二硫化炭素

二硫化炭素(CS2)は二酸化炭素(CO2)の酸素を硫黄原子に置き換えた直線状の構造を取っている分子です。
常温で液状で特有の匂いがあります、何というかこう、重い感じの。

B3LYP, 6-31G(d) 構造最適化後の構造 灰色が炭素、黄色が硫黄原子

二酸化炭素は身近にはドライアイスや炭酸水としての利用があり、気体中の濃度さえ管理できていれば安全・安定な分子です。
一方、二硫化炭素は高温で爆発します。2020年の事故の報告を引用します。

12月27日「二硫化炭素を使った実験で爆発、火災」京都府
京都府宇治市の大学実験室で爆発、火災が発生した。ドラフトチャンバ内の実験装置が焼けたが、ドラフトチャンバ外や建物への延焼はなかった。研究員が単独で、3リットルのガラスフラスコを用いて酸素雰囲気下で、1.5リットルの二硫化炭素を溶媒として合成実験をしており、サンプリングの際に体に帯電した静電気が酸素導入用のステンレス針と溶媒の間で放電して着火した可能性。研究員が顔や手を火傷した。
ひとこと:二硫化炭素は消防法4類危険物の特殊引火物に分類され、引火点だけでなく発火点も極めて低く、酸素中での加熱操作は火災や爆発のリスクが高い。

https://anzen.hoanryoku.jp/incidents/202106071551

二硫化炭素の発火点90℃であり、高温に晒すと危険な状態になります。
昔見たミステリにも二硫化炭素入りの瓶を爆発させる記述があったと記憶しています(Yの悲劇?:エラリー・クイーン、1932)。

昔所属していた研究室ではフラーレンのようなナノカーボン類を抽出に二硫化炭素を使用していました。
その他水素原子を含まない液体という性質から、NMRの測定溶媒として使用していました。


Gaussian 09, Revision A.02, M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, G. Scalmani, V. Barone, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, X. Li, M. Caricato, A. Marenich, J. Bloino, B. G. Janesko, R. Gomperts, B. Mennucci, H. P. Hratchian, J. V. Ortiz, A. F. Izmaylov, J. L. Sonnenberg, D. Williams-Young, F. Ding, F. Lipparini, F. Egidi, J. Goings, B. Peng, A. Petrone, T. Henderson, D. Ranasinghe, V. G. Zakrzewski, J. Gao, N. Rega, G. Zheng, W. Liang, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, K. Throssell, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. Bearpark, J. J. Heyd, E. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, T. Keith, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, J. M. Millam, M. Klene, C. Adamo, R. Cammi, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, O. Farkas, J. B. Foresman, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2016.

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