セフレに恋した女の子2

23:10「タクシー代あげるから、家までおいで」

今日が金曜日でこの時間に連絡来るってもう分かって、シャワーを浴びて丁寧にメイクをして、脱ぎやすいワンピースに着替えてしっかりとブローして、お気に入りの香水をつけて、私は

「ちょうど近くで飲んでました」
と返信する

口にしたら終わってしまうとおもっていた「好き」だったのに
私にとっては重くて怖くて怖くてそれでも言いたくて、漏れてしまった「好き」だったのに

簡単に言えるものじゃなかったのに、大事にしまってきた「好き」だったのに、やっと誰かのこと好きになれたのに

「ほんとにいい子だね」
と言って優しく頭を撫でられた

私の、恐怖と不安に固められた「好き」は誰の心に刺さるでもなく空中で二つに割れて、また半分になって、半分の半分になって、その半分になって、半分になって半分になって、何回も半分になって、ゆっくりまつげに落ちてきた。

粉々になった「好き」が、降り注ぐ。

彼の髪の毛にも、たくさんの「好き」が降り注ぐ。

きっと彼はどれだけ降り積もっても気付かない、私だって寂しさの埋め合わせで、一晩の快楽の為に楽しんでいると思っているんでしょう

本当は昼の彼も朝の彼も、キスがなくたって触れられなくたっていいから、もっと特別な何かになりたかった。

消耗品以上になりたかった

射精するための道具になりたくなかった

明日消えてしまうかもしれないって怖がって欲しかった。
この子の一年後も隣で見ていたいって思わせたかった思わせられなかった、

私が他の男とセックスしても誰とデートしても他の誰を愛しても
傷付けられないんでしょう

私のものにならないくせに
「一番大事にするよ」と平気で約束を増やす彼を憎み、ゆっくり心を殺して従順に喜んで見せる。

絶対にキスマークを付けないことも
部屋に私の痕跡残さないようなしてるのも
私、全部気付いていた

クラゲが見たいのに、水族館には誘えない
行きたい場所はたくさんあるのに、呼ばれないと会えない

求められると、キスを拒めない

「傷付けるつもりなら触らないで、気安く気持ちよくならないで、ありふれてるなんて勘違いしないで」どれも言えないから、何度傷ついても血も流せない

拒んでもう2度としないからといって今更彼女にはなれない

彼の性癖、好みを全て詰め込んだ上で、魅力的な女の子になりたかった。

外見も、仕草も、匂いも、笑い方も、全部私じゃなくて彼が彼女にしてきた女の子みたいになりたかった。

短い髪が好きと言われた日の帰り道に美容院を予約して伸ばしていた長い髪を平気で切り落としてしまうし、毎日可愛くなりたくて毎日自信がない。

なんで私は気持ちよくさせてしまうの
なんで私は欲しがられるのに独り占めされないの
なんで私は気に入られるのに大事にされないの
なんで簡単に、簡単に好きになってしまうの
なんで私ばっかりさみしいの

なんで私は誰のものにもなれないの

日々…健気に頑張っております…