マガジンのカバー画像

読む、書く

225
運営しているクリエイター

記事一覧

最近読んだ本の話 vol.129

 「最近読んだ本の話」の第129弾です。この間まで桜が咲いていたのにもう暑くなってきました。まだ4月なのに!今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、九段 理江『しをかくうま』  始まりは幻想的な馬と人間との出会いが描かれていますが、次の章からは雰囲気がガラッと変わり、現代のお話です。競馬実況の仕事をしている主人公がいかに馬を愛しているか、夜通し実況を練習し続ける姿などが描かれます。一体この物語はどうなっていくのか⁉と気になって読み進みました。筆力がすごいです。どんなこ

最近読んだ本の話 vol.128

 「最近読んだ本の話」の第128弾です。とうとう桜が咲いて、あっという間に満開になりました🌸今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、金原 ひとみ『ハジケテマザレ』  金原ひとみさんが今どんなことを考えておられるのかを知りたいので新作はほぼ読んでいます。そういうわけで今回も楽しみに読みました。  「フェスティヴィタ」というイタリアンレストランが舞台になっています。主人公の真野は飲食店の派遣の仕事をしていましたが、コロナで解雇されて「フェスティヴィタ」でバイトを始めて、思

最近読んだ本の話 vol.127

 「最近読んだ本の話」の第127弾です。お花屋さんにミモザが売っているのを見るとなぜかうれしくなります。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、平戸 萌『私が鳥のときは』  「私が鳥のときは」と「アイムアハッピー・フォーエバー」のニ篇が収録されています。  「私が鳥のときは」は、中学三年生の夏休み、主人公・蒼子の家に蒼子の母が元同僚のバナミさんをさらってきます。バナミさんは病気にかかっていて余命わずかだというのですが、いったいどうしてここに?父と弟はおばあちゃんの家に

最近読んだ本の話 vol.126

 「最近読んだ本の話」の第126弾です。もう3月です!暖かい日もあれば凍えそうに寒い日もあって、まだ春は遠そうです。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、山本 冴里『世界中で言葉のかけらを』  日本語教師の著者が、初めて語学留学をした頃の話や、外国で日本語教師として経験してきたことが綴られています。日本語を学ぶ外国人の方が発した印象に残る日本語を記録していて、本の中で紹介してくれたりもします。   著者のフランス語の学習方法が紹介されていて、カミュの『異邦人』のフラ

最近読んだ本の話 vol.125

 「最近読んだ本の話」の第125弾です。毎日暖かくなったり寒くなったりの繰り返しです。今年はまだ雪を見てないけどもう降らないかもしれないなあ。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、佐川 光晴『あけくれの少女』  主人公の真記は広島の尾道で生まれた12歳の少女で、真記が伯父夫婦の家に度々遊びに行くところから物語は始まります。時代は1980年代で日本はバブルの時期です。伯父夫婦の養女にならなければならない運命から、父が株と土地で儲けたおかげで養女にならなくてよくなり、真

最近読んだ本の話 vol.124

 「最近読んだ本の話」の第124弾です。もう2月です。いつもより寒くないような…これから寒くなるんだろうか?今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、伊与原 新『宙わたる教室』  東京の新宿にある定時制の都立高校を舞台にしたお話です。いろんな事情があって定時制の高校に通っている生徒たちが、理科と数学を教える教師の藤竹と「科学部」を作ります。「火星のクレーター」を再現する実験を始めた岳人、アンジェラ、佳純の3人の科学部員に、70代の長嶺が加わり3メートルもの高さの実験装置

最近読んだ本の話 vol.123

 「最近読んだ本の話」の第123弾です。寒さが本格的になってきました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、高瀬隼子『いい子のあくび』  3篇の物語が収録されています。1篇目の「いい子のあくび」は、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けることに不満を感じている主人公が、スマホを見ながら自転車に乗る中学生をわざとよけずにぶつかる場面から始まります。私もしょっちゅう人をよけて歩いているので、人ごみはめっちゃ疲れます。自分の安全のためによけないといけないのですが

最近読んだ本の話 vol.122

 「最近読んだ本の話」の第122弾です。年が明けてもう13日です。体調も戻ってこのnoteも再開できました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、伊坂 幸太郎『777 トリプルセブン』  怖ろしいホテルです。こんな所には泊まりたくない!  超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという殺し屋の天道虫が請け負った簡単なはずの仕事が、部屋番号を間違えたためとんでもないことになります。驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花がそのホテルに隠れていて、ボディーガードの到着を待って

最近読んだ本の話 vol.121

 「最近読んだ本の話」の第121弾です。クリスマスイブです!朝から掃除をして疲れました。今夜ケーキを食べるのが楽しみです🎄最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、原田 ひ香『喫茶おじさん』  主人公は松尾純一郎という喫茶店が好きな57歳の男性です。東京のあちこちの喫茶店めぐりをしていて楽しそうな様子が描かれていて、うらやましい!と思ってしまいました。でもよく考えれば1店でコーヒーとスイーツを頼んで1,000円から2,000円くらい。飲みに行くよりは安いかも?  しかしこの松

最近読んだ本の話 vol.120

 「最近読んだ本の話」の第120弾です。もう12月です!だんだん寒くなってきましたが、週末は暖かそうです。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、寺地 はるな『わたしたちに翼はいらない』  同じ市に住んでいる登場人物数人の、今の生活と過去のできごと、今何を思っているのかが描かれつつ物語が進んでいきます。その登場人物たちが、元々知り合いだったり、最近知り合ったりしてどんどん繋がっていきます。中学時代の同級生を殺そうと考えている園田が、シングルマザーの朱音と親しくなったり

最近読んだ本の話 vol.119

 「最近読んだ本の話」の第119弾です。寒くなってきました。あっという間に秋が終わってもう冬?今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、沢木 耕太郎『夢の町本通り:ブック・エッセイ』  沢木さんが30年あまりの間に書かれた本にまつわるエッセイが集められた本です。読んでいると、30年くらい前に書かれたエッセイも最近書かれたエッセイも間違いなく沢木さんで、思考することは年月が経ってもそう変わらないのだと感じました。私もきっと考えることはそう変わらなくて、たとえ肉体は衰えてい

最近読んだ本の話 vol.118

 「最近読んだ本の話」の第118弾です。雨が降って涼しくなって、いよいよ秋らしくなってきました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、上田 岳弘『最愛の』  主人公の久島は30代の男性ですが、中学生から大学生までの間、望未という同級生と文通をしていました。久島は今もそのことが頭を離れず、その文通のことを出会った人に話します。レンタルオフィスで知り合った坂城に話すと、誰にも見せない自分だけの文章を書くことを勧められます。  この小説自体が久島が書いた小説なのかどうなの

最近読んだ本の話 vol.117

 「最近読んだ本の話」の第117弾です。もう11月になりました。そろそろ紅葉がはじまりますね。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、岩井 圭也『楽園の犬』  1940年、太平洋戦争勃発直前の南洋サイパンが物語の舞台です。主人公の麻田は横浜で英語教師をしていましたが、喘息の症状がひどくなり退職して、南洋庁サイパン支庁庶務係の職を得て、サイパンに赴任します。サイパンには多くのスパイがいて、麻田はそのスパイたちから日本の情報が盗まれるのを防ぐ役割のスパイ活動を命じられてい

最近読んだ本の話 vol.116

 「最近読んだ本の話」の第116弾です。秋らしくなってきました!紅葉はまだもうちょっと先かな。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。 1、辻村 深月『この夏の星を見る』  辻村深月さんの新刊(6月発売)です。楽しみにしていたのでワクワクしながら読みました。  亜紗(茨城県立砂浦第三高校の二年生で天文部)、真宙(まひろ・渋谷区立ひばり森中学の一年生で理学部)、円華(まどか・長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で吹奏楽部)の3人の物語が順番に描かれていて、途中で3つの物語がつ