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極地の星

「極地の星 -Polar brilliance-」
11/5~7 広島で開催する個展のメインテーマのタイトルです。

この絵をどういうことを思いながら制作したかをお話しします。

(この記事の最後に個展の開催情報を記載しています。ご都合があえば是非、遊びにいらしてください...!)

タイトル「極地の星」-個展made-blue展5メインビジュアル

「北極から見た月はどんなだろうか」

自分の思う、最も遠い地、最果てのひとつが北極です。

私はひとり旅が好きで、というか定期的に旅に出ないと苦しくなる人間なのですが、コロナのせいでもう長い間旅に出れていない。
そんな日々の中でふと「北極から見た月はどんなだろうか」という思いがぽろりと溢れたのです。
コロナで旅ができないので、せめて己の中の”最果て”に想いを馳せる。そうして北極についての色々な資料を眺めているうちに、月とホッキョクギツネとホッキョクグマをモチーフにした絵を描こうと決めました。

どんな場で生きる者も星輝くように生きている

記憶のなか。子供の頃、ホッキョクギツネやホッキョクグマのような生き物は理想の生き方をしているように思っていたこと。
白い世界で死ぬまでひとりきりで生きる。なんとも魅力的に見えました。
人間の社会で生きることの辛さからの逃避でそんな風に思っていて、いまではそんな過酷な生き方はきっと出来ないだろうとは思うのですが、それでも当時の憧れの欠片のようなものは胸に残っていて、それを思いがけず自分の手で顕すことになるとは。創作の妙ですね。

当時立っていた場もきっと輝いていたし、いま立っている場も自分には見えなくてもそれなりに輝いているはずで。
野生でなくても、ひとりになれなくても、納得いかなくても、それは変わらないのではないかと、この作品に触れているときは思えます。

いま立っている場所は、それがどこで誰の場であろうと極地に違いない

自分にとっての極地を想うことで、距離と場を意識する。誰かにとっての極地に想いを馳せる。
それは物理的な距離だったり、ひととひとの心の隔たりだったり、訪れたい場所だったり、決して届かない高みだったり様々で、視座や過ごした時間の経過で変わっていくものでしょう。

そんなことも思いながら描いた絵でした。

ひとは「既に経験し、通り過ぎたものを恐れない」

実は当初この絵を個展のメインテーマにするつもりはありませんでした。

前回の東京個展で展示予定だった作品のひとつで、単にそのとき制作が間に合わなったので、今回描き上げて持っていけたらいいなとぼんやり思っていた作品のひとつでした(そんな風にそれとなく制作を同時進行している絵はたくさんあります)

今回の個展のメインテーマに最初に使おうと思っていた別の作品がどうしてもしっくりこなくて進まず、期限はどんどん迫り全然決まらないことに焦りが募るばかりでした。
そこである程度、制作が進んでいたこの絵に白羽の矢が立ったのです。

この絵の当初の最終的なイメージはもっとシンプルな絵で、ほぼモノクロのあっさりした絵になる予定でした。
しかし、制作開始から再度着手するまで時間をあけすぎて水彩紙が風邪をひいて(湿気等の影響で水彩紙の品質が落ちてしまった状態のことをこう言います)しまっていたりで、この絵を描くのをやめそうになったのだけど画材を工夫することで描ききった。つまり完成まで力技で押しきりました。

この絵の制作は、想定外のことが重なって困難になった現実へ「いま出来ること」をやるしかないと腹を括り、実現可能なラインへの”勇気ある諦め”の実践でもありました。
性分として諦めや妥協は得意ではなくて、妙に神経質で完璧主義なところのある己からすこし離れて大きくなれたのではないかと思います。
断じて意志なき妥協や怠けではなく、それがなんであれ、どういう手段を取ったとしても最終的に良い作品になっていればいいと開き直れること。私にはとても必要なことでした。

こういうスタンスで制作をしたことがなく、完成するまで不安でしたが、完成した翌朝、朝日のなか、改めて完成した絵を見たとき、しっかり情熱の籠った作品になっていて安心したことを多分ずっと覚えているだろうな。

ひとは良くも悪くも、「既に経験し、通り過ぎたものを恐れない」と常々思っていまして。
今後も、良くも悪くも、と様々なものを包括したまま制作していければと思います。


いろいろ長く書きましたが、こんな風にいろいろなことが繋がって出来た作品です。
作者の思考の足跡を追って作品をご鑑賞いただくことも楽しいかなと思い、詳細に書いてみました。

メイキング動画をYoutubeにアップしています。
作業音など未加工で編集しています。
実際に描いているときの雰囲気をご覧いただければと思います!

完成した際の動画はTwitterにアップしています。

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🚩広島個展 madeblue展5

2021.11.5(金)~11.7(日) 12:00~17:00
木村兄弟雑貨店
(広島県広島市中区東千田町2-13-18)

個展の開催の詳細は↓にまとめています。

会期中は全日程在廊します。
是非遊びにいらしてください!

2021広島個展宣伝

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読売新聞・広島版 10/29(金)の朝刊に個展について掲載していただきました!


今回の制作は『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』(星海社新書)にとても助けられました。
本当にタイムリーにこの本に出会えてよかったです。すべてのクリエイターに読んでほしい。


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