自閉症(発達障害)の理解⑥

今回は、行動への支援についてお話しします。

これまでは、子どもたちにわかりやすく伝える方法やコミュニケーションの育成について考察してきました。
今回は、ご家族が直面する子どもの問題行動への対処方法について、問題解決の視点で掘り下げていきます。
まず、子どもたちの行動を整理し、好ましい行動や改善が必要な行動を明確にすることの重要性を③の記事でお話しました。 ここで大切なのは、子どもたちのポジティブな行動に焦点を当て、ネガティブな部分だけに注目せず、育児の負担感を軽減することです。

また、子どもたちの行動を理解する上での大きな課題として、自閉スペクトラム症の見えない特性について考えます。
自閉スペクトラム症の子どもたちは、他者の気持ちを読み取ったり、場に応じた行動を取ることが苦手であり、そのために周囲とのコミュニケーションに課題を抱えます。
自閉スペクトラム症の子どもたちの行動の背景を理解し、それを支援することが重要です。

具体的には、子どもたちの行動背景を理解するために「氷山モデル」を用いることができます。
このモデルでは、目に見える行動や発言は氷山の一角に過ぎず、その背景には自閉スペクトラム症による感じ方や発達の影響など、目に見えない多くの要素が存在しているということを理解することができます。
子どもたちの行動を適切に理解し、適切な支援を行うためには、このような背景にある要因を見極めることが不可欠です。

自閉スペクトラム症のある人は、日常生活の中で他人との適切な距離感を自然と身につけることが難しい場合があります。
通常、人々は無意識のうちに適切な距離を保ちながらコミュニケーションを取りますが、自閉スペクトラム症の人は、このような社会的スキルを自然に身につけるのが難しいです。
結果として、人との距離がうまく取れず、他人から誤解されたり避けられたりすることがあります。
彼らには、適切な距離感を明示的に教える必要がある場合が多いです。

また、自閉スペクトラム症の人は、特定の事柄に対して非常に集中する傾向があり、一度考え始めると他のことに気を向けることが難しいです。
例えば、特定の予定について何度も何度も尋ねる行動は、彼らがその予定に強く焦点を当てている表れです。
このようなこだわりの強さは、自閉スペクトラム症の特徴の一つです。

さらに、自閉スペクトラム症の人の行動を理解し支援する上で、親や支援者が避けるべき失敗として、禁止の言葉を繰り返す方法があります。

例えば、「ご飯の時はテレビは見ません」と何度も繰り返すことで、彼らの注意をテレビに向けてしまい、結果としてテレビに対するこだわりを強めてしまう可能性があります。
自閉スペクトラム症の人は、一つの物事に深く集中し、そのことから気を逸らすことが難しいため、このようなアプローチは逆効果になることがあります。

これらの行動の背景には、自閉スペクトラム症による特徴が影響しています。
そのため、自閉スペクトラム症を理解し、子どもたちの行動の背景を考えながら支援することが重要です。
親や支援者は、子どもたちの行動に対する一般的な解釈ではなく、自閉スペクトラム症の視点から子どもの行動を理解し、適切な対応をする必要があります。

特定の環境や時期により、ASDの子供たちが特別な困難を経験することがあります。
例えば、工事の音によって教室に入れなくなる、あるいは日常のルーティンが変わることによるストレスなどが挙げられます。
これらの状況は、子供たちが学校や家庭で適切な教育を受ける上で障害となることがあります。

具体的な事例として、学校の耐震補強工事による騒音が子供たちに影響を与えたケースがありました。工事の音によって教室に入れない子供がいた場合、その期間だけ別の部屋を支援学級として使うことが提案されましたが、この提案は一部の教師から理解されなかったため実行に移すことができませんでした。
これは10年ほど前の話で、当時は自閉症に対する理解が不十分だったためかもしれません。

さらに、自閉スペクトラム症の子供たちの行動には理由があり、その理由を理解し、適切な対応を行うことが重要です。
例えば、特定の活動や指示に対する困難、感覚過敏による不快感、体調不良などが、特定の行動の背後にある原因となることがあります。
また、子供たちが行動を通じて何かを伝えようとしている場合もあります。

自閉スペクトラム症の子供たちが直面するこれらの課題に対して、親や支援者は、子供たちが適切な方法で自分のニーズを表現できるように支援することが必要です。
これには、日常生活や学校生活の中での適切な環境調整、コミュニケーションの支援、理解と協力が含まれます。
親や支援者が子供たちの立場を理解し、適切な支援を行うことで、子供たちがより快適に生活し、学ぶことができるようになります。

子どもの発達においては、興味や関心の範囲を考慮することが重要です。
例えば、教育の現場では、子どもが自然と関心を持つような題材を取り入れることで、学習への意欲を高めることができます。具体的な教材として、「うんこドリル」という、子どもが興味を持ちやすいユニークな教材が人気を博したこともありました。。

しかし、子どもの興味や関心は個々によって異なり、特に自閉症の子どもの場合、一般的な教材が適していない場合があります。
このような状況では、子どもの特性や興味に合わせた教材の選定が必要です。
教材を選定する際には、子どもの反応を観察し、その興味に合った方法で学習できるよう配慮することが求められます。

子どもの発達においては、見通しを持つことも重要です。
見通しが立たない状況は子どもにとって不安を生じさせるため、家庭内でのスケジュールを明確にすることで、子どもの安心感を高めることができます。
また、医療や教育の専門家からの情報を得ることで、親自身も見通しを持ち、子どもに安心感を与えることが可能になります。

一方で、未定の情報は子どもにとって混乱の原因となり得るため、確定していない情報は慎重に扱う必要があります。
特に、自閉症の子どもとのコミュニケーションにおいては、情報の提示方法に注意を払うことが重要です。
不確定な情報は、そのまま伝えるのではなく、その見通しや予定が変更される可能性を含めて伝えることが望ましいです。

子どもの行動支援に関しては、予防と対処の2つの側面からアプローチすることが大切です。

予防法としては、日常生活において問題が発生しないような環境を整えることが重要です。
例えば、子どもがペットボトルを上手に開けられるようにするためには、親が開けやすいように事前に準備をするなどの対策が考えられます。

一方で、問題が発生した際の対処法としては、その場で子どもを落ち着かせることが重要です。
予防法によって問題の発生を減らし、問題が発生した際には適切な対処を行うことで、子どもの行動を支援することができます。

また、子どもの発達においては、家庭だけでなく、学校や療育園などの外部の支援も重要です。
支援者との連携を通じて、子どもの発達に適した環境を整え、子どもが安心して生活できるよう支援することが求められます。
親が自分のストレスを適切に管理し、必要に応じて支援者や専門家に相談できる体制を整えることも大切です。

以上のように、子どもの発達を支援するには、子どもの興味や関心、見通しを考慮し、予防と対処の両方の側面からアプローチすることが重要です。
また、家庭内だけでなく、外部の支援者との連携も大切です。これらの取り組みを通じて、子どもが安心して成長できる環境を整えることが、子どもの発達を支援する上での鍵となります。

今回で自閉症(発達障害)の理解シリーズは一旦おしまいです。
もし、詳しく知りたい内容がありましたら、コメント欄などからご連絡ください。

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