七色飯


私たち母娘の関係がここまで悪化したのは、母が絶対に取ってはならない質を取ったせいだった。



たった一言で25年間かけて築いてきた彼女と私の関係はあっけなく崩壊した。



ことの発端は、本当に些細なこと。



いつだってそう、彼女と私の口喧嘩の原因は寝て起きれば忘れるようなくだらないこと。今回のきっかけは覚えているけど、わざわざ人様にご説明するようなことでもない。

何がしの用で母がかけてきた電話中、軽くぶつかった拍子に火種が思わぬ方向に飛んで広まった大火事。



母は私のためなら時間も苦労も惜しまない代わりに、自分が用意した選択肢以外の何かを選ぶことは許さない人だ。娘の行動が自分の想定外であると、ひどく動揺し取り乱す。



ここで積年の確執を詳細に披露する予定はなかったけど、このnoteを執筆する目的に絡むことなので残すことにした。




ひとつ前の記事で、私が母に勧められるがまま経験してきた習い事を『七色飯』と表現したのは、母が常に「この中に娘の気に入るものがある」ことを期待していたからだ。



私がそこにないものを見つけ出してきて気に入ってしまうと、彼女は自分が用意した飯をひっくり返して激怒した。

健康を気遣いあなたのために用意した物を脇に押しやるなら、これまで食べた分を返せ

というのが彼女の理屈だ。

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