洗濯物が乾きやすい条件とは

工業化学って身近な現象に関わる要素が多いので、学ぶと面白い洗濯機にかけて、脱水をかけ終わった洗濯物を物干し竿で乾燥させますが、雨が降っていたり、じめっとしていると乾きにくく、強い日差しにカラッと晴れた日はすぐ乾きます。

乾燥という操作は加熱などを行うことで水気を飛ばし乾かすことを言います。乾かす対象は洗濯物のような布や、お皿のような容器、陶器・プラスチック、土や粉、作物等があります。もちろん工業的には蒸発させるものが水ではないものもインク、ペンキ、ペースト等たくさんあります。
これらのものを乾燥させるとき、どんな環境条件が乾燥速度の支配的要因なんでしょうか。

例えば布の乾燥の場合だと、湿った布から水分が揮発する過程がまず考えられます。揮発する箇所は布と大気表面界面なので大気との界面を持たない布内部に含まれる水分が表面に移動する過程が発生します。表面に移動した水分はまた揮発するといったループによって布が乾燥します。

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上記のメカニズムより固体(上記では布)表面での水分の揮発速度と、固体内分の水分拡散速度が乾燥速度に影響を与えることがわかります。

水分の揮発は静的には雰囲気の温度と湿度によって変化します。温度を上げることで揮発させるための熱を固体に与える必要があります。太陽光などの輻射で熱を与えることも有効です。
雰囲気の湿度を下げることで水分の濃度差ができますから、揮発速度が大きくなります。実際の乾燥を考えると固体表面付近の雰囲気は直前に揮発した水分の層が濃厚に存在しますから、その層を取り除くために雰囲気を積極的にかき混ぜることが有効です。
髪の毛をドライヤーで乾かす作業は髪の毛に熱を与えながら湿気た空気層を送風によって取り除く、効率的な乾燥を行っています。
洗濯物乾燥機でもヒーターによって洗濯物に熱を与えて、洗濯物を空気と一緒にかき混ぜることで固体表面に滞る湿気を取り除いています。

固体内の水分拡散速度は固体によって大きく異なります。同じ繊維や粉体でも密度や構造、圧縮手法によって水分が移動する隙間の構造が異なりますから、別途解析が必要です。
また、固体表面では水分の揮発が発生しているため、表面部の温度が下がるので、固体内部の熱を素早く表面に与える意味で固体の伝熱係数も乾きやすさを左右します。

オーブンなどの管理された雰囲気内で乾燥させたときの乾燥重量の挙動を記録すると、水分の揮発と固体内部の水分拡散が一定の速度で進行するため、一定速度で重量が減少するゾーンが観察され、その時間帯のことを恒率(定率)乾燥期間といいます。乾燥過程を解析する際に重要な期間で、工業的には短くすることでタクトを稼ぐことが求められたり、ここを短くしすぎると乾燥体に不良を与える原因になったりします。
洗濯物の乾燥し易い・し難いはこの期間が長さに関係があり、この過程が速やかに終わるものが乾燥し易いです。

洗濯物の観点からまとめると
外で干す場合、太陽光の輻射熱が得られるため部屋で干すよりも乾燥し易い条件になります。部屋で干すよりも周りの雰囲気が自身から揮発した水分によって湿気が充満し難い点も乾燥し易いかなと考えられます。温度や湿度、送風条件は自分たちで決められる条件ではないので、天気予報を見て各自で判断する必要があります。
部屋干しの場合、エアコンや送風機を使用することで乾燥条件を整えることができ、天候に左右されません。空間に湿気が充満しないよう換気しながら、洗濯物に風を当て続けることがとても重要です。温度は同じ空間で生活することを考えると厳しい条件で設定はできませんが、空間を区切ったうえで布団乾燥機のようなものを使って速やかに乾燥させることはできます。
どちらの場合でも重要なことは、洗濯物同士の距離間を少し離してあげることで、空気の通り道を作ってあげた方が、湿った空気を速やかに除去できるので乾燥し易くなります。生乾き等の乾燥不具合を防ぐためにもハンガーにかけるときにちょっとだけ気にしてみるといいかも。

参考文献 
改定新版化学工学通論Ⅰ 疋田晴夫著 朝倉書店

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