI)による脳疾患の診断システムが、深圳の病院で既に使われ始めている。
5~6人の医師が読影した診断結果と、AIが特定した腫瘍部位の画像は、ほぼ完全に一致。違うのは判定までにかかった時間だ。電気代だけで働くAIは1.725秒、高給の人間チームは6分だった。医療コストは劇的に下がった。
なぜ開発スピードがこれほど速いのか。同社の国際ビジネス担当に尋ねると、苦笑と答えが返ってきた。「だって、日本や米国では病院から患者のデータなどもらえないでしょう?」
中国では個人情報をいくらでも集められる。データは大きいほど価値が高まりAIの肥やしとなる。米国のシリコンバレーを含め、世界のAI技術者が深圳を新天地と見なして流れ込む理由も、ここにある。
デジタルと専制国家は、残念ながら、相性がよいのだ。対抗する手段は、まだ見当たらない。

181127日経
政府がまとめた人工知能(AI)に関する7つの原則が明らかになった。AIが物事を判断する際、その企業に説明責任を求めるのが柱だ。AIの判断基準(総合2面きょうのことば)を示し、金融機関の融資などで、過程が分からない状態をなくす。この原則をもとに法整備を進め、外国企業が日本で活動するときの混乱回避に役立てる。

政府の「人間中心のAI社会原則検討会議」(議長・須藤修東大教授)が12月に公表する。来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議で参加国に呼びかける。
AI活用による懸念は少なくない。どのような基準で金融機関が融資したのか、就職の合否をどう決めたのか、などの場合だ。AIによる決定の基準があいまいなままでは判断された側には不満と不安が残りかねない。
就職で性別、国籍などが合否の判断材料になるケースもあり得る。AIを使う企業側にもそれらの事情が分からない恐れが出てくる。
企業に決定理由を分かりやすく伝える責務を負わせ、最終的には人がAIの判断に関する責任を持つ仕組みにしてAIを巡る懸念を取り除くよう促す。
外国企業がそれぞれの国や、その企業独自のルールに沿って日本で活動すれば、混乱しかねないという懸念もある。
米国はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる巨大企業がAI開発をけん引している。AI活用のルールは基本的に企業の自主規制に委ねられている。
中国は国家主導の色彩が強く、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業を経由して事実上、国家がデータを管理している。
欧州連合(EU)は米中の動向に対抗し、EU主導で年末までにAIの倫理指針をまとめる。
EUはAIの判断過程をわかりやすく伝える責任を企業に課すのが特徴だ。一般データ保護規則(GDPR)により、個人情報保護を厳しく規制する。
みずほ情報総研の豊田健志氏は「日本はAIのルール整備で出遅れている。EU以外だけでなく、経済協力開発機構(OECD)諸国を巻き込んで連携し、ルール作りに役割を果たすことが重要だ」と指摘する。
日本政府がつくるAIの原則は(1)AIは人間の基本的人権を侵さない(2)AI教育の充実(3)個人情報の慎重な管理(4)AIのセキュリティー確保(5)公正な競争環境の維持(6)企業に決定過程の説明責任(7)国境を越えたデータ利用の環境整備――の7つから成る。

181210日経
人工知能(AI)の進歩が著しい。将棋や囲碁で人間をしのぐ性能を示して以降、自動翻訳や医療画像の診断、自動運転など様々な分野で導入機運が高まる。一方で、何が弱点かも明らかになり、次の研究課題になっている。AIは革新を起こす重要な技術だが、決して万能ではない。効用と限界をよく吟味する必要がありそうだ。

人間とうまく対話できる技術の実現は、いまAIに求められている大きな目標だ。しかし研究現場ではいくつかの壁に当たっている。「僕の『耳』は遠くの音声を認識できない。マイクの近くで話してね」
スマートスピーカーやコールセンターの声の聞き取りには、AIが使われている。正しく認識するためにはマイクの近くで話すことが必要だ。広い部屋で行われる会議や記者会見などを、音声認識システム1台で対応し、文字起こしするのは難しい。
その理由は、人間の聞き取りではそれほど支障のない反響音の認識を、AIが苦手としているためだ。特にマイクと話し手の距離が遠いと、部屋中の壁に当たって反響し精度が上がらない。
「僕は状況に合わせて抑揚をつける話し方が下手なんだ。うれしいときに声が上ずったり悲しいときに覇気がなくなったりと、人間のように喜怒哀楽をうまく表現できない」
AIによる話し方は、ニュースを読むアナウンサーのように淡々と読み上げる印象が強い。NTTの宮崎昇主幹研究員は「アクセントは上手につけられるようになったが、表現力はこれから」と話す。人間は対話する相手の感情を予想し状況に合わせながら抑揚を使い分ける。そんな芸当の実現はもう少し先になる。
「僕は賢いと思われているけれど、物覚えがいいだけで、判断力は高くないよ」
現在のAIの中核技術である「深層学習」は、誤った情報や雑音がない膨大なデータを学ばせる手法が主流だ。高い精度の判断には最低でも数千から数十万件のデータが必要といわれる。これに対し、人間は少数のデータで済む。図鑑で犬や猫を学んでおけば、実物を見てすぐに犬か猫かを判断できる。人工知能学会の浦本直彦会長は「少ないデータで判断するのは人間の方が得意」と話す。
深層学習を用いたAIが注目を集めたきっかけは画像認識の精度が格段に向上したためだ。「機械が目を手に入れた」と例えられている。そこに意外な落とし穴があった。
「人間には考えられない見間違いを起こすこともあるよ」
グーグルの研究者らは人間にはスクールバスに見える画像を、AIがダチョウと判定した事例を論文で公表している。元のスクールバスの画像に人間には分からない加工を施すと、AIの判定が変わってしまった。
自動運転の研究にとってこれは都合が悪い。この仕組みを悪用されると、例えば「止まれ」の道路標識が「60キロ制限」に誤って認識されてしまう恐れもある。人間とAIでは画像からつかむ特徴が異なるために起きる問題で、根本的な解決策はまだ見つかっていないという。
「人間は手を使って様々な作業が器用にできるね。だけど僕は、本をつかむのさえ苦労しているよ」
AIベンチャー企業のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)は10月、散らかった部屋を片付けるロボットを公開した。ペンや靴下など数百種類の物を認識し、決められた場所に戻す性能を備える。ただ、すべての物を拾い上げられるわけではない。エンジニアの羽鳥潤氏は「本や食器はまだ上手につかめない」と話す。
ロボットの指は人間ほど繊細に動かせず、ある程度の重さがあり平らな本や皿の下にうまく滑り込ませられない。人間が上手に持てる物でもうまく扱えず、AIは不得手である事実を認識できない。
中京大学の橋本学教授らが開発したお茶をたてるロボットは、スプーンで抹茶の粉を取りひしゃくでお湯をすくうなど様々な動作が可能だ。しかし包丁を使って野菜を切ることはできない。「切るときに大きな力が要るし、刃の動きを厳密に制御する必要がある」(橋本教授)
ロボットの頭脳にAIはなくてはならない。融合する研究はこれから大きな流れになると期待されている。ただ難問も多く、AIだけロボットだけの技術開発からは、よい解決策が見いだせない可能性もある。研究者は融合研究を活発にして厚い壁を越えようと考えている。

181214日経
政府は13日、人工知能(AI)の活用法を話し合う「人間中心のAI社会原則検討会議」(議長・須藤修東大教授)を開いた。個人情報保護や説明責任などAIを使う際の7原則をまとめた。「人間中心」を第一に掲げ、国家が主導してデータを集める中国との違いを示した。2019年の20カ国・地域(G20)首脳会議で発信し、国際ルール策定に関わる狙いだ。

検討会議では「人間中心のAI原則」について話し合われた(13日、都内)
7原則には(1)人間中心(2)AIの判断が差別的にならないように判断過程を説明(3)個人情報の慎重な扱い(4)公正な競争環境の確保――などを盛り込んだ。「国などの立法・行政機関が留意すべきだ」と強調し、今後の政策づくりや法規制、運用の際に順守するよう求めた。パブリックコメント(意見公募)を経て18年度末に正式決定する。

AIは「深層学習(ディープラーニング)」と呼ばれる技術を使い、大量に学習したデータから精度の高い結論を素早く導き出すことができる。一方でなぜ結論に至ったかの過程は外部からわかりにくい。AIの判断基準が「ブラックボックス」になる懸念が指摘されている。企業の採用などで特定の性別や思想・信条を持った人物が差別を受ける可能性もある。
政府が7原則を示したことで、民間もAI事業の方向性を定めやすくなる。NECの若目田光生デジタルトラスト推進本部主席主幹は「企業がAI原則を具体的なプロセスに落とし込むことが重要だ。産業界でもアジェンダをつくり、個別の活動に適用するのが望ましい」と話す。
AIの開発をめぐっては、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒的にリードしている。
GAFAを追い上げる形で中国はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業が同様のサービスを拡大している。中国はBATを経由して事実上、国家がデータを管理しており、米国は華為技術(ファーウェイ)などの中国製通信機器を通じた機密情報の漏洩リスクも指摘している。
日本はこうしたサービスで米中の巨大企業に先行を許してきた。ただ、欧州連合(EU)や米国では、個人情報保護などを重視して国際的なルールづくりを模索する動きが出ている。日本政府が今回まとめた7原則はプライバシーやセキュリティーなどを前面に掲げており、欧米などとのルールづくりの土台になると考えている

190104日経
とにかく早く止めなくちゃね」
画面から客の問い合わせに答えるのは、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が導入したデジタル・アシスタント「ジェイミー」。女性の姿をした人工知能(AI)だ。
相手は困っているのか、怒っているのか。表情や会話の内容から感情を分析するため、客にストレスを与えない。利用した50代の男性は「気持ちをくみ取ってくれる」と満足そうだ。ジェイミーは半年間で5万件もの会話をこなした。
進化はとどまらない。量子コンピューターを使えば現在の技術で3年以上かかるデータ処理を1秒ほどででき、AIの学習能力も飛躍的に高まる。未来の対話型AIは今の感情を読むだけでなく、先の行動まで瞬時に予測。本人が気づくよりも早く何がしたいかを言い当てるようになる。
近代資本主義は労働を「天職」と考える人たちの禁欲的な働きが支えた。ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは20世紀初めに発表した「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」でこう指摘した。しかしAIやロボットが普及した社会では前提が変わる。人は多くの労働や作業から解放されるからだ。
そのとき求められる働き方はどんなものか。デザイナーのレイ・イナモト氏は「人の仕事は0→1と9→10に収れんしていく」とみる。料理で例えれば、一般的な調理(1→9)はなくなり、メニューの考案(0→1)と最後の手直し(9→10)が残るという。
製造業では開発などの川上と販売・サービスの川下が高い価値を生み出し、真ん中の組み立ての価値は低いとされる。線でつなげば人が笑ったときの口元のように見えるため「スマイルカーブ」と名付けられたこの法則が、人の仕事にも当てはまるようになる。
映画を見たり、眠ったりする間に目的地に到着。自動車メーカー各社はこんな自動運転車の開発を進めている。ボルボ・カーは飛行機のファーストクラスのように快適な車を2030年代に実用化するという。
メルテン・レーベンスタム上級副社長は「移動で失われていた時間を取り戻す」と話す。機械の高機能化が進めば進むほど、人に与えられる時間は増える。
「勤勉は善」という価値観が当然とされる時代は歴史的に見れば長くない。18世紀の産業革命によって大量生産の時代が幕を開け、多くの労働力を確保するために給料だけでなく「労働は貴い」という価値観で労働者を引き付けた。
20世紀初めには米経営学者フレデリック・テイラーが「科学的管理」を考案。労働が生む価値を時間で計る手法が企業に浸透すると、労働者が勤勉から逃れるのは困難になった。
だが技術進歩に背中を押される形で社会の常識は変わり始めた。今こそ、新しい価値観を考える時期だ。

190130日経
LINEは2019年中にもスマートフォン(スマホ)用の対話アプリを音声で操作できるようにする。人工知能(AI)スピーカーの技術を活用、国内で月7800万人が利用する対話アプリの顧客基盤を生かしAIの性能向上に必要なデータを収集する狙いもありそうだ。音声認識AIで高いシェアを持つ米グーグルや米アマゾン・ドット・コムなどに対抗する。
このほど開発に着手した。対話アプリで「今日の天気は」などと音声で質問すると、クラウド上にあるAIが回答を考え、自動で送信する仕組みを想定。文章のメッセージを声で入力できる機能も検討しているもよう。音声で金融や電子商取引(EC)といった、メッセージのやり取り以外のサービスをアプリ内で検索する機能も視野に入れている。
LINEは17年にAIスピーカー「クローバ」を発売し、音声認識AIの分野に本格参入した。AIを戦略分野と位置づけ、19~21年に480億円を投じる計画だ。ただ日経MJの18年秋の調査ではLINEのAIスピーカーの国内シェアは10.2%にとどまり、グーグルの42.1%やアマゾンの40.7%に大きく水をあけられている。

190207日経
世界知的所有権機関(WIPO)は人工知能(AI)に関連する特許が2013年から16年の4年間で倍増したとする報告書をまとめた。企業ごとの特許の保持数は日米の企業がけん引する半面、学術分野では中国の台頭が目立つ。
WIPOの調査によると、AI研究が始まった1950年代以降、AI関連の特許は約34万件の登録があり、このうち53%は13年以降に発明されたものだという。AI関連の登録数は特許全体の0.6%。WIPOがAIに関する特許に焦点をあてた報告書をまとめるのは初めて。
企業別の出願数では日米が優位だ。米IBMが8290件で最多。上位5社には米マイクロソフト、東芝、韓国サムスン電子、NECが続く。一方、学術分野では中国の台頭が目立つ。AIに関連する特許の出願上位20の大学や公共の研究機関のうち、17団体が中国にある。中国科学院や清華大学などが上位に入る。

190208日経
損害保険ジャパン日本興亜は自動車事故の過失割合を人工知能(AI)が自動算出するシステムを年内にも導入する。ドライブレコーダーで撮影した映像から交通事故の状況を再現。AIが過去の事故データや判例も踏まえて分析する。事故発生から保険金支払いまでの期間は従来の2カ月から最短で約1週間に短縮する。
自動車保険の契約者のうちドライブレコーダーを搭載している約10万台がサービス対象。映像解析サービスを手掛けるジェネクスト(横浜市)とシステムを共同開発する。
車同士が衝突した際の映像と全地球測位システム(GPS)のデータをもとに車両の動きや道路状況など事故を再現。AIが学習した過去の事故データと過失認定に関する判例を踏まえ、事故当事者の過失割合を導き出す。判定には速度違反の有無なども加味する。
これにより保険金の支払いが円滑になる。事故の過失判定は調査や示談交渉などに2カ月近くを要していたが1~2週間に短縮できるという。
交通事故の過失判定では調査員による現場の確認に加えて賠償交渉が発生する。これまでの当事者の聞き取りに頼った調査では記憶に左右され、過失の有無を見極めにくいケースも少なくなかった。データを駆使すれば客観的な証拠をもとに交渉を進めやすくなる。
事故データの分析によって運転手に安全運転を指南するなど、事故率の低減にも生かす。
損害保険各社は自動車保険契約者向けにドライブレコーダーを貸し出し事故対応に活用するサービスを強化している。

190218日経
味覚を人工知能(AI)で分析するスタートアップ企業のサービスが広がっている。甘味や酸味を数値で表すだけでなく、蓄積したデータを基に実際に食べた時の感じ方をAIで分析し、「おいしさ」を測る。小売店の販促や食品メーカーの商品開発で使われ始めた。多様化する消費者の好みを効率よく知る手段として注目されている。

SENSYはAIを使い好みのワインを薦める(都内)
「渋い赤ワインが好きだけど銘柄まで詳しくない。簡単に好みに合うか調べられるのがいい」。東京都品川区の「ライフエクストラ東五反田店」を訪れた女性(28)は売り場にあるタブレット端末を操作しながら話す。

使っているのはAI開発のSENSY(東京・渋谷)が三菱食品と開発した「SENSYソムリエ」。食材や味に関するアンケートに答えると、お薦め品が提示される。
人の味覚について蓄積したデータとアンケートをAIが分析し、合う商品を探る。個人の好みをデータ化しておけば、体調や気候の影響で味の感じ方が変化しても、適した商品を提案できる。
クラフトビールや日本酒にも使える。渡辺祐樹CEO(最高経営責任者)は「主観的な好みを人間が知るには熟練の技が必要だったが、精度の高いAIなら代替できる」と話す。ライフコーポレーションのほかイトーヨーカ堂やヤオコーも一部の店舗で導入している。
AISSY(東京・港)は従来の化学的分析とAIを組み合わせた味覚センサーシステムを手がける。まず味覚を構成する甘味、塩味など5つの味を電極を使って数値化する。ただ、これだけでは例えば甘味が苦味を緩和するなどの相互作用が含まれず、実際の感じ方と異なる場合が多い。
そこで取得した数値に、実際の感じ方についてのビッグデータを組み合わせ、味の相互作用や香りなどの影響も踏まえた数値をAIがはじき出す。これまでキリンビバレッジの「生茶」の商品評価などに使われてきた。
農業システム開発のマクタアメニティ(福島県伊達市)は山形大学と野菜や果実の味を画像から分析する技術を実用化した。トマトなど16品目が対象で、赤緑青の三原色の情報からおいしさを判定する。蓄積した色と味の相関データと組み合わせてAIが分析する。
サクランボの場合、赤が均一に分布していると甘味が多いが、まだらだと足りないといった具合だ。糖度計などと違いシステムを導入するだけなので低コストで使える。



190227日経
公立はこだて未来大学(北海道函館市)と北海道南部のホテル業界は人工知能(AI)の活用に関する共同研究に乗り出した。ホテル従業員の足跡データを分析し、効率的な人員配置に生かしたり、ビュッフェレストランで提供する料理の減り具合を画像解析し、追加分の調理開始を指示したりすることなどを想定。業務効率化や顧客の再訪促進につなげる。少ないデータを使って成果を生むといった最先端の研究テーマも含まれる。


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190228ヤフーダイヤモンド

情報化投資が遅れてきた日本は、米国などに比べて経済格差はそれほどではなかった。

 しかしAIの導入がさまざまな分野で広がり、7年後の2025年には、控えめに見ても、約140万人が職を失うと予想される。

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 どういう仕事がなくなるのか、を予測すると、それはルーティン業務が中心になる。

 そして失業した人の再就職も容易ではない。

● 日本のIT投資は合理化志向 人員削減が一気に進む

 米国やドイツの経営者は、IT投資によって、合理化よりも新しいビジネスモデルによる売り上げ増を目指すのに対し、日本の経営者は、IT投資で人員削減、コスト削減といった徹底的な合理化を志向する。

 こうした日本の情報化投資の傾向は、さまざまな調査で明確になっている。
 代表的な調査結果を2つ挙げてみよう。

 2015年5月、国際IT財団は、日本企業のIT投資に関する調査結果をまとめた。調査年次が、若干、古いかもしれないが、同種の調査はこれ以降、存在しないので、この調査結果(アンケートの有効回答数615社、回収率17.4%)を紹介する。

 ITを積極的に導入している業務分野を見ると、「コスト削減」「人員削減」をめざしている色合いが濃い(図表1)。

 一方で、IT対応がそれほど行われていない業務分野は、市場分析や開発など、「新しいビジネスモデル開発」「売り上げ増」を志向する分野だ。

 この傾向は、電子情報技術産業協会(JEITA)が2013年に行った「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」調査の結果(図表2)とも共通する。

 この調査は、同協会が日米企業の「非IT部門」を対象にIT投資の意識調査を実施したもので、日本企業216社、米国企業194社が回答した。(ほかにヒアリング調査で日本企業5社、米国企業2社が回答)

 これを見ても、米国企業が、ITによる製品・サービスの開発など、「攻めのIT投資」と呼ばれる方向を志向しているのに対して、日本企業は、業務効率化・コスト削減などの「守りのIT投資」を志向していることがわかる。
 こうした調査が示すのは、日本では、経営者に、情報化投資によって「新しいビジネスモデル」を創出して「売り上げ増」を目指し、付加価値を生み出そうという発想は極めて少ないことだ。

 日本企業の経営者のみが、世界の経営者と違った方向を向いているのである。

 私はこれを「日本の常識は世界の非常識」と呼んでいる。

 とはいえ、技術進歩でAIなどがさまざまな分野で導入され、またグローバル競争も激しくなるばかりだ。企業にとってはIT化への対応は避けられない。

 日本の経営者が持つ独特の志向を考えると、情報化投資が加速するなかで、人員削減が一気に進むのではと予想される。

● 情報化投資でなくなるのは ルーティン業務

 日本でこれから、AIなどに仕事や雇用がどの程度、代替され、経済格差がどこまで拡大するのか。

 前回(2019年2月12日付け)の本コラム「非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ」で、その見通しを書いた。

 まず、今後、IT化で新たな雇用機会や所得増が期待できる人と、逆に仕事を失う人が出て、格差が拡大していく「スピード」を予測してみよう。

 前回、紹介した米国MITのデイビッド・オーター教授の論文にある「米国におけるルーティン業務及び非ルーティン業務の作業の割合」(図表3)によれば、米国では、「ルーティン業務量」は1985年から2000年にかけて、15年間で12%減った。
 日本では今後、これまで情報化投資が遅れていた分、米国よりも早いペースでRPA(Robotic process automation 人工知能を備えたソフトウェアのロボット技術を使った自動化・効率化)の導入が進むと考えられる。

 政府は、2025年をめどにした外国人労働者の受け入れ目標を掲げているので、まずは、その時点にあわせて、7年後の2025年でどうなるかを考えてみる。

 米国では、7年間で、非ルーティン業務は6%減のスピードだった。日本での減り方はもっと大きいと思われるが、それでも少し控えめに見て、「7年後にルーテイン業務量が7%減少」するとしよう。

 その場合の実際の雇用者数の減少はどれぐらいになるのか。

 仕事を失うのは、正規雇用の一般職と非正規雇用者だと思われるが、正規一般職は、企業が雇用を守ろうとして企業内の配置転換で対応すると思われるため、今回は非正規に絞って予測する。

 現在、日本では非正規雇用は2036万人いる(図表4)。「7年後に7%減」であれば、2036万人×7%=約140万人が仕事を失うことが見込まれる。

 ただ、一般職についても、実際は新規採用減という形で、職が失われることは考えていたほうがいい。
● OECD試算では1700万人が 失業の可能性が「50-70%」

 この数字を、別の角度から検証してみよう。

 2016年にOECDは、加盟各国ごとに、10~20年後、労働者が機械に置き換えられる「機械代替リスク」の試算結果を発表した(図表5)。

 この試算は、ITに代替される可能性が「70~100%」と、可能性が「50~70%」の2種類のリスクで見たものだ。

 その結果を見ると、雇用者数全体で、機械代替リスクが「70~100%」の労働者の割合は、OECD平均で9%。各国別ではオーストリアで12%、米国で9%、ドイツで6%などとなっている。

 日本で、10~20年後に仕事が失われる可能性が「70~100%」ある人は、雇用者数全体の約7%、「50~70%」の人は約31%である。

 2018年で日本の総雇用者数は5460万人なので、10~20年後に、仕事が失われる可能性が「70~100%」の人は約380万人、失業の可能性が「50~70%」ある人では約1700万人になる。

 上記で算出した「7年後に約140万人減」という予測は、かなり控えめであることがわかるが、ここでは控えめな数字を出しておきたい。

● どういう仕事がなくなるか 一般事務や人事経理など

 ではIT投資によって、具体的にどのような職が失われるか。
 「2018年度年次経済財政報告(経済財政白書)」(2018年8月発表)では、「AIと雇用」に関する特集が行われた。

 その中で、OECD作成のデータや内閣府が日本企業に対して行ったアンケートも掲載されており、以下は、それらの分析などをもとに明らかになったことだ。

 それによると、日本でルーティン型業務が残っている主な職業を見ると、「事務補助員」「単純作業の従事者」が主であることがわかる。(図表6)

 また内閣府が2018年2月に実施した「企業意識調査」によれば、IoT、AIの導入が進行した場合に、「増える見込みの仕事」、「減る見込みの仕事」は図表7のようになりそうだ。

 「技術系専門職」は、回答企業全体の約60%の企業が増えるとしているのに対し、逆に「一般事務・受付・秘書」、「総務・人事・経理等」、「製造・生産工程・管理」「事務系専門職」などが、減る仕事の上位に並んでいる。
 また、実際に企業側が、AIに代替を考えている業務は図表8のようになっている。

 大企業、中堅企業、中小企業を問わず、「定型的な書類作成」や「労務管理関係」「スケジュールなどの作成」「販売・電話対応などの接客」といった業務は将来、AIに代替されそうだ。

● 外国人受け入れ拡大で 「IT失業者」と職の奪い合いに

 職を失う人のうち、自己投資して、IT関連などの新たなスキルを習得し、アナリスト、データサイエンティスト、コンサルタントなどといった高スキル高収入の職に転身できる人は極めて一握りでしかないだろう。

 また、夫が働いていたり、家族が自営業などをしていたりして、自分を養ってもらえる人は、仕事をすること自体を諦めてしまうかもしれない。

 だが、単身暮らしで自活しなければならない人や家族を養わなければならない人は、低スキル低賃金で雇用が不安定だったとしても生活のために仕事をすることになるだろう。

 こうしたことを考えれば、控えめに見積もった「2025年に仕事を失う約140万人」のうち、約半分の約70万人程度は、生活の必要上、低スキル低賃金の労働市場に参入してくると予想される。

 だが、低スキル低賃金の労働市場での競争は厳しいものになるだろう。
 政府は、7年後の2025年までに50万人超の外国人労働者の受け入れを目指すと発表した。日本ではすでに2017年時点で128万人の外国人労働者が働いている。

 7年後には、すでにかなりの数の外国人労働者が働いている労働市場に新たにIT投資で、仕事を失った日本人が参入するわけだ。

 この時の状況について、経済学者の佐和隆光氏は次のように予想している。

 「失業者の大半はハローワークで仕事探しをせざるを得まい。一念発起して何らかの職業訓練を受けない限り好景気時には忌嫌されがちだった『きつい』『きたない』『きけん』な仕事に就かざるを得なくなる」

 「目下、右記14業種は深刻な人手不足に見舞われているが、10年後には様相が一変し、在留外国人と失業日本人との間で、職を奪い合う熾烈な競争の展開が予想される。」(ダイヤモンド社「経」2019年1月号)。

 筆者の見方も同じだ。

 外国人労働者を入れるべきではないとは言わないが、少し判断が早すぎたのではないか。

 今まさに企業にAIが導入され、今後、IT投資が急拡大しようとしている。その動向をもう少し見て、職を失って低スキル・低賃金の職業に落ちてくる日本人の働き手の規模を確認しながら、外国人労働者の受け入れ人数と時期を判断してもよかったのではないかと思う。

 外国人受け入れ拡大のための出入国管理法案が国会で議論されていた時、情報化投資の加速で、今の仕事を失う日本人と外国人労働者の間で、仕事の奪い合いが発生するのではないかという議論は誰もしなかった。

 これもまた、IT・デジタル分野で、社会科学研究を担う専門家が日本には少ないために、議論が深まらない象徴的出来事だった。

 日本は、米国という先例から学び、その失敗を繰り返してはならない。

190409日経
人工知能(AI)が身近になるなか、社会はどう活用すべきか。政府がその基本原則を示した。AIを便利な道具としてだけでなく、人の価値や尊厳の向上に役立てるべきだとした。原則に拘束力はなく、踏み込めなかった点もあるが、これを出発点に産業界などでもルールづくりを進めたい。
政府の有識者会議がまとめた案について国民の意見を聞き、正式に決めた。AIをめぐり国内では学会や企業の一部が倫理指針や利用ルールを定めているが、政府が原則を示すのは初めてだ。
原則はまず、AIで人の労働を代替するだけではなく、人間の能力や創造力の向上に役立てる「人間中心」の理念を打ち出した。そのうえで、正しい利用のための教育や、企業が関連ビジネスに公正に取り組める環境づくりなど7項目を示した。
なかでもプライバシーやセキュリティーをめぐっては、社会で議論を呼んでいる問題に一定の判断基準を示し、評価してよい。
AIは消費者の購買行動など膨大なデータを集めて分析し、個人の経済状況や趣味、政治信条なども推定できる。原則では個人データの利用や流通について「個人が不利益を受けてはならない」とし、「本人が実質的に関与できる仕組みを持つべきだ」とした。
セキュリティーについてもサイバー攻撃などでAIが誤動作する恐れなどに言及し、少数のAIに依存してはならないとした。
政府は今回の原則とは別に、個人が企業にデータ利用の停止を求められる権利を設けたり、大量のデータを集めるプラットフォーマーと呼ばれる企業を規制したりする案を検討している。これらは個人情報保護法など個々の法律で対応することになるが、今回の原則が論議のたたき台になるだろう。
一方で、原則が判断を避けた課題も多い。たとえばAIがつくった音楽や美術、文学などの作品を創作物とみなすのか。AIを利用した製品やサービスを提供する企業はAIの判断結果について説明責任を負うのか。これらは官民で引き続き協議すべきだ。
海外では欧州がAI倫理指針案を示し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)も国際ルールづくりを始める。日本政府は6月に大阪で開くG20(20カ国・地域)サミットで今回の原則を提案したい考えだ。国際協議の場でもリーダーシップを発揮してほしい。

190513日経
新潟市で開いた20カ国・地域(G20)農相会合は12日、閣僚宣言を採択して閉幕した。将来の世界的な食料不足が予測される中で、人工知能(AI)やロボットを活用して農業の生産性向上を目指すことなどを盛り込んだ。食品流通網を改善して食品ロスを削減することや気候変動への対応を強化する方針も示した。
会合では中国などで家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」がまん延していることを踏まえ、動物疾病の情報共有の強化や家畜の衛生状態改善に取り組む方針でも一致した。
レセプションでは東日本大震災の被災地で作った農産品も振る舞われた。会合後に記者会見した吉川貴盛農相は「日本の食品の輸出促進に向けた良い機会になった」と成果を語った。農相会合はG20議長国として日本が各国の閣僚を招く最初の会議。34の国・地域と国際機関が参加した。

190513日経
人工知能(AI)を使った教材を学習塾に提供するアタマプラス(東京・中央)は中学生の教材を拡充する。数学のみだったが今夏にも英語を加える。約15億円を調達しており、教材開発や、システムを導入した学習塾の支援に充てる。
第三者割当増資をジャフコと米DCMベンチャーズが引き受けた。2017年4月の設立から2年間で累計20億円を調達した。資金は、教材を開発するエンジニアや導入先を支援する「カスタマーサクセス」の担当者採用に充てる。現在45人の従業員を21年春に150人に増やす計画。同社の教材はAIで生徒の得意不得意を分析し、理解が追いついていないところを手厚く教える。学習塾向けにタブレット端末用の教材を開発している。

190517日経
シリコンバレー=中西豊紀】米サンフランシスコ市は14日、人工知能(AI)を使った顔認証技術を行政機関が利用することを禁じる条例案を可決した。顔認証には「行政による監視につながる」と市民団体などが反発している。米国の主要な自治体で同様の禁止令を出すのは同市が初となる見通し。一方、新技術の芽を摘みかねないとの懸念の声も出ている。
条例案は委員会で8対1の賛成多数で可決された。カメラがとらえた人の顔の画像をAIで分析する顔認証ソフトウエアについて、警察など市の53の機関での利用を禁じる内容だ。連邦政府の管轄下にある空港や港湾での利用は認めるという。来週に予定する採決で正式に決め、1カ月以内に施行する。
同技術は犯罪者や不審者の特定などに役立つとして官民での活用が広がっているが、プライバシー保護の観点から採用への慎重論も出ている。サンフランシスコ市でも、人権団体の全米市民自由連合(ACLU)が「人々の日常監視につながり健全な民主主義にそぐわない」との意見を出すなど、禁止を求める意見が出ていた。
条例づくりを主導した民主党所属のアーロン・ペスキン市議は米紙ニューヨーク・タイムズに対し「IT(情報技術)大手によって変貌をとげた市での規制は米国へのメッセージになる」と述べた。米メディアによると、類似の禁止条例はサンフランシスコ市に近いオークランド市やボストン近郊のサマービル市などでも検討されているという。
一方で、多様な側面を持つ技術の一方的な禁止には疑問の声も出ている。ジョージ・ワシントン大学で憲法が専門のジョナサン・ターレイ教授は「公共の安全を守る技術を否定するのは困難だ」と日本経済新聞の質問に回答した。公共の利益を巡っての技術活用は解釈が分かれている。

190604日経
人工知能(AI)などに精通する高度なIT(情報技術)人材の獲得競争が過熱している。ソニーがデジタル人材の初任給引き上げに動くなど好待遇で募集をかける企業が増えている。ただ待遇だけで必要とする人数の確保は難しい。技術者を擁するスタートアップ企業のM&A(合併・買収)や社内研修など、採用や育成の手法を多様化し人材不足に対応する考えだ。

「ここ2、3年で専門職に高い給与を支払うことにためらわない会社が増え、明らかに雰囲気が変わった」。ソニーの人事担当者はデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割増しにする制度の背景をこう説明する。2019年度から適用し、このほど幹部社員に人事制度を改定する通知を始めた。
あらゆる産業にデジタル化の波が押し寄せる中、AIの技術者やデータ分析の専門家である「データサイエンティスト」、サイバーセキュリティー人材などの需要は高まっているが、供給が追いついていない。経済産業省によると、IT人材の不足数は18年時点で22万人に達する。同省の試算では、先端IT人材に絞っても30年に55万人足りなくなる恐れがあるという。
厚遇で外部から人材を呼び込む動きは広がる。NTTドコモはAIなどの専門性を持つ人材に対し、最高で同社の平均年収の3.4倍にあたる3千万円を提示して今夏にも社外から募集を始める。研究開発部門やエンターテインメントなど非通信分野を対象とする新たな人事制度を設けた。
1年契約の年俸制で、採用時に前職での実績などをもとに個別に報酬額を決める。現役社員も応募でき、高額年俸で優秀な人材を確保する。
M&Aを活用する動きも出てきた。京セラの子会社、京セラコミュニケーションシステムは1月、AI関連技術を手がけるスタートアップのRist(リスト、東京・目黒)を買収した。リストは深層学習(ディープラーニング)や機械学習などの画像システムの開発、データ解析などを手がける。人材や技術を取り込みサービスや製品の強化につなげる狙いがある。
電通もAI開発のスタートアップを買収した。榑谷典洋執行役員は「AI技術を持つ会社を子会社として持つことが優位性につながる」と話す。

伊藤忠テクノソリューションズはAIの講座を開設して人材育成を進めている
すでに社内にいるIT人材を高度化しようと、研修を実施する企業も増えてきた。システム開発の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は今年3月から選抜したエンジニア向けにさらに高度なデータ分析やAI開発などの技術を学べる研修を始めた。東京海上ホールディングスも保険ビジネスに活用できる「データサイエンティスト」を養成するプログラムを5月に開講している。
ダイキン工業は大阪大と組み社内講座を設けており、20年度までにAIなどに詳しい人材を1000人育成する方針だ。
逆にこうした企業のニーズを取り込もうと、技術を外販する企業もある。LINEは19年上半期中に自社開発のAI技術を外部に有償で開放する。AI人材が不足する中、まずは言語解析の技術を共有する。開発の専門家がいない企業でもAIが自動回答する「チャットボット」の開発などに生かせるようにする。
課題もある。AI人材を確保できても経営層のITへの理解度が低ければ活躍の場を提供できず、人材が定着しない。
PwCジャパングループが17年にまとめた世界の最高経営責任者(CEO)意識調査では、日本企業のデジタルやテクノロジーに対する関心が世界で最低水準だった。AI人材が常に最新の技術を学べるよう、技術者に兼業や副業を解禁するといった働き方の見直しもセットで取り組む必要がありそうだ。

190911日経
ネットサービスの急成長を支え、日々進化する人工知能(AI)。人間の仕事を奪うとの懸念も強いが、実はそのAIを機能させるために驚くほどの手間と労力がかかっている。そんなAIを裏で支えるのが「ゴーストワーカー」だ。
「AIの仕事って、こんなところに落ちてるんや。面白そう」
関西に住む佐藤かおりさん(仮名、28)が、インターネットで副業を始めたのは2017年のこと。正社員としての年収は250万円。家でできる副業をしようとクラウドソーシングのランサーズ(東京・渋谷)に登録した。そこで見つけたのがAIの機械学習を手伝う仕事だった。
判断を指南

AIは大量のデータから学ぶ機械学習が核。データを与えるだけでなく、物事の判断を教える必要がある。赤ちゃんに「この写真は犬」「この写真は猫」と教えるような作業で、タグ付けやラベリングといわれる。単純だが人間の見識がいる。
佐藤さんはそんな「教師役」のひとり。アニメのキャラクター画像を見ながら一つ一つ性別を仕分けたり、企業が使うAIチャット用に質問と答えを準備したりしている。例えば、「このワンピースに合うジャケットある?」との問いにいくつかの答えを用意する。
佐藤さんは平日の帰宅後に1~4時間、土日に4~6時間働き、月数万円の収入を得る。他のワーカーとチャットで雑談し、仕事を分け合うことも。「見えない会社に勤めているよう」と話す。
「最先端のAIを障がい者が支えていることを知ってほしい」。ミンナのシゴト(栃木県鹿沼市)の兼子文晴社長はこう話す。AI開発などの作業を企業から請け負い、AIスピーカーに入力された音声から固有名詞だけ拾うといった仕事を障がい者に委託する。時給は約1300円。依頼は急増中だという。

ランサーズによると「企業の発注が急激に伸びたのはこの2~3年」。米マッキンゼー・アンド・カンパニーは18年のリポートでAIの課題を5つ指摘した。その1番目に置いたのが「ラベリング」。情報収集の方法や、判断の偏りの是正などはその後に続く課題と位置づけている。
AIでは人の介在が不要な「教師なし学習」の技術開発も進むが、野村総合研究所の上田恵陶奈・上級コンサルタントは「教師ありも教師なしもそれぞれ強みがある。人による作業がなくなることは当面ない」とみる。
米国では今春、米マイクロソフトの研究者らが「GHOST WORK」と題する本を出版し、話題を呼んだ。この本では様々なゴーストワーカーが紹介されている。
例えば、ウーバーが手がける配車サービス。米国で暮らす客と運転手の間に、実は見えない第三者がいるという。インドに暮らしながら、ネットで運転手を本人か確認し、事前登録した顔と一致すれば、運転手にゴーサインを出す人だ。
低賃金や孤独

世界にゴーストワーカーがどのくらいいるかは不明だが、企業と単純労働の働き手を結ぶサイトは各国にある。世界銀行は15年に約580万人が登録していると報告した。最近では経済が破綻状態にあるベネズエラで自動運転のための情報が入力されているとの報道もあった。仕事は多岐にわたる。
新たな雇用を生むものの、必ずしも処遇がいいとはいえない。低賃金、孤独、スキルアップの機会がない。ゴーストワーカーが挙げる悩みだ。
佐藤さんも「企業はネットの向こうにスーパーマンがいると勘違いしていると思うことがある」と話す。1カ月で1万件の画像処理といった過剰発注を見かけたり、明らかに事実と異なる情報の入力を求められたりしたことがあるという。
企業はAIの開発やコストカットを急ぐあまり、見えない働き手に無理を強いていないだろうか。ネットサービスを含め、その質の向上のためにも、開発過程で働き手に十分な配慮がなされているか点検が必要だ。



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