ぱんだ先生に聞いてみよう第14話 失恋の回復には

いつものように三度寝して起きた朝。

今日は、朝日は眩しくてカーテンを開ける前から顔に光が差し込んでいた。

目覚まし時計はベッドの下に転がっている。その隣には、一緒にスマホが落ちていた。

朝に1通のライン。


『別れよう。』


その柚葉から一言。

朝の目覚めは衝撃的だった。

まさか、予感は当たったのか。

スタンプ無しの別れようの一言は重かったが、ラインで終わらせたくなかった。

ひなたは、制服に急いで着替えて、
朝ごはんを食べずに、慌てて外へ
駆け出した。 

電車の時間まで少し余裕はある。


汗をかきながら、自転車を必死で漕いだ。

冬だというのに、あたたかい。

自転車を漕ぐという運動をしているせいか。


ひなたは、柚葉と一緒に乗る駅の出入り口で待ちぶせしようと考えた。

駐輪場にとめて、自転車の鍵を閉めた。


かごに乗せたバックを忘れずに持って、
改札前でスマホ片手に待っていた。

たくさんの乗客が改札を通り抜けていく。

ピコンと鳴る音が響く。

発車ベルが響いていた。

ひなたたちが乗る電車はまだ時間ではない。

他の車両が出発するようだ。


スマホの時計を確認して、まだかと
確認する。

ひなたは、柚葉の言葉を既読して、
言葉やスタンプは送らなかった。

見てないんだろうと思わせたかった。

嘘って思いたい。


右から左へ通り過ぎる同じ高校に通う
制服の女子高生を見かけてはさらりと顔を見るが、柚葉じゃない。


そろそろ来ても良い頃だ。


ひなたは、ハッと息をのんだ。


やっと、柚葉が改札口を通り過ぎようとする。

ひなたがいることは気づいているはずなのに
他人のふりして、改札を通り過ぎて行った。


「柚葉!!」


 声をかけても彼女はこちらを見向きもしない。ひなたはバックから定期券を取り出し、急いで、後を追いかけた。


「ちょ、待てよ!
 柚葉!!」


 階段をかけおりていく柚葉の肩に触れた。


「……ひなた。」

 ただその一言。挨拶さえもしない。
 笑顔ではない。


「あ、あのさ、さっきのラインって本当?」

 階段の下りる途中で手すりギリギリで
 話し合う。

「うん。そうだよ。」


「え、ちょっと待って。
 突然すぎない?
 なんで?俺、何か嫌なことした?」


「…ひなたは別に悪くないよ。」


「え?」


「私、他に好きな人できたから。
 ごめん。」


冷酷な顔で話す柚葉とは距離があった。

そう言い放つとバックを持ち直して、車両に乗っていく。

発車ベルが鳴る。


ひなたの横を健太郎がかけおりる。

「あー、危ない。危ない。
 乗らないと…。
 あ、柚葉。」

階段をかけおりる健太郎の横にひなたがいることを気づかなかったらしい。 
柚葉がいる車両に乗っていく。

2人は仲睦まじいそうな雰囲気だった。


「嘘だろ。
 まさか、好きな人って健太郎?
 よりによって、
 なんで俺の友達なんだよ。」

 電車に乗る気力を失ったひなたは、
 その場で崩れた。

 バックが肩からずれ落ちた。


 電車はひなたを置いて出発した。


 タタタンタタタンと車両は走っていく。


 学校に行く気力も無くなった。

 ずっと顔を隠して、階段の手すりに
 しがみついた。


(どうした。)


「今は何も聞かないで。」


 ぱんだは、ひなたの後ろに現れたが、
 お役目ごめんのようだ。


 相談したくても相談する気力さえも
 失った。



(あ!! あそこにおっぱい
 大きい美人なお姉さんが!)

ぱんだは元気を出させようと
ホームで電車を待つグラマーなお姉さんを
指差した。

顔を上げたひなたは一瞬その女性を見たが、
今はそれどころじゃなかったらしい。


また顔を隠して、げっそりしていた。


(ダメだこれは。)


初めて出来た彼女で、大好きだった。

親友に取られたかと思うとそっちの方が
きつかった。

健太郎との付き合いはもうできない。


(まぁ、時間が解決するさ。
 今は、忘れて、好きなことしよう。
 何したい!?)


「パンクな歌を歌いたい!!」


(よし、カラオケ行って発散だ。)



「学校は?」



(今日くらい休んだってバチ当たらないさ。
 行くぞ。)



ぱんだはやる気が出たひなたを励まして、
いつも通りに自転車の後ろを背中合わせに乗って、ピューと吹き流しを吹き続けた。


失恋のショックはカラオケで吹き飛ばす。


友達以上の友達ができた気がした
ひなただった。

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