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ビールの売り子とおじさんの話

こないだ神宮球場に野球観に行ったら、ビールを買うたびに売り子さんとひと言ふた言しょうもないことを話すおじさんが近くの席にいたんですよ。まあよくある光景ですよね。おじさんだってきっとわかってるんですよ。売り子さんのバイト代は歩合だから、みんな1杯でも多くビール買ってもらうためにがんばって営業で愛想ふりまいてるってことを。いつも買うことにしてるお気に入りの売り子さんが遠くから目ざとく自分を見つけてわざわざ近寄ってきて声をかけてくるのも、自分に好意をもってるからじゃなくて、ビールを買ってもらいたいだけだってことを。わかってるんです。でもおじさんにとってはそのひと言ふた言しゃべる時間が貴重なんですよ。だって自分に好意的な姿勢で接してくれる若くて可愛らしくて愛想のいい女性なんて普段どこにもいないじゃないですか。しかも自分は客というちょっと優位な立場で。ビールたくさん買ってあげれば売上にも貢献できるし、気前のいいところも見せられるし。自分なんてただの固定客のおじさんのひとりだってわかってても、「向こうから寄ってくるってことは少なくとも嫌われてはいないよな」とか、「自分の話で笑ってたからむしろ好意的に思われてるんじゃないか」とか、彼女にとって自分はちょっと特別な存在なんじゃないかって勘違いしたりするんですよ、男はバカですからね。書いてて悲しくなってきました。女は海。男はバカ。

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