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まえとあとダイジェスト版 Vol.5

コロナのまえとあと / 竹中功

いま僕らに求められているのは、この国で起こっている想像力の低下をどう捉え、どう克服するかなのかも知れない。もっともっと本来、今こそ学ばないといけないものが何なのか、どうしたらそれを学ぶことが出来るのか。本当にそれに気付き、それを今考えないといけない。

バイトはじめるんですか?

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以前テレビCMで松本人志がしつこく宣伝してたので、いまバイトアプリを登録してると、いつも案件の案内メールが来るんよ。そろそろバイトに行かなあかんなと思っていて。60歳以上で経験なくてもすぐに働けるって感じのを登録してるねん。

体はもう歳やから無理は出来ないけど、ひょっとして出来る仕事があれば、アルバイトしようかなって思って。ここで少しでもアルバイトをしていたらそれもネタになるんやけどね。ネタでやったら怒られるかな。まぁ労働に対する対価のギャラやからもらっても当然やろうから、バイトでもしてみようかと。

望月
でも真面目にやってればネタでも良いと思いますけどね。

竹中
そうそう。ものを書いたりする仕事もあるから、まだバイトには行ってないけど、時間の整理やコロナが落ち着いて職場に迷惑かからへんような仕事があるんやったら、ちょっと行ってもいいかな。

望月
でもそういうバイタリティがあるのが、竹中さんはすごいなって思いますね。竹中さんと同じ世代になるとバイトに行くなんて思う人のほうが少ないですよ。

竹中
それなりの大企業などで働いていた人にとってはそうかも知れへんけど、単純に考えて60歳過ぎて仕事があるなら、それは幸せやと思う。吉本興業に僕の同期が二人、役員で残っていたけど、偶然今年の3月末で二人とも退社してしまった。関連子会社に残るなどもせずに、会社人を辞めてしまった。一人は自宅の庭を農園に。一人は健康麻雀なるものをやってるとか。僕から見たら呑気でええなぁと思うけど、本人はどんな感じなんかな?

バイタリティがあるのは、このウイルスに負けずに生きていく免疫力を保持するみたいなことやからね。だってこれで気持ちがマイナスだったら体もマイナスになってるやんか。それは芸人を見ても、エンタメの世界ではよくある話。でもそれに限らずやろうね。気持ちが後ろ向きなやつは体も弱っていくから。

そういう意味でいうと、誰かにバイトをしろと言われたわけではないけど、やってみようと。怒られるかな、でも怒られたら謝ったらええか、とか言いながら、5000円くれたら嬉しいなって。夜中働いたら8000円くれるかもしれないなとか。というのは半分シャレもあるから、真面目に働いている人には叱られるかもしれへんけど。会社に行くだけ行って、仕事もせんと仕事しているフリしている人に比べたらマシやと思うねん。

望月
それはそうですね。

竹中
「竹中さん、お金あるのに趣味でバイトですか」と言われるけれど、ほんまにお金もないし。退職金ももう無いし、今も働いて飯を食おうと思っているわけやから、そういう意味でいうと、もう一回労働に出直さなあかん。いま本気で働くのはやってもいいと思ってるねん。

仕事の相性

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望月
そういう発想の原点は昔からですか?

竹中
それは昔からやね。吉本の仕事も仕事で、職人さんみたいに歴史を積んで上手くなっていく面もあるけれど、年齢で積み上げられない仕事との相性で決まるものもたくさんあった。だから経験を積めば積むほど良いマネージャーとして良いタレントを生み出せるのかと言えば、そうでもない。自分と相性の合うタレントやったら、めちゃくちゃ売ってあげて日本一になる人もいるし、日本一のタレントとは合わないけど、本当に年間に1〜2回しか仕事をしていないような芸人を鍛える方が向いてる人もいる。

お笑いの基準は見る人によってバラバラで違うし、作り方も一つではなかった。そんな世界におったから、マニュアルも存在しなければ逆に感覚が重要で、フィーリングが大事やった気もする。

望月
仕事の相性は間違いなく大きいですね。結局仕事の内容よりも誰とやるかですよね。

竹中
そう。仕事によっては自分で決められないものもあるし、決められる仕事もあるし。それに1回相性が良かったから、一生良いとは限らへんからね。今度は仕事と相性が合うか合わないもあるもんね。僕は合わしていくタイプ。

昔はわりと僕に合わせてほしいとか、みんなで決めたものに対してみんなで合わせていこうとやったけども、歳取ってからは独立独歩が楽になっていったね。だから経営者になり、組織の面倒を見るのはきっと向いてなかったから辞めて良かったと思った。

最後は関連子会社の社長もやったけど、そうなると人を育てることや組織とか仕事を見る仕事になっていくけど、だからと言って自分がオーナーではないから、自分が何でも決めれるわけでもなかった。そういう意味では、ええ歳してそんなところで頑なに会社の座を守ることよりも、辞めることを自分で決めて、自分のことは自分で決めるほうが楽やった。

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望月
でも歳を取っていくと、会社の座を守る人のほうが多いですよね。

竹中
多いよね。でもきっとその多くの人は良い大学を出て、それなりの企業に勤めていると、そう思うようになると思うで。僕は吉本に35年ほどいたけど、芸人はもちろんやけど、クリエイティブな人は本当に一匹狼やんか。ディレクターや作家、イラストレーターに写真家でもそうやんね。そんな人らは仕事がなかったら次は収入0円みたいなところがある。

今回のコロナで言うと、収入を求めるような局面でも大きく差が出たわけで、今のところ会社が潰れるところも多いけど、潰れなかったら給料くれるやん。雀の涙でもボーナスもあるかも。でも飲食業の兄ちゃんとか僕みたいな仕事をしていて、仕事が全部キャンセルとなったら、その月の月末も翌月も売上はは0円になるからね。その上、店をやっている人は家賃や人件費もいるやん。この辺が会社員であるか否かがはっきりしたところなんよ、銀行に振り込みがあるかどうか。

しかし企業人も商売人も、生き残らなければならないけど、コロナ前と同じ姿にはもう二度と戻らないと思う。その覚悟とその次の世界をどう設計するかが重要。「昔を夢見る」っておかしいよね。過去を懐かしんでいるより、未来を「夢見る」ことのほうが大事やよね。ということはそこのところの「想像力」が重要なのだわ。

この自粛要請のあった1〜2ヶ月間、暇で試されたけど、なかなかうまく自分自身でも実験してないよね。「何かネットで学びましたか」とか、「見たい映画20本に見ましたか」とか、どれも叶えられなかったのよね。でもここで何を考えたか、力をどう蓄えたかによって、このコロナショックがあと2年続いたとしても、めげんと生きていけるのか、もう限界ですと鬱になったり、喧嘩して離婚したり、会社潰れて本当に就職先がなくなって泥棒なるやつが出たり、もちろん自殺する人が増えることも予測されるだけに「気の持ち方」が生死を分けると思う。

僕は世界を救う立場じゃないんで、ようやらんけど、せめて知り合いが死にそうになっていたら助けてやりたいし、死にたい言うたら、「やめろ!」って止めるし、お金はないけどおにぎりを1個あげることは出来るし、自分以外におにぎりをくれる人を探すことは出来るはずやねん。

だからコロナショックを前にして、どっかで知力体力やないけど、その辺りの能力を上げたやつはこの先も強いと思う。家族との会話もするし、友だちや会社の上司も後輩ともまともな会話もできる。ここは人間力やね。ただ残念なことに、この「まとも」さえも再確認せねばならないほど、「社会性」を失った人間も増えてる。特に老人があかんなぁ。僕はそっちに行かないように我慢してる。「昔話しない。自慢話しない。説教しない。」て決めて生きてたら高田純次も同じことを言ってたわ(笑)。

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