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ラン&ついでの自由学習〜世田谷区の坂道と国分寺崖線〜

走った日: 2024年1月3日
走った距離:  8キロちょっと
走った場所: 世田谷区 岡本あたり

岡本は素敵なお屋敷と坂がいっぱい。 

仲間との走り初めは世田谷区。 閑静なお屋敷町。 静かで人通りもまばら(住んでいる方しか通らないのだろう)、坂や階段を上ったり下りたり。 トレーニングにうってつけ。
で、なぜこんなふうに坂が多いの?

それは『国分寺崖線』に沿って走ったからなのです。
で、『国分寺崖線』って何? って話ですよね。

で、調べてみました。

国分寺崖線って何? 


崖線というのは、文字通り崖の線。  崖が連なって、線状になっている地形を言います(どこの定義もみてないけど、そういうことですよねw) 

で、なんで崖が連なるか? 

というと

ここは、多摩川(イニシエの多摩川なので古多摩川と言います)が、十万年以上の歳月をかけて、武蔵野の台地につくった大きな大きな河岸段丘の段差にあたるからなのです。

ざっくりというと、武蔵野台地の河岸段丘は

・沖積低地(川が運んだ砕屑物が堆積してできた低い所)、

・立川面(立川段丘〕

・武蔵野面(武蔵野段丘)

の順に高くなっていて、

それぞれの段差が長い長い崖となる。 

沖積低地と立川面を隔てる崖が立川崖線、立川面と武蔵野面を隔てる崖が国分寺崖線です。

世田谷区が発行するパンフレット『国分寺崖線発見マップ』にはそのへんの段差がわかりやすく、かつ、美しく載っているのでここにお借りして貼ります。

国分寺崖線断面図。世田谷区による『国分寺崖線発見マップ』より

この立川段丘と武蔵野段丘を隔てている段差(崖)が国分寺崖線ですね。

で、これは地質的に水を貯え、ゆたかな湧き水がでる

こんな素敵なパンフレットby 世田谷区

ちなみにこの崖線は「ハケ」とも呼ばれています。その「ハケ」という言葉が意味することと「崖線」が同じなのか、この地域の湧水性があって初めて「ハケ」と呼ばれているの(水を吐くからハケと由来をいう説もある)か、いろんなひとがいろんなことを言っていて決定打に欠けるのでこれを追及するのはやめておきます。 ちなみに、大岡昇平の名著『武蔵野婦人』では、舞台となるこの土地の描写に「ハケ」という言葉が使われているということでした。

要は、豊かな湧き水が出るので、豊かな命、生態系が育まれ、美しい緑が連なる。『東京都のみどりの背骨の一部』と表現している資料にも出会いました。美しい表現ですね。

国分寺崖線はどこからどこまで?

で、この国分寺崖線は

どこに始まって
どこを通って
どこで終わるのか? 

どれだけ続いているのか?

今度は断面ではなくて上から見ていきます。

この地図がわかりやすいです。緑に塗られた部分が国分寺崖線。全長30kmほど。さきほど紹介した世田谷区の資料もこれを載せています。

東京都市整備局 国分寺崖線景観基本軸


この地図でみると、国分寺崖線は、立川市から、国分寺市、小金井市、三鷹市、調布市、狛江市を経て世田谷区へ、そして大田区に至っています。

ところがこの西の端をどこというか?は、資料によって、狭山丘陵といったり、武蔵村山市といったり、立川市といったりしていて、ちょっとあいまい。ま、そんなの「ここまでは崖ではなくて、ここからは崖です」なんて、あり得ないから良いとしましょう(笑)

たとえば
この資料『武蔵野台地と野川公園』では武蔵村山市に始まり、国分寺市、国立市・府中市の市境・調布市・世田谷区、大田区の多摩川河畔に至るとしている。

立川面と武蔵野面とは国分寺崖線によって分けられています。国分寺崖線は武蔵村山市に始まり、国分寺市・小金井市と国立市・府中市の市境に沿って東に進みます。そこからさらに野川の北に沿いながら調布市に入って深大寺付近を通り、世田谷区の玉川地区南部、大田区の田園調布を経て多摩川河畔に至ります。世田谷区の等々力渓谷は国分寺崖線の一部になります。

https://yamanekoforest.sakura.ne.jp/noyamaaruki/musasinodaiti.html
武蔵野台地と野川公園

国分寺市HPでは立川市から大田区まで

国分寺崖線は、武蔵野を代表する地形であり、立川市から大田区まで連続する延長約30キロメートルに及ぶ「がけ地」(ハケともよばれています)です。市内にも北西端から南東部まで国分寺崖線が連続し、貴重な樹林地が形成されています。
崖線の斜面地だけでなく、湧水・地下水の涵養域、崖線の崖下から見上げた景観及び崖上の台地からの眺望保全の観点を含め、国分寺市ではまちづくり条例における独自の「国分寺崖線区域」を設定し、重要な地域資産である国分寺崖線における緑地の保全、景観の形成、湧水の保全及び活用など独自の基準を設け、緑豊かな崖線の保全と再生に取り組んでいます。

https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/faq/kurashi/1005242/1005312/1006442.html
国分寺市ウェブサイトより

世田谷区でHPでも立川市から

立川市、国分寺市、小金井市等から連なる崖が「国分寺崖線」です。多摩川が10万年以上かけて武蔵野台地を削り取ってできたものです。樹林や湧水等の豊かな自然環境が残り、「世田谷のみどりの生命線」とも言われる場所です。世田谷区では、保全整備の取り組みを進めています。

https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/sumai/010/003/001/d00004905.html
世田谷区

こんな資料にもつきあたり、これでは狭山丘陵から

国分寺崖線(以下、崖線)は、古代多摩川が造った全長約30kmの河岸段丘で、狭山丘陵から国分寺市、小金井市、三鷹市を経て世田谷区二子玉川に至る高低差10~20mの崖の連なりである。

講演集 vol.32  2012年【国分寺崖線の歴史的変遷に関する基礎的研究】

どこから始まるか?ということについては微妙に違うけど、全長30kmということについては一致していますね。

他にも、小金井市のHPでは

小金井市内の南部には東西に走る国分寺崖線(ハケ)という10メートルを超える高低差があることから、多くの坂道があります。階段状や歩行者専用道など、様々な形態の坂があり、みどころがたくさんあります

https://www.city.koganei.lg.jp/kurashi/482/doro/sakatoyuuhodoumap.html
小金井市ウェブサイトより

三鷹市は、国分寺崖線に沿って流れる野川マップを作成、配布しこんなふうに紹介しています。

野川マップを作りました。

野川流域のおすすめスポットや野川と国分寺崖線(「ハケ」と呼ぶ。)の森に生息する主な生きものを紹介する内容になっています。

野川マップを片手に、湧水を源とする野川や武蔵野の豊かな緑が残るハケの森で、自然と触れ合ってみませんか。

https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/084/084745.html
三鷹市ウェブサイト

とにかく、

水が湧き出ずる豊かな土地だから、いきおい、豊かな自然が生まれる。

そこで、崖線を通る市や区はそこの環境保全に努めつつ、ウェブサイトで説明。

いかにその地区がこの崖線を大切にしているかがわかるというものです。 ポイントは、自然の豊かさ、坂道から開ける眺望の美しさの二点といえそうです。

世田谷区岡本というエリア

で、走った話に戻ると、仲間にエスコートしてもらいつつ走った世田谷区の岡本エリアは、国分寺崖線の高台に位置します。 坂が多いのは当然ということになりますね。 

なかでも、『岡本三丁目の坂』といわれている坂は、世田谷区一番の急坂で、勾配22度。 坂の上からは視界が開け、天気がよければ富士山も望めます。

こんな坂でした。

こんな感じの坂


頑張って登りました

お正月ですし、参拝した岡本八幡神社はこの地区が以前岡本村と呼ばれていたころからの鎮守の神社。崖線上にあるから、鳥居から拝殿までは急な階段を上ります。 音楽界のそれはそれはビッグな方と関係がありまして、一部の人には大変なパワースポットということになります。

階段


鳥居


おとなりには江戸時代後期の農家の家屋を再現する岡本公園民家園、そして三菱二代目社長の岩崎彌之助と四代目岩崎小彌太父子により設立された静嘉堂があります。明治維新後の急速な西洋化のなかで軽視されだした東洋固有の文化財を守ろうとした、彼らの貴重な(そして膨大な)コレクションを貯蔵する美しい建物です。どちらもしまっていて外から想像を膨らませるだけでしたけど。


外から覗いただけ  閉園中につき


そんなこんなで坂道練習をテーマに走った岡本エリアからの、国分寺崖線についてのまとめ。 最後にひとつ付け足すと、東京都環境局によれば、30kmに及ぶこの国分寺崖線、「上流立川では段差はほとんどなく、府中で15mほどの段差となり、世田谷区で20mに達する」ということ。
坂道練習は、やっぱりこの世田谷区が理に適っているというわけですね。

案内してくれたラン友さん、ありがとう。
しばらくご無沙汰していた『ラン&ついでの自由学習』、2024年のnote初め、無事に終えました(笑)

ここを参考にしました。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00902/2012/32-0255.pdf

https://www2.u-gakugei.ac.jp/~globe/observ/PDF/L05.pdf



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