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KANさんの想い出〜⑩KANさんの遺したもの【完】

KANさんが亡くなってから、約一か月経った12月16日、大阪のFM局・FM CoCoLoで、「KAN 1DAY SPECIAL “Our Favorite Songwriter”」という、スペシャルなデイがあった。朝6時から夜の23時まで、KANさんにゆかりのあるミュージシャンたちのコメントを紹介しながら、KANさんの曲や馴染みのある曲ばかり流す、というスペシャルな日。私は、この日、以下のようなリクエストをした。

「中学生のころ、初めて自分のおこづかいで買ったのが、KANさんの「東京ライフ」でした。
発売日に、勇気を出して店員さんに「KANさんの東京ライフのCDありますか?」と尋ねたところ、「兄ちゃん、シブいね!」と持ってきてくれたことを思い出します。
これからも、KANさんの曲を、ラジオを聴き続けることが私にできることだと思っています。ありがとう、KANさん。
リクエストはKANさんの「東京ライフ」をお願いします。」

朝の番組で、「東京ライフ」がかかった。SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さんイチオシの楽曲だった。私のコメントも紹介された。私がラジオでリクエストしたKANさんの曲が、初めてかかった瞬間。

やっぱり、これから、今まで聴いてこなかったKANさんの曲を聴き続け、KANさんが好きだったラジオを聴くことが私にできることだと思う。ラジオで読まれたことでその決意を新たにした。

「KANさんのアタックヤング」でKANさんが話していたことで覚えているのは、けっこうどうしようもないことばかりだけど、「愛は勝つ」が売れるようになった直後、こういうのがあった。

「最近、女性タレントさんと共演することが増えてきて、すごくキレイな人が多くて嬉しくなっちゃって、つい「これ、僕のCDでーす。よかったら聴いてください」ってアルバムをあげちゃうんだけど、マネージャーに言われるんだよね。「KANちゃん、アルバムってファンのみんなはおこづかいためて、やっと買ってるんだよ。聴くかどうかわかんない人に、キレイっていう理由だけでポンポンあげちゃダメ」って。そうなんだけどね、反省してます。」

なんでこんな話を覚えてるのかわからないけど、美人に目がなかったKANさんらしいエピソードだと思う。じゃあ、ファンとしてもいいアルバム(作品)じゃなきゃ買わないよ、と中学生の自分は布団の中で笑っていたような。(生意気な中学生時代の私)

そんなことがあったからか、中高生のときも、KANさんの作品には厳しい目?を持って、アルバム購入の判断をしていた。「東京ライフ」や「REGRETS」の入った『HAPPY TITLE〜幸福選手権〜』、「言えずのI LOVE YOU」の入った『GIRL TO LOVE』、そして「愛は勝つ」が入った『野球選手が夢だった』、その次のアルバム『ゆっくり風呂につかりたい』は、ほぼ無条件で買った。しかし、アタヤンを聴き始める前の既発売盤であるデビューアルバム『テレビの中に』とセカンドアルバム『NO-NO-YESMAN』は買うのをためらっていた。先に『NO‐NO- YESMAN』を買ったのだが、このアルバムについては当時の自分はどうも満足できず、迷ったあげく、買う予定でいた『テレビの中に』を買うことを見送った。また、前述のとおり、違和感を感じた『TOKYOMAN』と、周りの声を気にしてしまったそれ以降のCDは買っていない。

しかし、もうおこづかいを貯めなければアルバムを買えない歳ではない。『テレビの中に』も含めて、『TOKYOMAN』以降のKANさんの曲を聴いていこうと思う。

そして、KANさんが遺してくれたもので、KANさんの楽曲と同じくらい大きなものは、「KANさんの聴いた音楽」だ。KANさんは中学生のころ、Beatlesの音楽を聴きコピーバンドをはじめたり、高校時代にはビリー・ジョエルのアルバム『ニューヨーク52番街』を聴いて衝撃を受けたという。その後のKANさんの作品はこれらのミュージシャンの影響を多大に受けているといわれる。また、KANさんは交流があった国内のミュージシャンとも影響を受けあっていた。aiko、ASKA、きゃりーぱみゅぱみゅ、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)、スキマスイッチ、トータス松本(ウルフルズ)、根本要(スターダストレビュー)、秦基博、馬場俊英、Perfume、浜田省吾、広沢タダシ、槇原敬之、宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))・・・ほかにもたくさんいると思うけれど、そうしたミュージシャンの音楽を聴くキッカケを作ってくれている。さらに、KANさんの提供曲(有名ドコロでは、今井美樹の「雨にキッスの花束を」などなど多数)をたどるのも面白い。

私などは、主に聴くジャンルがクラシックやジャズだから、BeatlesやBilly Joelはベスト盤をつまみ聴きしている程度、日本人のミュージシャンに至っては、まったく聴いたことのない人も多い。ただ、多くのジャンルの音楽を聴くことは、KANさんの楽曲への理解を深めることにもなり、新たな発見が生まれる。また、それ以前に、いろんな音楽に触れることは、人生を豊かにするものだと、思う。

こうした音楽や、ラジオを聴きつつ、KANさんを思い出すことが、残された私たちにできること。そして、自分がいなくなっても、こうした音楽を聴き続けることで、聴き手の生活が豊かになることが、KANさんがファンやリスナーに望んでいたことなのではないだろうか。そうすることで、KANさんは多くの聴き手の中で、永遠に生き続ける。

KANさん、ありがとう。
ほな、サイババ🤭

そして、KANさんの足跡を辿る音楽巡りは、いま始まったばかりだ。

(おわり)

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