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11/8 『日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人』を読んだ

収録作のいくつかは以前に読んだことのあるものだったが、そのときは面白く読んだもののあんまり内容は理解できていなかったりしたので、今回再読してあらためて面白く読むことができた。
再読が面白かったのはよかったものの、肝心の内容理解が進んだのかっていうと、たぶん前回よりは前進した気はするが、そんな見違えるような伸び率ではない。つくしのはかまが2つから3つになった程度ではないか。依然として難しい。特に歴史もの……もとい歴史改変ものとか、舞台となる帝国がそもそもよく知らんとこだったりするので、それがいつの間にか史実の枠を飛び出しておかしなところに行っているかどうかなど、わかるはずもない。いやまあ……それはそれで、最初はふんふんと素直に見知らぬ土地の見知らぬ歴史の物語を聞きつつ、途中からあれ、なんか……これってもしかして史実と違うのでは……並列演算奴隷とかはもう我々の知ってる(知らないんだけど)歴史からはみ出してるのでは?……などと、茫洋とした面持ちながらフィクションとそうでないもののちがいを見極める楽しみはあったかも。もとより、そうしたあわいを楽しむ作風であるようにも思えるし。そのようにして、何度も読み返すことで自分の中の知識や時代観や倫理観がどう変化しているかを確かめるのが、新城カズマのたしなみ方であるのかもしれない。
「アンジー・クレーマーにさよならを」は読んだことのある話の一つだったんだけど、近未来の女学生パートと交互に描かれるスパルタパートの存在を、完全に忘れていた。近未来の女学生の話だけじゃなかったっけ……今作への収録にあたって大幅加筆とかしたわけじゃない? 女学生たちの、重・合・複といった魅惑的な設定や「続かなくてもいいんじゃないのかしら」という台詞は印象に残ってたんだけど。
「雨降りマージ」は初めて読んで、面白かったけど、最後の仕掛けの答えがわからんく非常にやきもきしている。タグのどこを見たらいいんだ? 別にしっかり答えが書いてるわけじゃなくて、タグの変遷を見て概ねの状況を察しろということなのか? こいつもいずれまた読み返せばわかるようになるのか……解説に答え書いといてくれればいいのに……非常にやきもきしている。
そして最後まで読んでから全体を見渡してみたとき、爆発オチが結構多いな……とちょっと思った。爆発、しないまでも洪水オチとか、世界終焉オチとか。意図して集めたわけじゃないだろうが。それとも意図してるのだろうか。あらゆるものは最後にはまとめてはじけ飛ぶか、まとめて流れ去っていくものだというのか。

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