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【徒然コラム第1回】新型コロナで試される模型業界と、その未来

新型コロナウイルス感染拡大を抑制するため、通勤通学を含む外出を自粛する動きに伴い、自宅でどう過ごすかを模索したこの春から初夏にかけての日本。出掛けられないなら…ということで、家の中で出来ることに注目が集まった。読書や料理、オンラインでのアクティビティなどが代表的だが、模型製作がその中に混じっていたようである(規模はそれほどではないようだが)。

「6月末に出た売り上げはなかなか良い数字だった」「〇〇が飛ぶように売れて、休日も工場に稼働してもらった」「塗料の注文が多くて、出荷に毎日一苦労」…。模型業界関係者からは、飲食業や観光業の関係者のそれとは真逆の声が聞こえてきた。外出できない親子が模型作りで共に時間を過ごし、かつて模型に親しんだ大人たちが久々に模型を手にして組み立て、色も塗る…。業界関係者の言葉の向こうに、そんな光景が透けて見えてくる。

ユーザーの高齢化が進み、また趣味・嗜好の多様化で、模型業界は長期的に規模を縮小する傾向にあった。2010年代になるとその傾向は一層顕著になり、新商品の数は1990年代から2000年代にかけてのそれに比べれば激減し、価格の高騰からくる販売個数減少、それに伴う模型メーカー/輸入代理店の新商品リリース低迷と、負の連鎖が続いていた。そんな中で、偶然潜在顧客が向こうからやって来たわけだ。こんなチャンスは滅多にあるものではない。

緊急事態宣言は50日ほどで解除されたが、宣言期間中に模型に親しんだ人たちはその後どうしているだろうか? 感染再拡大が懸念されるなかで在宅ワークや外出自粛ムードは継続している感もあり、模型作りを訴求する環境は整っているとも言える。ライトユーザー層に模型作りを一時的な嗜みで終わらせないためにも、模型メーカーをはじめ業界に関係する企業各社は、業界の存続を見据えた取り組みを今こそ展開する必要があろう。一時的な盛り上がりに歓喜するだけで無策のままであれば、数年、いや10年先の業界の状況は、想像するに難くない。ほかの様々な業界同様、模型業界も新型コロナに試されている。

月刊モデルアート編集長 猪股


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