「ペットにはサワガニを!」と「宝塚記念M3血統分析」
今回は安田記念が終わってしまったので宝塚記念に向けて芝中長距離路線の血統分析をすることになった。ただその前に、新しい仲間(カニ)が加わったのでその話を少し。また後半では前回の続き、「NHKマイルC2600倍的中ドキュメント後編」もお届けしたい。
母が倒れてカニを飼うことに
ひょんなことからカニを飼うことになった。サワガニである。これがまた信じられないほど可愛いので、今回はちょっとその経緯と飼い方を書いてから、本題に移ろうと思う。
ある日、兄から切迫した声で電話が掛かってきた。
「母が倒れたのですぐにこっちへ来てほしい」
週末が近づいていたので、慌てて予備を含めたパソコン2台を鞄に突っ込んで車を走らせた。途中のコンビニで久しぶりに週刊ブックを買う。新聞がいつ手に入るか分からないので、事前に病院の待ち時間とかで予想の見当を付けておいた方が良いという判断だ。
そして重苦しい空気のまま、運ばれたという病院へと向かった。
受付で母のいる部屋を教わり、中に入る。すると部屋にはもうかなりの高齢になった母が、案外元気そうに座っていた。
「あら、久しぶりね」
医者の説明によると不整脈があるらしいけど、それほど深刻でもないということで、もう今日のうちに帰って良いという話だ。
ホッとしてみんなで病院から実家に戻り、母の最近の様子なんかを聞いているときだ。
「そういえば、カニがいるんだよ」
兄がそうボソリと言うと、自分の部屋から水槽を持って戻ってきた。中には大量のカニがうごめいている…。
「魚屋の前を通ったら、サワガニが売ってたんだ。何匹か持って帰る?」
「あぁ、うん」
こんなの貰ってもどうやって飼うのか途方に暮れたが、兄に言われると断るわけにもいかず、4匹だけ貰って帰ることにした。
「これ、食べて残ったカニ?」
「いいや。もっと、一杯持っていっても良いぞ」
「4匹でいいよ」
あまりお互い話さない兄弟なので、そう言って家に帰った。
男はいくつになっても子どもだ。生きているカニを街角で見て、つい家に連れて帰りたくなったのだろう。
「結局、カニをもらいに出かけたわけか」
長い1日だった。
まさか母が危篤かと何日か滞在する覚悟で慌てて出かけたその日のうちに、4匹のカニと一緒に家に戻ってくるとは、思いもしなかった。
「水は一日おいてカルキ抜きしてからね。かなり丈夫だよ」
そんな兄の言葉を思い出しながら、取り敢えず水を汲んで明日に備えて、寝ることにした。
「なんだって今までカニを飼わなかったんだ…!」
カニを飼い始めたわけだが、これが驚くほど可愛い!こんなにペットに夢中になったのは初めてと言って良いくらいだ。
共食いするという情報をネットで見たので怯えていたが、かなりの平和主義者で、家にあった狭いケースに4匹も入れているのにほとんど喧嘩もしない。
お互いの上に乗ってほぼ丸一日動かない日があるかと思うと、かわりばんこに上に乗って水槽をよじ登り、脱出を試み続けるときもある(夜行性らしく、寝ているときは結構騒がしい)。
「アーモンド小魚」の小魚をあげてみると、お互いに端を仲良く咥えて、奪い合うことなくゆっくりと食べ進んで行くではないか。
その様子ときたら…!
サワガニの完璧な飼育法
二日に一度くらいの水替えで良いらしいが、小魚とかをあげると水質が急激に悪化するので、毎日替える場合もある。少量の水をそのまま替えるので、嫌な臭いもほとんどしないし清潔だ。ポンプも要らないので、魚を飼うよりも簡単である。
ほんの数センチの水を捨てて新しい水を入れるだけなので、水替え自体は全く苦にならない。
食事は二日に一回くらい、食べきれるくらいの少量で良いらしい。
何度か脱走されて週末の予想にも影響を及ぼし始めたので、専用の水槽を買うことにした。ペットショップには案外良いものがなく、百均(と言っても100円ではなかったが)で蓋の縁まで透明という、なかなかおしゃれな水槽を見つけて移し替えた。
最初は隠れ家と水質の安定も期待して家にあった木炭を置いていたのだが、植物が良いのでは?ということで、ホームセンターでミニ観葉植物を買って入れてみた。
すると最初は警戒していたものの、しばらくするとよじ登って、繁みの中で寝るようになった。
ただ1週間もすると観葉植物は見るも無惨なはげ山のようになってしまう。アイビーや葉の厚いタイプのシダだと結構丈夫で10日くらいもつが、それでもすぐ限界が訪れる。
そこでくたびれた観葉植物はベランダのプランターにポットごと植え、蘇生を計ることとした。その間に新しいミニ観葉植物を買って入れ替えるというローテーション作戦だ。ミニ観葉植物は160円くらいなので痛くはない。むしろいろいろな種類の観葉植物を育てることになって、それはそれで楽しかったりする(農薬には注意しないといけないけど)。
98年V戦士に見事な手綱捌きを見せる三浦監督!
とにかく家のあらゆる場所に水槽と一緒に連れて行って、傍らにいつも置いて過ごしている。カニと一緒に見るベイスターズ戦(そう!言い忘れていたが、98年V戦士をコーチ陣に迎えた昨年からのベイスターズは別の球団に生まれ変わっている。個性的な先輩達に囲まれて大丈夫かと思ったが、その手綱捌きは見事なものだ)は、至福の瞬間だ。もちろんこれからドキュメント後編をお届けするNHKマイルCの万馬券も、カニと喜びを分かち合った。
目をぴゅんと出している仕草や、横走り、上に競うように登っては2匹で絡み合いながら何度も落ちていくさま。その全てが可愛らしく、臭いもないので、まさにお勧めのペットだ。何故これほどのペットが今まで一大ブームにならなかったのか?なんとも不思議な話である。
寿命は10年くらい生きる個体もいるらしいが、一体このカニはいくつなのだろう?死別を想像すると今からゾッとするが、魚屋で売っていたというからには恐らく養殖なのだろう(それとも一匹一匹捕まえている?!)。ということは、普通大きくなったらすぐに出荷するはずで、…若いに違いない!
カニ自体びっくりするほど愛らしいのだが、恐らくこの覚めやらぬ興奮は、それとはまた違った何かを感じる。
子どもの頃、夢中になって獲った生き物たち。その中でもザリガニやヤドカリ、浜辺のカニなんかにはよく出会ったし、飼うことも多かった。だが、その興奮とこれは次元が違う。
強いて言えば、街中で育った自分が田舎の田んぼでフナやドジョウを捕まえて飼った、あのときの感覚に近い。あるいは友人がクサガメを捕まえて、「餌を食べないんだよね」と譲られて育てた日々。それがこの歳になって増幅された感じだ。都会では見られない、昔から日本に生息している自然の生き物が目の前にいて固有の生を営んでいる、その興奮。恐らく男にしか分からない、確かな感触がここにはあるのだ(実際うちの女性陣は、全くカ二に興味を示していない)。
ただ、今から冬の冬眠を思うと不安で仕方ないのだが。
芝中長距離(宝塚記念)M3血統分析
今回は、せっかくこの時季になったので宝塚記念も見据えてマイル路線の分析予定を変更して「古馬芝中長距離」のM3分析をお届けすることになった。
CSLのタイプ表記は馬の性格を表し(敢えて細かく分析過程を紹介する目的で、例えばCLで済むタイプでも、CL(S)など、存在要素を出来るだけ載せている)、「オプション」はその馬が激走しやすいタイミングを表したものになる。オプションの使い方は前回や前々回「~ジオグリフを例に~」を参照して頂きたい。
LC(S) アスクビクターモア
ディープインパクトの中では量は少なめで硬くパワーが豊富なタイプ。速すぎない流れを揉まれず先行して少し上がりの掛かる前残り馬場がベスト
オプション(外・延・重・開) 距離(22・20・25) 状態(不安定)
LC(SC) イクイノックス
量が現役屈指で体力もある。揉まれずスムーズな競馬が理想。ただS質が補助しているので鮮度時ならある程度馬群も対応。高速上がりや道悪など極端な馬場だとよりパワーが活きる。
オプション(延・開・特・巻) 距離(20・24・18) 状態(平行)
CL(LC) ヴェラアズール
父産駒はC要素が強いが量は少ない。ただ同馬は量も豊富。速い流れの差し競馬向きも、馬群を割れる特性を生かし切るには内寄りの中枠がベストだ。ややS質が弱いので活性化されたステップか少し湿ったた馬場が理想になる。
オプション(開・多・中・重) 距離(24・22・25) 状態(平行)
S(LC) カラテ
S質が強く量と体力もある。特殊馬場を強引に目一杯走って強い。長い距離なら平坦の方が競馬はしやすい。ブレーキを掛けずに一気に加速する形が理想
オプション(重・短・特・開) 距離(18・20・16) 状態(不安定)
SC(SL) ジェラルディーナ
闘う意欲がかなり強くパワーが豊富でしぶとさも十分。長い距離だとブレーキを掛けずに一気に加速する競馬がベスト。叩かれながら馬体を少し増やして集中力を高めていく形で、しぶとさを発揮する形が得意。
オプション(短・坂・中・重) 距離(22・20・18) 状態(平行)
S(LC) ジオグリフ
気の良さがあってS質も強め。鮮度時なら馬群も対応するがスムーズな競馬がベター。ただ長い距離だと体力的にロス無く乗りたい。
オプション(延・開・中・重) 距離(18・20・22) 状態(不安定)
LC(CS) ジャスティンパレス
量系だがディープインパクト牡馬ではかなり珍しいレベルでC要素も強いのが特徴。したがって鮮度時なら馬群を割れる。速すぎない上がりでの内~中枠で混戦の差し競馬が合う。
オプション(延・開・中・短) 距離(22・24・20) 状態(平行)
CS(L) スルーセブンシーズ
ドリームジャーニー産駒らしくC要素が強く、混戦の差し競馬で強さを発揮するが、弱い相手にあっさりと取りこぼすタイプ。前半速すぎない流れで馬群に取り付いて、徐々にペースアップしての激戦で強さを見せる。
オプション(内・重・延・巻) 距離(22・20・18) 状態(不安定)
SC(LS) ダノンザキッド
ジャスタウェイ産駒らしくS質が強く精神コントロールが難しいので、集中すれば強い相手に頑張るが、単調な競馬だとどんな相手でも凡走するリスクが高い。ペースアップや内枠、少しだけ湿った馬場、位置取りショックなどで集中させたい。
オプション(重・短・延・内) 距離(18・20・16) 状態(不安定)
LS(LC) ディープボンド
体力とパワーで走るタイプ。キズナ産駒はL質が強いが同馬はS質も強いので鮮度時ならある程度馬群に対応する。ただ通常時は上がりの掛かる消耗戦でブレーキを掛けない競馬向きで揉まれると嫌がる。
オプション(延・巻・中・重) 距離(24・25・30) 状態(不安定)
LC(S) ブレークアップ
まとまっていて強い負荷を掛けなければ量と体力を活かせる。前半忙しい競馬になるとバランスを崩すタイプで、スローを前に行くか、平均ペースなら差した方が良い。
オプション(延・巻・重・開) 距離(25・24・22) 状態(不安定)
LC(S) ブローザホーン
エピファネイア牡馬らしく量と体力の絶対値で走るタイプだが、S質もあって鮮度時はある程度まで馬群も対応。とはいえ過度に揉まれると良くなく、湿ったりしてばらける展開が理想。
オプション(延・重・外・坂) 距離(25・24・22) 状態(平行)
CS(L) ボッケリーニ
まとまっていて破綻の少ないタイプだが、長い距離の消耗戦だと鮮度時や馬群に入れて体力を温存したい。湿った馬場の適性は高い。
オプション(重・特・開・内) 距離(22・18・20) 状態(平行)
CS(CL) ミクソロジー
オルフェーヴル産駒らしくC要素が強く、馬群に入れての上がりが掛かる消耗戦でかなりタフに走り抜ける。やはり馬群に入れられる内目がベターで、道悪も置かれずに流れに乗りやすいので向く。軽いレース質だと弱い相手でも危ない。
オプション(内・重・延・多) 距離(30・25・ 26) 状態(平行)
SL ユニコーンライオン
消耗戦向きなので逃げ馬でもペースダウンせず、縦長の展開に持ち込むのが理想。逃げ馬にしては気の良さは少なく、使っていた方がベター。
オプション(重・延・巻・詰) 距離(20・22・18) 状態(不安定)
CL(S) ライラック
オルフェーヴル産駒らしく馬群に入れてしぶといタイプ。上がり勝負は合わないのでハイペースや道悪の消耗戦向きで強い相手の混戦で怖いが、弱い相手の単調な競馬では危ない。坂はあった方が良い。
オプション(短・延・内・重) 距離(22・20・18) 状態(不安定)
こうやって見ていくと、前回の3歳牡馬M3分析より、C要素の強い馬の割合が増えている。3歳までのレースだと、量と体力の完成度で上回る非C系の方が優位という影響もあるか。確かに広い東京2400mで行われ、かつ各馬の鮮度が高いダービーなどは、L系にピッタリの条件ではある。それに加えて、ここ1,2年の新種牡馬に硬くて仕上がりの早いタイプが多かったのも関係しているのだろう。前回、解説するという話だったデラクレーションオブウォーもそういったタイプなので、この場で簡単にM3タイプを解説しておきたい。
デラクレーションオブウォーは非C系で、S要素とL要素が強い。したがって揉まれると嫌がるが、案外真面目な側面もあり、重い馬場やばらける展開だと比較的内でも我慢強く走れる。心身が硬く、かつパワーのあるいタイプなので道悪適性は抜群に高いが、こういうタイプらしく比較的速い単調な競馬にも対応して、無理に矯めるか、フレッシュな時期は高速上がりも悪くない。ただ良馬場の場合は出入りが激しいと我慢しにくい。道中我慢させるには、やはり先行するか、矯めるだけ矯めて追い込む形が理想になる。揉まれたくない体力型なので延長適性もまずまず高いが、延長になって緩い流れの切れ味勝負だと脚が溜まらないので、上がりの掛かる消耗戦になって欲しい。
ドキュメント・NHKマイルC2600倍的中の裏側 後編
ではNHKマイルCのドキュメント後編を始めよう。前回ちらっと話した、「Mの騎手論」と「施行順」の話も取り上げてあるのでお楽しみに!
ディスクリートキャットのリズム
「こんなところにいたのか」
新聞から飛び出してきたカニを慌てて捕まえて水槽に戻す。
と、そんなとき最初に切り捨てた1頭が突如ひらめいた。
3番人気オオバンブルマイだ。前走アーリントンCを5番人気で激走した馬だが、実はこのレースでは本命にして馬単86倍を当てていた。
その理由は、「休み明け」、「重馬場」、「位置取りショック」だった。
アーリントンCは休み明けでフレッシュな状態。しかも朝日杯FSを京王杯激走後のストレスで7着に凡走した後なので、ノーストレスだった。
またディスクリートキャット産駒は心身が硬いため、道悪適性が高い。
そして位置取りショックである。朝日杯FSは出遅れて15番手。2走前は先行して勝ったように本来は前に行ける馬で、GⅠの朝日杯FSほど激流にならないアーリントンCは、間違いなく前に行く位置取りショックを完成させるだろう。
つまり、ステップ、馬場、位置取りショックと全てが揃っていたので前走本命にしたわけで、そこで激走した以上、今回はストレスがきつくまず勝ち負けは無理だ。特にディスクリートキャットは硬いので反動が出やすい。
また芝ではフレッシュなとき以外は善戦止まりになる、Mでいう「均衡状態」になりやすいのもディスクリートキャットの特徴なので、余計に勝ち負けは無理だろう。
ただ、逆に言うとそれなら3着前後の善戦は十分にあり得るとも言える。しかも今回も得意の道悪だ。
それでも5番手に挙げるにはあまりに脆弱な理由になるほど、今回はMの基本ストレスがきつい。したがって7番手評価くらいで十分。
そんなふうに考えていたのだが、最終的に5番手に取り上げ、お陰で3連単の26万馬券も的中したのだった(何故あえて5番手に取り上げたかは、「Mと騎手」というテーマで後ほど書こうと思う)。
そして当日、バイアスに癖はない
当日の朝。
うーん、これは間違ったかな?ダノンタッチダウンにしとけば良かったか。
雨の気配はなく、良馬場である。ただ午後には雨が降る予報だ。普通の雨が少し降ったくらいでは、今の高速馬場だとほとんど影響はない。どのくらい降るかが勝負になってくるだろう。
ようやく12時頃に雨が降り始めた。次第に雨量も増えてくる。
「雨雲が間に合ったか!これはむしろ対抗のダノンタッチダウンが怪しくなるほどの雨量かもしれないぞ」
午後2時25分、湘南S発走。
同じ芝1600mのレースだ。前半58.8秒と平均ラップで進み、勝ち時計は1.33.6。レース上がり34.8秒だから、最も恐れていた超高速馬場の可能性はこれで消えた。差し-先行の組み合わせで決まったのも朗報だ。馬場に極端な偏り、バイアスがないのは何よりである。バイアスが強すぎるとその馬場に乗じて計算外の馬が飛んでくる確率が高まるし、騎手が馬場を意識しすぎてペースや位置取りが変則的になって乱れるリスクも高まるので、理詰めの1,2点目では当てにくくなるのだ。
よし!
午後2時20分。新潟で直線競馬、駿風Sが行われた。
そこで3番手評価だった7番人気のリオンディーズ産駒、マイヨアボアがハナ差3着に差し込んだ。リオンディーズは揉まれ弱いがS質が結構強い。したがって直線競馬への短縮はかなりの得意分野になる。
私の予想に詳しい人なら知っていると思うが、直線競馬はMの独壇場でもあり、数々の高配当を2,3点目以内で当ててきた条件で、このレースも3連複23倍を予想の1点目で的中させた。準勝負レースの中で期待値が高いレースは本命が6.5点になるのだが、今週唯一の6.5点レースがこの駿風Sだ。そこできっちり1点目で当てたのは何より大きい。馬券で重要なのは的中率が高いかとか以上に、「予想が当たるかどうかが事前に分かるか?」になる。つまりは、「狙ったレースを当てられるか」が何より重要なのだ。
6.5点レースは、ここ3週連続で1点目で3連複を当てていた。3週前には、3連単の243倍も1点目で当てたのだが、実はそのレースは『競馬王』のプレゼント予想だったので、見た人も多かったのでは?と思う。
前号から数ヶ月に一度だけ、『競馬王』で予想を提供する企画が始まって、私の担当が3週前だった。
その日(4月23日)は、いつものサイトの6.5レースの2レースのみの予想提供で、最初の予想は2Rの福島1200mで人気薄の本命がクビ差4着と予想を外していた。もう1レースが東京6Rで、3連単は2点買い予想にし、予想順に3着以内まで入選して1点目で243倍を当てたのだった。以前noteで、「万馬券を1点目で当てる方法」を書いたが、実際、馬場さえ読めれば1,2点目で当たる確率は高い。
今年も1300倍を1点目で当てたり、重賞でもダイヤモンドSで3連複万馬券を1点目で当てている。ただ、1,2点目で万馬券を当てるには条件があって、その条件が揃いやすいのが多頭数で行われる「ダート1700m以下の条件戦」と、「芝長距離の上級条件」、そして「直線競馬」になるのだ。その話を『競馬王』誌面で詳細したのがちょうど前号で、そしてこの東京6Rこそが、その「多頭数ダート1400mの下級条件」というまさに解説通りの条件で、解説通りの理論を使って綺麗に1点目で万馬券を当てたというわけである。
『競馬王』の編集もさすがにこれにはビックリして、「早速次号で特集するので詳細を解説してください」という話になって、これらの条件で万馬券が1,2点目で当てやすい構造については次号で対談することになったのでそちらも目を通して頂きたい(最後に簡単に「ダート短距離」についてはメモを残しておこうと思う)。
ということで、幸先良く6.5点レースを1点目で当てたあと、東京10RメトロポリタンSを迎えた。
レースに影響を与える「施行順」とは?
私は、⑬バラジ、⑭ゼッフィーロ、②グランオフィシエ、⑧スタッドリー、④カントルの順で予想していた。イメージとしては道悪で内が荒れて、やや外差しの競馬である。
結果は、②グランオフィシエ9番人気1着、④カントル10番人気2着、⑭ゼッフィーロ3番人気3着。
予想上位5頭中3頭が独占して、3連複443倍、3連単3978倍の大波乱だったが、本命バラジがスローの外々を回って6着に力尽きてハズレた。
ここで、「内伸び予想にヤマを張っとけば良かった~」と悔しがったかと言うと、そうでもなく淡々としていた。6点の準勝負レースなのでそこまで自信はなかったし、本命のバラジは1番人気だ。「人気薄のグランオフィシエかカントルが相手に来たら美味しいな」と思いながら、置きにいっての予想である。置きにいったら打たれるのは必然だろう。
むしろ怖いのは、その結果だ。完全な「前と内」の競馬で、3角6番手以降で6着以内に入ったのは、人気馬のバラジとゼッフィーロだけなのだ。
となると、本命対抗が外枠の差し馬だったNHKマイルCにとっては悲報でしかない。
しかし、ここでの私の感触は違った。むしろこの結果を見て手応えを感じていたのだ。
東京10レースは、かなりのスローだった。そのためゼッフィーロ以外は5着以内を「先行馬と内枠」が独占した。ただ、人気馬のゼッフィーロはスローの流れでも力で3着に差し込んできたのである。つまり、馬場そのものはフラットであることを、この結果は端的に示している。
フラットならそれで良い。NHKマイルCはメンバー的にスローにはならないはずで、馬場がフラットならシャンパンカラーのステップをもってすれば外から差し込める。
しかも直前のレースが、「内の前残りで大荒れ」というのは、実は有り難い。騎手は前のレースに引っぱられやすいので、この前残りを見たら尚更、先行馬の多いNHKマイルCがスローになることはあり得ない。
案外レースの施行順というのは重要で、施行順一つでペースは大きく変わる。
皆さんも、「前のレースと比べながら、騎手心理を考えて馬券を買う」と、より精度を上げられるということを覚えておくと、今後も大きな馬券をゲット出来るだろう。
痛い結末だったが、NHKマイルCにとっては何よりの布石となったわけだ。
そして迎えたNHKマイルC。
降り続く雨。差しも決まる馬場。直前のレースがスローで前残り。
その全てがシャンパンカラーに向いてきた。しかも一叩きでマイナス4キロ。馬体重も完璧だ。
あとは最後のピース、シャンパンカラーが「後ろに回る位置取りショック」を掛けるだけである。今回は最初に書いた通り、スロー経験しかないので、忙しい流れをあまり前に行くと道中違和感を感じるリスクが高い。そこで予想には、「矯めて乗れば」と書いたのだ。
中団後ろで私の指定通りに矯めて乗れば、勝てるだろう。
時空を超え、未来からやってきたLINEメッセージ
スタート!
いきなりシャンパンカラーが出遅れた。後ろに下がる位置取りショックが今回重要なので出遅れるのは悪くもないが、さすがに最後方から間に合う馬場かは分からないので少し焦る。
そのあと、内田が仕掛けて前に出していく。
「まずい、あまり強引に位置を取り返そうとすると、活性化の弱いステップだけに息切れするぞ!」
そう思った刹那、中団後ろで馬を落ちつかせてくれた。まさに今回のステップで最適な位置取り、レース前に思い描いていた通りの位置に納まったのだ。
もちろん直線を向いても手応えは十分。対抗のダノンタッチダウンを一気に飲み込む構えだ。よし、差し切れる!
珍しくこのレースはスマホで観戦していたのだが、思わず両手に力が入る。
その次の瞬間だった。
……??!
「お見事!🎉」
ゴールに向かう各馬を映し出すスマホの画面上に、LINEのメッセージが流れた。たぶん、S君からだろう。
えええっ?!
さっきの直線競馬の話を今頃LINEしてきたのだろうか…。待て待て、GⅠのレース中にそんなことを流石にするだろうか?
となると、まさか未来からのメッセージ?!
いやいやこれは冷静に考えると、恐らくスマホの中継には想像以上のタイムラグがあるということなのだろう。しかし、それにしても数秒のラグなはずで、やけに電光石火なLINEではないか。
となると、これは凄いやつが当たったのか?ただ対抗のダノンタッチダウンは苦手な道悪のハイペースを考えると如何にも早仕掛けに思えた。何かに捉まるはず。それでも3着に粘って3連複で超高配当が当たったのか?だとしたら2着は何が飛んで来たんだ?
画面にLINEのメッセージが流れた1,2秒の間に、そんな思いが脳裏を駆け巡った。
そして次の瞬間、武豊のオオバンブルマイが突っ込んでくる。
「なんだ安めじゃないか」
と、その次に今度は黒い帽子。これはお父さんの方じゃないぞ!
武史の人気薄ウンブライルだ。
惜しくも川田ダノンタッチダウンは差されて4着。3着なら◎▲○だから3連複400倍が1点目、3連単37万馬券も2点目の的中だったが、展開の綾と雨量でこれは仕方ないだろう。馬単300倍2点目、3連単26万的中で十分だ。
未来からのメッセージのお陰で興奮する瞬間がないまま終わったが、結果は満足するものとなった。
まるで30年前のようじゃないか…
~Mの騎手論~
終わって一息ついた後に、レースを見返す。
なるほど、横山典は最後方まで下げずに上がっていったのか。恐らく前のレースで内の先行馬が残ったのにつられて、下げ過ぎるのを危険と感じたのだろう。彼にしては凄みのない判断だ。どんな馬場だろうが、今回上位に来るには最後方まで一か八か下げるしかない馬だったのだが。
逆に武史は出遅れたこともあり、ほぼ最後方でじっとしていた。こうやって父を一つ一つ超えていくのだろう。思い切った騎乗、感慨深い二人の姿である。
そして武豊・・・だ。
あれだけストレスのあるステップで、得意の道悪とは言えオオバンブルマイを3着に持って来た。
予想時に感じた感触は正しかったのだ。
まるで30年前の武豊じゃないか。
飛ぶ鳥を落とす勢いだった若き日の武豊だ。何が凄いといって、ストレス馬を負荷を掛けずに持ってくる技術だった。まさにM殺しの外差しである。
馬の心身に負荷を掛けずに差し馬の脚を温存する。この技術にかけて、右に出るものはいなかった。
その姿は近年すっかり影を潜めていたのだが、ここ1年の騎乗が、あの頃を思い出させる。いや、当時より心身に負荷を掛けない面では上回っているかもしれない。
それが怖くてオオバンブルマイを再びピックアップしたのも多少はあった。そして実際、今度は前走7番手から15番手に下げる位置取りショックで、馬の負荷を減らした。フレッシュな前走は15番手から7番手の位置取りショックで勝利し、ストレスのある今回は7番手から15番手の逆位置取りショックで3着に持ってくる。Mのお手本のような、馬の心身疲労に応じた位置取りショックの連続技だ。
川田、ルメール、内博・・・!
同じように外差しで心身負荷を減らす技術ではルメールがやはりずば抜けて上手い。ただここ2,3年で、急激にS質なレースへの対応は落ちている。タイトでS質な競馬で馬群に入ると、上手くファイト出来ないのだ。この辺は同じL質な騎手、武豊が辿った曲線と同じと言えるのかもしれない。
川田はと言うと、内伸び馬場で的確にインに入れる競馬、外差し競馬で負担を掛けない騎乗は、共に抜群の安定感だ。弱点はゲリラ騎乗が出来ない点か。捲る方が良いステップや、思い切った位置取りショックを必要とするステップでは、信頼感が落ちる。
では、今回バビット以来、久々の重賞勝利になったウチパクはどうか?
実は前回の重賞勝利、20年セントライト記念のバビットも本命に予想し、その前のラジオNIKKEI賞も本命にしていた。そして、4番人気、6番人気と人気薄で連勝したのである。
この2レースと今回には共通点があった。それは「重いタフな馬場で、スムーズに競馬する形」である。年齢からか馬群でファイトするには対応が遅くなりがちだが、重い馬場でスムーズに馬を御す技術はかなり高い。それもあって、稍重の逃げだったラジオNIKKEI賞、稍重の外差しだったNHKマイルCと、馬群に入らない形での道悪で人間薄の彼を本命にした側面もあったのだ。
タイプやステップによって、M的に合う騎手、合わない騎手が存在するのも、また事実である。
不確定要素を排除せよ!~ダート短距離の多頭数は何故万馬券が1,2点目で当てやすいのか?~
おまけで、ダート短距離の多頭数で1300倍1点目的中など、最近万馬券1,2点目の的中が連発している構造について簡単にまとめておこう。
その最大のポイントは、「不確定要素を排除出来る」、つまり「運に頼らないで理詰めで予想出来る」という点になる(ただし、多頭数で先行馬が多いレースに限る)。
何故かというと、多頭数で先行馬が揃ったレースは、「一定のペースで流れやすい(スローになりにくい)」からペース読みという不確定要素を排除しやすいからだ。そして多頭数の速い流れでは、「騎手の取れる選択が少なくなる」のもポイントになる。ペースが遅いと先行馬でも騎手の意思さえあれば前に行けるし、途中で捲ることも容易なため、「騎手の当日の気分」という偶然性が結果に及ぼす確率がどうしても高くなる。その可能性を最小化出来るのがダート短距離なわけだ。それなら芝の短距離でも良さそうなものだが、近年の芝はバイアスによって先行馬が多くいる多頭数でもスローが発生しやすくなっている。したがって、不確定要素の比重がどうしても高まるわけだ。また芝は当日の天気にバイアスが大きく影響を受けるが、ダートの場合は余程急な雨が降らない限りバイアスに大きな変化は起きにくい。これも不確定要素を最小化出来る重要なポイントになる。特に急な雨、ゲリラ豪雨が増えた近年では尚更だ。
そしてもちろん、「多頭数のハイペースでタフな馬場ならストレスのきつい馬は危ない」という、Mの基本法則もそのまま迷うことなく適応できる点も大きい。
近年、芝の不確定要素が高まってきた中でよりセーフティーに万馬券を当てる方法を考えていくうちに編み出したのが、この「ダート多頭数短距離作戦」というわけだ(さらに細かい1400mが理詰めに良いなどの条件、方法はあまり書くとネタばれと怒られるので『競馬王』を読んで頂きたい)。
直線競馬も登場の当初は対応に苦慮したが、ここ数年はかなり得意な条件にまで進化してきたわけで、常に理論は現状の競馬にあわせてバージョンアップしていかないといけない。
今回のNHKマイルCで300倍を2点目で当てたのも、何を隠そう先行馬が揃っていてペースがある程度流れるのが自明だったのと、天気予報が当たってバイアスが読めたので、理詰めで予想を追い詰まられたからに他ならない。偶然性の高い条件で万馬券を1,2点目で当てるのは、相当の運が必要になってしまう。つまり、芝でも上記の条件さえ揃えば理詰めで今回のように万馬券が1,2点目で当てられることに変わりはないわけだ(バイアスが想定と合っているかどうか、慎重に見極める必要はあるが)。
今後は芝でも不確定要素が薄れるケースを丹念に絞り込んでいく作業が重要になってくるだろう。そして不確定要素そのものを未来から飲み込んでしまう方法論にも、さらに踏み込んでいく必要がある。
それでは、また次なるMの進化とバージョンアップをお楽しみに!(そうそう、新しい本を出す時季も近づいている気がするので、秋には動向に注意して頂きたい)
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