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矢沢あい展は私の「なりたい」がつまってた

おしゃれなファッション、明るくて憎めないキャラクター、ドキドキの恋愛模様……漫画家矢沢あいの作品には、少女だった私の憧れがつまっていました。そんな「矢沢あい展」が宮城県で開催されているのです。あの日憧れた作品に再会すべく行ってきました。

※写真撮影OK。ただしスマートフォン・タブレット・携帯電話に限る。

最初の展示は、「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」(佐藤誠二朗・著/集英社)に掲載した挿画。

服のシワの入り方や布や革の質感が手に取って分かるような綿密な表現、服を着こなすために生まれてきた魅力的なキャラクターにひたすら圧巻されるのでした。

そして「Paradise Kiss」のモノローグから、矢沢あい作品の世界が開いていきます。矢沢あい展は、原画はもちろん、作品の世界感を詰め込んだ装飾も素敵なんです。

展示画の中には、下絵から完成までの行程があるものも。2003年時点ではアナログで下絵、線画を描いてスキャン、Photoshopで着色工程を行っています。

Zipper 2003年5月号 STAGE48
左:線画 右:下絵

下絵の段階でもうジョージがかっこいい……!できあがっていく行程を見るのは、やはりワクワクしますね。矢沢あい先生はモノクロ原稿のデジタル移行も早い印象。

Zipper 2003年5月号 STAGE48

スクリーントーンの効果を加えて完成。イザベラはナチュラルな下絵段階より、完成後のしっかりメイクの方がらしくていいですよね。

「ご近所物語」りぼん 1997年4月号 第26話 扉

私が初めて出会った矢沢あい作品は、服飾デザイン科を舞台にした物語「ご近所物語」でした。当時小学生だった私は、主人公である幸田実果子たちのおしゃれなファッションと恋模様に憧れたものです。

「天使なんかじゃない」りぼん 1993年10月号 第26話 扉

矢沢あい作品のなかで、個人的に一番好きなのが「天使なんかじゃない」。新設された高校の第一期生になった冴島翠。生徒会として学園生活に全力投球する姿は、どこもでも真っ直ぐで、私の目には眩しく映ります。

2023年現在、デジタル作画を取り入れている漫画家さんが多いと思います。1993年当時は、カラー原稿も全行程アナログ。そんなカラー表紙が惜しみなく展示されています。インクの滲み、重なり…たまらなく美しかったです。

「天使なんかじゃない」りぼん 1992年8月号 第12話

「天使なんかじゃない」では友情についても描かれています。私は、マミリンこと麻宮裕子が翠と関わっていくことで、頑なだった心が解けていく過程に胸を打たれました。

こちらの原稿は、下絵〜完成まですべてアナログで制作されています。私は「めざせ!マンガ家セット」的なものでアナログ作画もやってみた世代なので、生原稿見るとテンション上がっちゃうんですよね。

当時のりぼんでは珍しい、ミステリータッチの「下弦の月」は、今読み返したい名作。月の満ち欠けを軸にした恋人同士の物語は、綿密なプロットがないと成立しないでしょう。メイン読者層が小学生女児であるコミック誌「りぼん」の中でもチャレンジングな作品でした。

そして色とりどりの作品群は「NANA」へと繋がっていきます。

歴代のコミックスの表紙が並ぶ、圧巻のパネル。一つ一つを眺めながら、そうそう、あの巻はこういう話だったよね!と懐かしさが止まりません。20歳前後の女性を対象にしたコミック誌「Cookie」(クッキー)に連載していた「NANA」。

連載当初中学生だった私には、上京、恋、女の子2人暮らし、バンド活動…主人公であるハチこと小松奈々と大崎ナナの住んでいる世界が、ひたすらキラキラした大人に見えていました。

「NANA」Cookie 2000年10月号 第4話

しかし、連載が進むにつれ、2人のNANAが夢のために歩む物語は、きれいだけじゃない等身大の女の子である、もだえ悩む姿も見せてくれていたのです。連載は休止してしまいましたが、2人の行く末を見られたらと今でも思ってしまいます。

最後の展示は「Special Reel」。愛用の画材や連載当時の付録など、貴重なアイテムをたくさん見られました。CDジャケットや書籍イラストなど、類い稀ないセンスを活かしたコラボレーションアイテムも。

「ALL TIME BEST 矢沢あい展」巡回会場 書き下ろし 宮城

愛用の製図ペンを眺めて、「これで“ご近所物語”のファッショナブルで無駄のない線を描いていたのかなぁ」と思ったり、当時の付録を眺めて「これ持っていたわ〜!」と思ったり、少女だったときのときめきが並んでいました。

作品数が多いのに、あっという間に見終わってしまった「矢沢あい展」。最後の書き下ろしを読んだ後は再入場ができないので、後ろ髪引かれる思いでした。

矢沢あい作品のキャラクターは、私が大人になった今も色褪せることなく、元気に手を振ってくれている。先生が作品一つ一つへ愛を注いだからこそ、活き活きと輝き続けているのでしょう。

おごがましいけど、私も人の心を動かせるような仕事をしてみたい、文章を紡ぎたい、そう思わせるパワーのある作品展でした。

そう、愛はパワーだよ!

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▼こちらは「中村佑介20周年展」を観たときのレポート。

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