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手を差し伸べたくなる『年少日記』

 東京国際映画祭は10/23〜11/1に日比谷、銀座、有楽町近辺の映画館で開催される、山形国際映画祭を除いた日本唯一の国際映画祭だ。

 日比谷、銀座、有楽町ほぼ徒歩で結ばれるこれらの駅にはたくさんの映画館があり、まさに映画の街。お洒落なカフェなんかも多く、鑑賞後に一息つく場所が選び放題。なかなかに良いロケーションだ。

 どうやら公開とともに大ヒットスタートであるらしい、『ゴジラ -1.0』はこの東京国際映画祭のクロージング作品なのである。

 世界中から出品作品があり、ここでしかこの期間にしか見られない作品がたくさん上映される。
私は今年がラストチャンスだったのだが、学生当日券は500円で見ることができる。人気作品は当然当日には売り切れなんですけど。

 そんな映画祭期間、私は忙しなく働いていたわけだけれど一つだけ映画を鑑賞できた。

ぜひおすすめしたい作品だったので書いていく。


年少日記(香港映画/95分)

〈あらすじ〉
中学校教師のチェンが務める学校で匿名の自殺をほのめかす遺書が見つかる。 書いた生徒が誰かを捜索するうち、チェンの脳裏に自らの抑圧された少年時代の記憶が蘇る。 悲劇を防ごうと奔走するチェンだったが、妻との離婚、父親の死など、家族をめぐる困難に向き合うことになる。

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 95分って比較的短い映画だと思うのだけど、故に無駄がなくうまくまとまっていた。

 少年の日記とともに進む物語に魅了されながらミスリードされ、故に真実が明かされたときにあっけにとられ、思わず涙も流した。

 チェンの今と幼少期時代を行き来しながら物語が進むわけだが、年少時代は日記によって想起される記憶が描かれる。日記というのは当然一人称で、筆者の魂が込められていると言ってよい。少年の優しさや苦しみが悲しいほど押し寄せてくる。

 冒頭のシーンにほっとさせられたことを思い出し、映画の中の現実が受け入れがたく感じられた。

ところで私はこの映画の副題が好きだ。

"Time Still Turn The Pages"。

新たな日々が書き足されることのない日記であるが、それでも時間によって風化されることなくめくられ続ける。

 映画はうまくまとまっていて、エンディングもほのかに希望を感じさせるような、でも希望があろうかなかろうか明日へと続くであろう主人公の物語に想いを馳させるようなものであった。

涙をぬぐいながら映画館を出た。
久しぶりに良い映画に出会えたと心から思った。


 好きな映画は?と聞かれると、回答にいつも困る。その手の質問に答えるのが得意ではない。

しかし、今言えるのは私は心温まる物語が好きだ。同時に理不尽に怒りや悲しみ、悔しさを湧き起こしてくる犠牲愛とか各々の正義を描いた作品も好きだ。

前者は『ニューヨーク 眺めのいい部屋』、
後者は『ラ・ラ・ランド』とか。

その他にも心温まるに当てはまるのは『サウンド・オブ・ミュージック』。感情を揺らがせるのは『メアリーの総て』とか。

そうはいっても、『サウンド・オブ・ミュージック』以外は一度ずつくらいしか見てないから、好きな作品なら繰り返し見たいよね。


今回の物語も私の好きな映画として取り上げたい、名前を挙げたいと思える作品だった。

しかし、どうやらこの作品は日本での公開が決まっていないらしく、もう二度と見ることができないかもしれない。

冒頭でおすすめと書いたのだが、配信か日本での上映が決まったらぜひご視聴くたさい。
映画祭という場でこの作品に出会えてよかった。

最近いろいろ映画を見ているからちゃんと考えたこと、感じこと一つ一つの感想を言葉にしていきたい。

鑑賞後に作品について語らい合うのと見たことがない人へおすすめするのとでは話し方や映画の切り取り方が当然変わってくるのだが、どっちも難しいよねと思う今日この頃。


まだ2023は終わっていないのに今年のベスト映画として取り上げた本作。あと1ヶ月でこれを上回る作品に出会えるかな。

最後まで目を通していただきありがとうございました!

みなさんもぜひ今年見たおすすめ映画教えてください!!

ちなみに映画祭で見逃した映画。
こちらは劇場公開が決まっているみたい。
楽しみだな。

『20000種のハチ』

第73回ベルリン映画祭にて、主役を演じたソフィア・オテロは8歳にして史上最年少で主演俳優賞受賞。自分の性別に悩みを持つ少年とそれを見守る家族の優しさを描く。

20000種のハチ あらすじ

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