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2023/4/15 13:00公演【ラビットホール】

観劇生活で初めての最前列での観劇。
表情、仕草、目線、息遣い見えないものが見えてくるようでワクワクな状態で全力待機して準備万端で席に着いていました笑
舞台セットも新居のようなにおいがしていてそんなことまで感じられる1列目でした笑

さて、あらすじです。
ニューヨーク郊外の閑静な町に暮らすベッカとハウイー夫妻。彼らの4歳の一人息子ダニーは、8月前に道路に飛び出した飼い犬を追いかけて交通事故で亡くなった。息子を詫びつつ前に進もうとするハウイーと、忘れられずにいるベッカ。ベッカは家族の些細な言動にもセンシティブになってしまっている。
そんなある日事故を起こした車を運転していた高校生ジェイソンから手紙が届く。。。

2010年にニコールキッドマン主演で映像化もされていました。

あらすじだけ聞くと重い話で体力要りそうと感じていましたが覚悟していたほどでもありませんでした。それは劇中にほんの少し挟まれるユーモアやテンポの良い会話があるからでしょうか。

この会話劇では誰も説明書のようなひとりごとはありませんでした。例えばベッカとハウイーが口論の後どちらかが舞台をはけるシーンで一人取り残された演者は言葉は発しませんでした。
言葉を発さない沈黙の舞台、演者の方の動きだけの演技。置かれている状況は同じなのに考えを分かち合えない苛立ちを綺麗で丁寧な所作で表していきます。

パンフレットには原作の作者の「この物語の本質は"and then"の探索です」コメントを引用して訳者の小田島創志さんが分かりやすく噛み砕いてくださっている箇所があります。

それを読むと確かに物語の本質、根底にある考え方だなあと、直訳すると「それで、それから」、自分は「じゃあどうする?」がしっくりきました。これは将来、これからのことを考える強いきっかけの言葉になると思いました。

息子の死を受け入れられず思い出の品を視界から失くしても思い出が消えないというベッカ、前に進まなきゃとベッカに熱弁するも夜に一人になると昔撮ってあった息子のホームビデオを観てしまうハウイー。どちらもこれからのことが考えられずに苦悩しています。まさにあの言葉は今の彼らに必要な状況でした。

その言葉を引き出すきっかけをくれたのは、交通事故の時に車を運転していたジェイソンとベッカとの会話の中にありました。「ラビットホール」です。それはジェイソンが書いた創作のSF小説。ラビットホールには無限に広がるパラレルワールドがあって似ている世界で生きている他の自分は幸せに暮らしている。「じゃあ自分はどうする?」そんな思いがベッカの中に沸き上がったのではないでしょうか??将来について考えるきっかけになった重要な場面でした。

全く同じような辛い思いではなくても誰しも抱える悩みはあるはずです。そんなときに前を向いて「じゃあどうする?」と問いたいと自分に置き換えて考える勇気をもらえた舞台でした。
成河さんが以下のインタビューでこんなことを話していました。

「演者で普遍化されることでこの悲しみは僕だけのものじゃないと癒されていく。劇場は避難場所。どうか劇場に逃げてください。」
まさに自分が感じたことです。


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