国産の不活化ワクチンの治験データ

KMバイオロジクスが開発中の新型コロナウイルスワクチンの不活化ワクチンKD-414の第2/3相試験の査読前論文が公開された。(プレスリリースとして2022年7月6日に出されたものについての論文です。)
Preliminary report: Safety and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine, KD-414, in healthy adult participants: a non-randomized, open-label phase 2/3 clinical study in Japan
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.10.27.22281603v1
ちなみに、第1/2相試験の査読前論文は、
Safety and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine, KD-414, in healthy adult and elderly subjects: a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 1/2 clinical study in Japan
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.06.28.22276794v1

不活化ワクチンKD-414は新型コロナウイルスの武漢株を動物細胞で増殖させ、不活化・精製し、アジュバントとして水酸化アルミニウムを配合したワクチンです。
1回目接種28日後に2回目を接種、2回目から13週後に3回目を接種。2500人を対象とした治験で得られたデータとしては、

中和抗体陽転率(ワクチン接種前と接. 種後で中和抗体価が 4 倍以上に増加した被験者の割合)が、

というわけで、年齢が高くなるにつれて抗体が作られにくくなっていました。
(第1/2相試験のデータでは、41~70歳は2回で38%、3回で53%。71歳~は2回で17%、3回で25%でした)

武漢ウイルスに対する中和抗体価の幾何平均値は、

となり、3回接種することで大幅な中和抗体価の増加が期待されます。
(単純に比較はできませんが、モデルナのmRNAワクチンでは2回接種で中和抗体価は全年齢で800以上の値となっています)
アストラゼネカのワクチンVaxzevriaのデータを基にした、武漢株に対するワクチンの有効性は推定で約70~80%。

副反応は、何かしらのものが80.6%でみられ、注射部位疼痛、倦怠感、頭痛、注射部位紅斑、筋肉痛、注射部位硬結などが多かった。日常生活に支障をきたすグレード3以上の副反応は9名で計11件発生。若いほど発熱や頭痛などの全身性の副反応が出る率が少し高い。

高齢者では3回接種しても抗体陽転率は低いし、第3相試験(jRCT2031210679)は18~40歳を対象としているので、接種対象を限定した承認申請になるのでしょう。
過去にmRNAワクチンを接種して、ブースター接種として不活化ワクチンを使用するパターンなら高齢者でも抗体を誘導することができるかもしれませんが、どうでしょうか。

ちなみに、よく似た不活化ワクチンのインフルエンザワクチンは添付文書よると、
20歳以上の成人での中和抗体陽転率は1回接種で87%。副反応発現頻度は、65.0%で、主な副反応は、注射部位紅斑38.0%、注射部位疼痛35.0%、注射部位熱感23.0%、注射部位そう痒感22.0%、注射部位腫脹20.0%、倦怠感17.0%、頭痛12.0%、鼻漏7.0%。

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