ぱんだ先生に聞いてみよう第12話 たまごサンド

ある日、柚葉に
「一緒に公園でピクニックしよう」と
言われた。

お弁当を作ってきてくれると言われて、
ひなたはドキドキした。

女子にお弁当を作ってもらうなんて
母親以外初めてだった。

だだっ広い公園まで
電車を乗り継いだ。

柚葉の手には茶色いバスケットがあった。
大きくてたくさん入りそうだった。
中には何が入っているんだろう。


今日は、それなりにいい天気で
ポカポカしていた。


帽子をかぶって日差しよけをした。


公園に着くと、小型犬を散歩する人や
親子連れでボール遊び、
遊具を楽しんでいる幼児や
スポーツウエアを着た男性が走っていた。

高齢者の人たちは、パークゴルフを
楽しんでいる。

ここは、老若男女集う大きな公園だった。

場所によっては、BBQを楽しむことができるようだった。

大きな屋根があるベンチにひなたと柚葉は
座った。

「たまにはこういうところもいいよね。」

「そうそう、スマホでモンスター集めも
 できるしね。」

 ひなたは、スマホをタップして、
 出てくるモンスターを集め始めていた。

「もう、ひなたは、すぐゲームの話ばかり。
 公園に来てもその話じゃん。」


「だって、公園はスポットって言って、
 たくさん捕まえられるんだよ?
 これは、必須だよ、俺は。」


「はいはい。そうですか。」

 白いフリルのついたワンピースを羽織った
 柚葉はどこかお母さんみたいな
 対応だった。

「ちょっと待っててね。
 すぐそこにモンスター出たから。」

 柚葉は、水筒のコップに2人分の
 お茶を注いだ。

「ここにお茶置いておくよ?」

「ああ、今飲むから。」

 ひなたは柚葉の隣に座った。
 テーブルには水筒のコップにお茶が
 置かれた。

「そろそろ、お腹すかない?
 食べる?お弁当。」

「うん。食べる。
 何、作ってきたの?」

 柚葉は、お弁当を持ち上げて、
 ニコニコしながら、ふたを開ける。

「ジャジャーン。」

「おーー。」

 頑張って考えて作ったんだろう。
 びっちりと敷き詰められていた。

「これが、ベーコンのアスパラ巻きで、 
 あと、ウィンナーでしょう。
 それと、ツナマヨのおにぎりと、
 たまごとハムのサンドイッチ。
 それと…とりのからあげ。」

「たくさん作ったね。
 美味しそう。」

「もちろん、私作ったものもあるんだけど、
 お母さんが作ったストックおかずも
 あるの。」

 申し訳なさそうな顔で言う。

「そうなんだ。ありがとう。
 食べていい?」

「うん。めしあがれ。」

「いただきます。」

 ひなたは1番先に、たまごサンドを
 手に取った。

 パクッと頬張ると違和感を覚えた。

「あ、これね。
 初めて私が作ったの。
 たまごサンドってこうやって作るだって
 勉強になったよ。」

 柚葉も同じたまごサンドを手に取った。

 ひなたの違和感とは、味のことではない。
 歯に当たる感覚。
 じゃりとする感じ。

(あ、これ、マジ?
 たまごの殻が入ってるじゃん。
 いや、これ、言うべきか言わざるべきか。)

 ひなたは背中にものすごい冷や汗を
 かいた。

 そんな時の救世主。

 ぱんだ先生は登場した。

 今回は、姿を見せず、声だけ送ってくる。

(ひなた、どうかしたか。)

「あれ、ぱんだの声。」

 ひなたは小声で空中をくるくると見る。

(あー、なんとなく状況は察した。
 柚葉ちゃん、頑張って作った 
 たまごサンドね。)

「これ、どうすんの?
 言うべき?言わないの?」

 真上を眺めて、小声で聞く。
 柚葉は気づいていない。

(んー。言わないで、食べておけ。
 入れたくて殻を入れたわけじゃない。
 優しさは必要だと思う。)

「だって、これは?」

 口の中の殻を指差す。

(ティッシュの中に隠せ。)

 ひなたは慌てて、柚葉に鼻水が出ると
 嘘をついてティッシュをもらった。

 気づかれないようにたまごの殻をまるめて
 ズボンのポケットに入れた。

「よし。」

「ひなた、どうだった?
 たまごサンド。」

「うん、うまかったよ。
 甘さもちょうどいい感じ。」

「本当?!良かったぁ。
 また作るね。
 たまごサンドマスターだ。」

 ひなたはとても喜ぶ柚葉の顔を見て、
 とても嬉しくなった。
 不機嫌な顔を見るより断然いい。



 次の機会に作った時の柚葉の
 たまごサンドには殻なんて入っておらず、
 心から美味しく食べられた。

 幸せなひとときをかみしめた。

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