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フェムテックと健康経営

Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせてたFemTech(フェムテック)という言葉が知られるようになりました。生理や更年期等女性特有の体の症状を技術を使って改善する仕組みのことを示す言葉であり、近年は、百貨店にフェムテック商品コーナーが設置されたり、ファムテックベンチャー企業が注目される動きがあります。


働く人にとってのメリットとしては、今まで口に出しにくかったPMS(月経前症候群)や更年期障害、婦人科疾患などの症状について職場で相談がしやすくなることでしょう。これらの症状は人によって程度が異なり、また、男性が多い職場であると口に出しにくい状況でもあるため、「我慢して働き続ける」方も少なくありませんでした。

それが、結果的には「パフォーマンスが下がる」「モチベーションが下がる」と周囲からの誤解につながるリスクや、我慢しすぎて病気につながるリスクもあったと言えるでしょう。今後は、自分がどのような症状であり、仕事上でどのような影響があるかを伝えて、働き方をこのように改善したいなどと具体的に相談しやすくなることが期待されます。

企業にとってのメリットとしては、働く女性の健康状態の変化を理解することで、働く環境の整備や働き方の改善につなげることができ、離職率の低下につなげることができる点です。

日本医療政策機構が2016年に実施した調査によると、PMSを含む婦人科系疾患を抱えながら働く女性の年間の医療費支出と生産性損失は6兆3,700億円の経済損失が言われています。女性の就業継続は、企業の事業継続に直結する課題となっています。現在は、従業員の健康管理を企業戦略の一つとする健康経営の重要性も言われており、その一つとして女性の健康課題に取り組むことは、病気と仕事の両立を希望する方等、多様な事情がある方でも就業継続ができる企業として信頼度が向上し、取引や採用に影響を与えることができるのです。


一方で、注意点として、個人情報の取扱いと、他の疾患との関係があります。

女性が自身の健康状態を周囲に相談することは、あくまでの自分の意思に基づくものであって、許可なく公表されるものではないはずです。「今このような健康状態である」と知られることで、不利な扱いを受けるリスクは回避されるべきでしょう。

実際に、職場で女性に対して「あの人はPMSだからね」「あの人は更年期なんだろう」と、感情の起伏があることを揶揄する場面を見聞きすることがあります。また、病気のすべてが女性特有の症状に起因するものではないが、例えばめまいや立ち眩みがある場合に「年齢的に更年期障害でしょう」と言われ続けることで、脳疾患の可能性を見落とす可能性もあるのです。


最終的には、健康問題は「個人」のもので、職場としては個人に寄り添って取り扱うべきものであることを忘れずにいたいものです。

研修の一部に健康に関わる内容を含める、個別キャリア相談のテーマとして健康と仕事を含めて周知するなど、相談がしやすい環境を整備していくことが、企業にも求められています。