「ヒトノカタチ」STORY-14:Playing

---ある日の日曜日、レイアとミイ、すずねが車で移動している。
「まったく、お前までミイに影響受けるなんて、考えもしなかったよ」
「まあ…ね、同じ部屋でミイが楽しそうにやってれば自ずと興味は湧いてきたから…」
「でもすずねちゃんは古代のゲームよりは新しいゲームの方が好みだよねー」
「それはそれで別に課金だからな。あんましサブスク範囲外のタイトルは控えろよ」
「はーい」
「すずねちゃん、今度行くゲーセンに知り合いがいるって?」
「うん、助手してる音楽の先生なんだけどその傍らでプロゲーマーやってるって」
「ほう〜珍しいな」
「まあまだゲーマーだけでやっていくのは厳しいから先生やってるって言ってるけど、でも兼業することでお互いに技能を補完できるからこれでいいかな、って言ってもいたからね。生徒との話の種にもなるし、良かったって言ってる」
「ミイから聞いたけど専門は音ゲーだって?」
「そうそう、まさにうってつけだし、他にも格ゲーも得意よ。時々生徒と対戦してボコボコにしてるし」
「それは…ちょっと大人げないかな…」
「お姉ちゃんにも会ってみたいって言ってたよ」
「まあ悪い人じゃないって兄やミイから聞いてるけどな」
「ノリは軽いからすぐに打ち解けると思うわよ」
「そうかい、良かったよ」

---車内で話している間に目的地であるゲームセンター「Carott」に着いた。3人がドアを開けると独特の環境音が鳴り響く。
「あ!先生!」
すずねが駆け寄っていく。
「こんにちわ、先生」
「あら、こんなところで会えるなんて」
金髪の女性が挨拶もそこそこにレイア、ミイの方に近づいていく。
「こんにちわ、はじめましてレイアです」
「ミイでーす」
「こちらこそはじめまして、アルクェイドです。よろしくー。ところであなたはすずねちゃんのマスターの妹でしたよね」
「ええ、そうです」
「兄にもよろしくって伝えといて。よくやってくれてるから」
「そのへんはフェリスさんからも聞いてますよ」
「あら、良かったわ。ここでミイちゃんともよくお会いしてるし。古代ゲー界隈ではちょっとしたアイドルだしね」
「まあね、イベントなんかでも受けいいし」
「あと動画もちょくちょく見てるわよ。私はそっちの方はあまり詳しくないけど」
「そんなイメージじゃないよね」
そんな話をしていると男性が4人に近づいてくる。
「おやおや、皆さん賑やかに話してますね」
男性がレイアと目が合う。

「その人って、アルクェイドさんの旦那さん?」
「そうよ、紹介するわね。うちの旦那…まあドロイドだけど、弥一くんです」
「レイアです。よろしく」
「ミイでーす。よろしくね」
「すずねです。よろしく」
「どうも弥一です、よろしく。ところでレイアさんはすずねちゃんのマスターの妹…でしたよね」
「そうよ」
「その辺は妻から聞いていますよ。子供が2人いらっしゃるなんて賑やかでいいですね。うちは…妻があまり子供には興味なくって、2人でいる方がいいって言うもんですから…」
「まあ、2人ともゲームにはまっちゃって、見てると楽しいけどちょっと大変かな…」
「でも楽しそうですね」
「仕事はしてるのかい?」
「いえ、自分は一括でお迎えされたので就労経験はないんですよ」
「私が初めて優勝した時の賞金でお迎えしたからね〜」
「まあそんなんで、私は専業主婦…もとい主夫ですね」
「そうかい、でも色々経験したいって気持ちはあるのかい?」
「妻といろいろな大会に出てるのでそれで十分ですよ」
「そうそう、これでもドロイド部門で結構上位には進んでるのよ」
「そうか…」
そんな立ち話をしてるとミイとすずねが話しかけてくる。
「ねえねえ、ちょっと対戦したいんだけど」
「おう、じゃこれだけ持っていけ」
そう言ってレイアが電子マネーの残高を少しばかり移す。2人は早速対戦台に向かっていく。
「ちょっと、対戦の様子でも見ていこうか?」
「そうね、ちょっと見てみたいわね」
「そうですね、コドモロイド同士っていうのも珍しいですし」

ミイ、すずねが対戦台でプレイしている。やはりコドモロイド同士というのが珍しいせいか他の野次馬も台を囲んでいる。
「やった!ギリギリだったけどミイちゃんに勝てた」
「あー、やっぱり新し目のゲームはすずねちゃんに勝てないわ」
ミイは悔しそうな顔をしつつも素直に負けを認めたようだ。
「楽しそうですね。ちょっと自分も参加していいですか?」
弥一が2人に声を掛ける。
「いいよー」
そうして弥一とミイ、すずねとの対戦が始まる。
「うわー、流石に上位に行くだけはあるわ、全然刃が立たない」
「とにかく隙がないわね…参ったわ」
2人とも格の差に悔しがる隙もないようだ。
「ふふ、こういうのを見てるのも楽しいな」
「うちはだいたい毎日相手してるわよ。おかげでいい練習になるし」
レイア、アルクェイドがそれぞれのプレイを見ながら話をしている。そしてアルクェイドが
「じゃ、今度は私の番ね」
そう言って音ゲーコーナーに向かう。一緒に4人も向かっていく。

4人の他に野次馬多数に囲まれながらアルクェイドがプレイを披露していっている。
「おおー、やっぱり凄いな」
「この曲結構難曲です。これを人間がパーフェクトでクリアするなんてなかなかないですよ」
「噂には聞いてたけど、さすが音ゲーメインだけはあるよな」
弥一がレイアに解説しながらもプレイが進んでいく。そしてプレイが終わり。周りからは拍手が巻き起こっている。
「…ふう、こんな感じよね」
「やっぱり先生すごい!」
すずねが駆け寄っていく。
「まあドロイドじゃこのぐらいはできるわよね。やってみる?」
「やってみたいー」
そう言ってすずねもプレイし始める。
「ドロイドとはいえコドモロイドだと余計すごく見えるよな」
「中身は大人と変わらないけど体型のハンデはあるけどね」
またプレイが終わり拍手が起きる。今度はすずねがアルクェイドの元に駆け寄っていく
「楽しかったー、先生ほどじゃないけどいい感じに見えたかな?」
「良かったわよ。そのうちドロイド部門にも行けそうね」
「いつかは行ってみたいな〜」
そう言ってるとレイアが
「おいおい、なんか先生がマスターに見えてきちゃったよ」
「でもそんな感じよね〜なんだかんだいっても私達の大切なパートナーでもあるから」
「まあそこは兄と相談してくれ」
「それはそうと、ちょっとお茶でもしない?」
「そうだな、ルリさんのところでも行くかい?」
「さんせーい!」
ミイが大きく声を上げる。
「いつも楽しみにしてるからな、じゃ行くか」
「わーい!」

---カフェ「クロスウィンド」にて
最初に応対したのはモエだった。
「いらっしゃいませ〜って先生?こんなところに来るなんて珍しい」
「あら、今日はシフトに入ってるのね」
「え、ええ…」
「おや?教え子かい?」
「ええ、モエちゃんは音楽クラスだからね、成績はまあまあよ」
「でもちょっと恥ずかしいかも…こんなところ見られるなんて」
「そんなことないわよ。メイド服似合ってるし」
「う、嬉しいような…」
「今日はレイアさん達と一緒よ」
「あ、ミイちゃんいらっしゃい」
「はーい。今日はすずねちゃんと一緒だよっ」
「こんなところで会うのは初めてですね。よろしく」
「すずねちゃん、こちらでもよろしくね」
「まあモエちゃんはたまにリズム感がずれることがあるけど…」
「えー、それ言わないで〜恥ずかしい」
「わりあい声はきれいだし。音感は問題ないから悪くないわよね」
「…それはちょっと嬉しいかも」
別のテーブルで対応していたアスナが寄ってくる。
「すずねちゃん、そちらの方が職場でのパートナー?」
「どうもアルクェイドです、よろしく。話には聞いてるけどあなたもすずねちゃんと同じマスター?」
「そう、兄がマスターよ」
「ここのカフェでのおしゃべりサービスで人気子だって聞いてるわよ」
「ええ、やっぱり私みたいなのは人気あるみたいで…おかげで忙しいわ。すずねちゃんからも聞いてるけどアルクェイドさんも一緒にいて楽しいって聞いてるけど」
「あら、そんなこと言ってるんだ。嬉しい」
そうするとすずねが
「うん!フェリスさんもアルクェイドさんも一緒にいて楽しいよ」
アスナも
「すっかり懐いちゃった感じよね。元々AZ社系って人懐っこい仕様が多いから…」
そしてアルクェイドが恥ずかしそうに
「えへへ…すずねちゃんもプラグインの枠を超えてまだまだ伸びる資質はあるから、頑張ってちょうだい」
「はーい、頑張る」
「それはそうと、そろそろオーダー取らないとルリさんに怒られちゃう、何油売ってるんだって」
「そうね、じゃ各人オーダーしましょう」
「はーい」

オーダーされた物が各人の元に届き、みんなで食事しながら話が進む。
「うん、新作のケーキが美味しい」
ミイが嬉しそうにケーキをほお張る様子を見てレイアが
「ここのケーキはマシュさんとこからだからね、なんかコンテストに向けていろいろ新作出してるけど…デパートの催事出店目指してるから頑張らないととは言ってたけど、どんな感じかい?」
「今回のは意外性あっていいと思うよー」
そんな2人の様子を見てアルクェイドが
「へえ、ミイちゃんって結構こういうのにうるさい?」
「元々お菓子作りのデータたくさん持ってるから、ちょっと対抗意識持ってるみたい」
「そう、うちは旦那が案外料理熱心でいろいろ作ってくれるわよ。まあそうした設定にしたのは自分だけどね」
「それならうちの正も負けてはいないわよ」
「まあネット上のデータベースたどればみんなできることだから、対抗意識っていうのはないわよね」
「まあね」
話をしている最中にもゲームに興じてるミイを2人が見ながら
「確かミイちゃんって元々容量に余裕がない形でお迎えされたってすずねちゃんから聞いてるけど、そんな状況でもゲーム楽しんでるわよね」
「実はお迎えの際に増設とデータの整理はやったんだけど、空きはほとんどゲームのデータに費やされちゃった感じなんだよね」
「そうなんだ。でも楽しそうだしそれはそれで良かったんじゃない」
「元々実用用途にはしないつもりだったからそれで良かったよ」
「そうよね〜自分は旦那と2人だけのほうがいいからお迎えすることはないと思うけど」
「逆にそういう人は衣装やプラグインに力を入れることが多いけどな」
「そうね、うちはゲーム関連と料理のプラグインマシマシにして夫婦で楽しんでるわね」
「それはそれで楽しそうだけどな」
「ま、お互いに尊重し合うのが1番だろうけどね」
「そうだよな。うちもそんな感じだよ」
それぞれに話は進む。

そして店を出て別れの挨拶もそこそこに
「じゃ、また学校でー」
「じゃあね〜またゲーセンでも会いましょう。マスターにもよろしくね〜」
すずねとアルクェイドがそれぞれ声を掛ける。
「さ、帰ろうか」
レイアが2人に声をかける
「あんな先生と仕事してるなんて楽しそうね」
「そうね、人懐っこいフェリスさんも陽気なアルクェイドさんもどちらも楽しいよ」
すずねとミイがレイアの後をついていきながら話をしている。
「ま、たまにはいいかもだな。今度は一家総出で出てみようか」
「えー!それも楽しそう」
「まあそのうちな。都合がつけば行ってみようか」
「でも楽しそうだな〜」
「はは、あまり期待はしないでな」
「ぜひとも期待したい!」
3人がそんなことを話しながら車に向かっていった。


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