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朝生と明太マヨと予算至上主義


「お前、朝生に出てそうな気がするわ」
一年前の予言が、現実になった。

昨年の今頃、高校の先輩でゲーム会社社長の田中さんと毎日のようにインスタライブで話をしていた。
川釣りの話を聞いたり、年金問題の話をしたり、プレゼンの資料を直してもらったり。(そのインスタライブの様子は、日経スタイルでも取り上げられた)


いろんな話をした中で、田中さんから予言めいたことを一つ言われた。

田原総一朗さんが司会を務める「朝まで生テレビ」にパネリストとして出演して、「田内さん、それは違う!」と突っ込まれていそうな気がすると言うのだ。その映像が思い浮かぶわ、と幾度となく言われた。
朝まで生テレビといえば、35年前から続く討論番組で、テレ朝の看板番組だ。

当時は、田原さんとは全く面識がなく、実現することはないと思っていた。
ところが、昨年8月にたまたま参加した田原カフェというイベントで田原さんと知り合い、僕の本を読んでもらい、日本経済の将来について対談もさせてもらった。糸を手繰り寄せるように、するするするっと話がすすんで、朝生にも出演させてもらった。不思議な話だ。

田中さんには、糸でも見えているのだろうか。
20年前、経済の”け”の字さえも知らない僕に
「田内、数学得意そうやから、ゴールドマンでトレーダーになった方がいいんとちゃうか」
とアドバイスしてくれたのも田中さんだった。
そのときも、するするするっと話がすすんで、その後、17年間トレーダーとして働いた。

さて、朝生といえば、多くの論客たちが討論をする番組なのだが、ディベートでのように話す時間をしっかりもらえるわけではない。何でもありのルールの中で、とにかく自分の主張に持ち込むことが大事だと宮台さんに教わったのだが、そう簡単に実践できるはずがない。

論客たちの中で圧倒的に話がうまかったのは、京都大学の藤井聡先生だった。生放送収録中に先生の話を聞きながら「明太マヨ最強説」を思い出した。

「アメトーク」の中で、アンジャッシュの渡部健が、どんなお題を出されても、必ず明太マヨが合うという結論に導いて、スタジオの笑いを誘っていた。
たとえば、豚肉に対してなら、「豚肉の油に明太マヨが合わさると、ちょっとした辛味にまろやかな味わいがマッチする」と説明し、
ホワイトシチューに対しては「クリーム系なので明太マヨのマヨネーズが入り口になる」と主張する。
「靴」という無茶苦茶なお題に対しても、「革も動物の皮を使っているわけだから、明太マヨに合う」と渡部は返していた。

それと同じで、藤井先生はどんなお題を拾っても、同じ結論に導くのだ。
「1997年に消費税を導入したからいけないんです。消費税減税しましょう」

日本の経済成長の話をしていて、消費税減税の話になるのは当然だとしても、賃金の話をしていても、最後は消費税減税の話になったし、一見関係なさそうな少子化の話題でも、最終的には藤井先生が話題をさらって消費税減税の話をするのだ。

それがこじつけではなく、まったくの正論で、かつ分かりやすい。名人芸の領域だ。

消費税を下げないと日本経済が再興できないという熱い思いが伝わって来た。非常に勉強になった。

一方で、非常に残念なこともあった。

国債発行について小林慶一郎氏の将来不安を煽る発言があったので、現場で国債を取引してきた専門家として、お金の流れの違いについてお話しさせてもらった。
たとえば、借金して道路を作るとき、①国内にいる我々が汗水たらして作る場合と②国内にいる我々がラクをして外国に働いてもらう場合では、お金の流れ方は全く違う。
①では国内に残るが、②では海外に流れる。借金の意味合いは誰が働くかによって全く違う。ところが理解してもらえず、小林氏は首をひねっておられた。

日本では、予算至上主義的な考え方が根強い。働く人ではなく、予算(お金)によって道路が作られているという拝金主義的発想が当たり前になっていて、完全に働く人々の存在が無視されているせいで、お金の流れ先なんて考えられていない。

 もちろん、予算をつけても問題が解決するわけでは無い。コロナ禍で医療予算を増やしても、医療サービスの供給は増えなかった。医療従事者が増えるわけでは無いからだ。予算をつけてもワクチンが手に入らなかったのは日本ではすぐに作れず、外国に頼るしかなかった。もちろんお金は外に流れ出ていく。
重要なのは国内の生産力であり、働く人の存在のはずなのに、予算をつけることで問題が解決した気になっている。

カネ経済しか見ていないから、GDPに含まれない子育ては生産性がないとみなされ、子育てをする主婦は労働参加率には含まれない。

カネが惜しくて少子化対策、子育て支援、教育にお金が回らないなんて本末転倒だろう。大事なのは社会を支える人を育てることだ。

カネ経済を語る学者によって日本は沈んでしまうのではないかと戦慄を覚えた正月だった。

数日後、「異次元の少子化対策」が岸田首相の口から出て来たが、その中身はどうなることやら。


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