放し飼い

ここにいるのを運命ではなく 宿命とするのであれば
逃げようなんて思わない なんでだって、楽だから
君と話をしているその一瞬 頭の隅にある思想
例えばそこのカミソリを 僕は君の喉元へ
例えばそこの包丁を 君は僕の下腹部へ
自由というのは そういうことだと思う

球体アクリルの中覗けば ちび屑ぎっしり
それは箱庭の中 僕らは十分もがいている
自由の大きさにもがいている 飼いならせずに困っている

自由がほしいと叫んでいても そう言えることは自由ではないか
背負いこむのは大変だから 誰かからの束縛がほしいんだろう
大通駅のホームの端 電車の押し風わびしさに
この瞬間に僕はそう あと5センチ前に
電車を降りる足をそう あと3センチ後に
生きると死ぬは そういう采配だと思う

球体アクリルの中の気圧 けっこうずっしり
それは箱庭の中 僕らは十分もがいている
自分とその他を考える 放たれたものの戸惑い歩く 

目を閉じ続けると 1つだけを見つめ続けると
僕らは何をしだすかわからないようになっているようで
鋭利な刃物を持たないように 近くの君と手をつなげばいい
重厚な鈍器を抱えないように 近くの君と支えあえばいい
理想とはわかっているけれど 最小単位から始めたほうがいい

球体アクリルの中覗けば ちび屑ぎっしり
それは箱庭の中 僕らは必死にもがいている
誰かと一緒にもがいていく 互い互いを飼いながら

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