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日本におけるMMTへの誤解

日本のインターネット上でMMTへの批判として一番よくあるのが、

"MMTのいうように無制限にお金を発行するとハイパーインフレになる。"

それに対して、大多数のMMT推進派からは

"MMTは無制限にお金を刷っていいなどとそんなことは言ってない、インフレになったら財政支出を減らすか、租税でインフレを抑制すればいい。"

という反論をよく見かける。(というかこれがテンプレな気がする)




実はこれ両方間違いです。



そもそも、MMTはケインズ政策的な需要刺激政策に反対なんですよ。

"ケインズ学派的な『呼び水』的な需要刺激政策では一時的には完全雇用を達成できるかもしれないが、それを持続させることはできない。なぜならば、それは経済を不安定にし、インフレ圧力と持続不可能なバブルを生んでしまうからである。

と一昨年、日本でも翻訳版が出版されたランダル・レイ著のMMT入門(8章の1節)に書いてます。

つまり、多分ですけど、日本のほとんどのMMT推進派の人達(学者や専門家以外)って、レイが書いたMMTの入門書を読んでないのかなって。

でもまあ、ワイドショーとかでコメンテータもやってる某県知事がtwitterでMMTについて

まともなMMT=ただのケインズ経済学

トンデモなMMT=理論じゃなくてファンタジー

ってツイートしてたので、リテラシーなんてそんなもんですよね。(自分自身のリテラシーがある自信無し)


ただ、MMTの説明的、記述的な部分は日本でよく言われているのと同じです。
“自ら通貨を発行できる政府は自らの債務によって破綻しない"“通貨発行権のある政府は自国通貨建て国債で財政破綻はしない。”

ってやつです。

MMTでは
“通貨の発行者である政府は金銭的制約によって(自らが制約を課す場合を除いて)予算を執行できない事態に陥ることはない。"と説明されています。

ここまでは同じなんです。

でも、政策面になると全くの別物に化けちゃったりする。

冒頭でも書いたけど、MMTっていうのは不況になったら、政府が財政支出を増やして、民間セクターの需要を増やして、景気を刺激する。

そして、好景気になり過ぎたら、財政支出を減らして、なんなら増税してインフレ圧力を抑制するんだ。と考えてる人が多いと思うんですけど。

違います。

MMTの政策的主張は政府が最後の雇い手となることにより完全雇用を実現し、物価の安定をはかる。

です。

つまり、MMTで最もダメなことはデフレでも、インフレでもなく、『失業』なんです。

日本のMMTの議論の中にインフレになったときにどうするかって、具体的な話ってあんまりでてこないじゃないですか。つまり、MMTにおいて、何を自動安定化装置にするかってわかってないと思うんですよ。(分かってないより、分かってた方がいいよね)

それは、政府が財政支出をして、失業者を直接雇用する。

"雇用保障プログラム"

これがMMTの考える自動安定化装置なんです。


ってわけで今回はここまで。

※ランダル・レイがいるレヴィ研究所が直近2月に日本の財政政策についての見解を書いたワーキングペーパーを発表しました。それの翻訳終わったので、それについても近々書こうかなと考えてます。

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