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「憲法成立当時を思い出してわくわくしました」

俺が代 さよなら平成ツアー」の名古屋公演が終わった。

はじめての公共劇場での上演、小ホールとはいえ舞台はこれまででいちばんの広さ、また、聴覚障害者対応などのこれまでにはない試み、さらに、レパートリー作品ではあるものの、舞台装置や俳優の演技も以前とは変わりどうなるかと思ったものの、(俳優とはいつものごとく大喧嘩だったけれども)無事に終わった。

日本国憲法を扱ったこの作品を公共劇場で上演するということは、小さくない意味を持っている。いくら特定の政治的メッセージではないと言っても、公共劇場の多くはこのような作品を上演したがらない。議論が起こるというのは非常に面倒なことであり、穏当な作品の方がきっと制作側も楽だろう。しかし、少なくともこの劇場は、そのリスクを取り、かつ丁寧で繊細に枠組みをつくって上演してくれた。

笠井叡氏(写真右)とのアフタートークは、僕の中でも思わず舞い上がってしまうような気持ちだった(だって、あの笠井叡から「とても刺激を受けた」って言ってもらったんだよ)が、その質疑応答で、観客席から、憲法制定当時小学生だったという女性から「憲法成立当時を思い出してわくわくした」という話が語られた。その言葉によって、この作品を上演したことが報われるとともに、劇場が「公共空間」としての役割を果たしていることに、僕はひどく感動した。彼女は、おそらく僕らが普段上演するような小劇場には足を運ばないだろうし、Twitterでは情報が届かないかもしれない。しかし、そんな彼女が足を運び、臆することなく憲法制定当時の「わくわく」を語り、その「わくわく」が、観客席も舞台も関係なく劇場という場所で共有された。憲法を「変える」か「変えない」かよりも、また、極論だけど、作品が「面白かった」か「つまらなかった」かよりも、そんな場所が生み出されることの方が、僕ははるかに重要だと思うし、『俺が代』と『日本国憲法を踊る』という2つの作品を公共劇場で上演する意味だったと思う。だから、この名古屋公演がもしも「成功」だったと言えるなら、それは間違いなく愛知県芸術劇場の功績だ。

また、これによって、公共劇場で、少なくとも憲法を扱う程度の「政治的」な作品を上演する前例がつくれた。ぜひ全国の劇場でもこういった枠組みで作品の上演が行われることを切に願うばかりである。

東京公演は27日〜30日@早稲田小劇場どらま館、沖縄公演は5月5〜6日@銘苅ベースです。安田登氏、細馬宏通氏、そしてせやろがいおじさんなど、僕が本当に話したい方々とのアフタートークが行われます。また、関連企画としても、沖縄ではジュンク堂で「憲法を読む」イベントの他、銘苅ベースで清水穂奈美による初のワークショップ、また、東京、沖縄公演とも高校生無料の公開ゲネなどなど、様々な取り組みが行われます。

お時間ありましたらぜひお越しください。



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