ABA(応用行動分析)について①概要

応用行動分析についてですが、これは発達障害の方の支援に有効な実践的な理論です。

行動分析学とは、20世紀に活躍したB.F. スキナーという心理学者によって始められたものです。

彼は、オペラントコンディショニングという学習理論を提唱しました。
1930年代には学問として確立され、多くの支持者と共に発展してきました。

最初はネズミや鳩を用いた実験を通じて、行動の法則を明らかにし、それを人間の行動改善に応用したものが応用行動分析です。
英語では "Applied Behavior Analysis" といい、略してABAと称されています。

ABAは、療育分野だけでなく、医療、リハビリテーション、教育、福祉、ビジネスマネジメントなど、幅広い分野で活用されており、今も発展している研究分野です。
行動分析学は、人間の言語や文化、社会問題に関する研究をも基に、理論的行動分析という分野も含まれます。

行動分析学の特徴の一つは、共通の法則とフレームワークで行動が理解できることです。
実験分野の研究者も応用分野の専門家も、現場で働く人も、同じ枠組みで行動を理解できる点は大きな特徴です。

行動主義は、スキナーの行動主義を含め、多様な形があります。スキナーの行動主義は特に特徴的で、彼の設定的行動主義に基づく学問体系です。

行動分析では、行動の原因として考慮しないものを3つ挙げています。

まず、内部の神経の働きを行動の原因としては考慮しません。
これは、生理学や脳科学で十分に研究されていますが、行動分析はこれを除外して、行動と環境の相互作用を研究しています。

次に、内部の心理的原因も除外します。
これは、メンタルや心を原因とする考え方ですが、行動分析では、やる気や心が弱いから行動しないというような説明をしません。

また、概念的要因、例えば才能や素質による行動の説明も除外されます。
これらは行動に対するレッテルに過ぎないとされています。

行動分析が重視するのは、環境との相互作用です。
行動の原因として考慮しているものが3つあり、第一が遺伝的要因です。
これは、人間が生まれ持った遺伝的な特性や制約を指します。
ただし、行動分析の主な研究対象は、環境との相互作用です。

第二に、過去の環境との相互作用があります。
例えば、過去にある道を歩いて犬に吠えられた経験から、次回は別の道を選ぶような行動を取ることがこれにあたります。

最後に、現在の環境との相互作用も重要です。
例えば、信号が赤で前に子供がいれば横断をためらうなど、目の前の環境が行動に影響を及ぼします。

行動分析では、行動を2種類に分類しています。一つはレスポンデント行動、
もう一つはオペラント行動です。

レスポンデント行動は、環境からの刺激によって自動的に起こる反応を指し、行動が起こるきっかけは直前の環境刺激です。

一方、オペラント行動は、環境に働きかけるために何らかのアクションを起こす行動です。
例えば、自動販売機を叩く、信号を無視して横断する、雨が降ったら傘をさすなどがこれにあたります。
直後の環境変化が将来の行動に影響を与えることになります。行動分析学では、レスポンデント(古典的条件付け、またはパブロフの条件付けとも呼ばれます)とオペラントについて主に研究されています。


以上、行動分析学の基本的な概念や原理について説明してきましたが、次に言語行動について解説します。
これは、言語を使った相互作用する行動を指し、スキナーはハーバード大学の教員時代に大学院生向けに講義した内容を基に、言語に関する理論を展開しました。

例えば、男の子が猫を抱こうとして、「痛いよ」と言ったとしましょう。
その場合、猫に対して影響を及ぼしているわけですが、これは言語行動と言えます。

ただし、男性が勝手に道端にいる猫を拾って抱こうとする場合、これは他者に影響を及ぼしていないので、言語行動ではありません。

つまり、

・言語行動の例(男の子が「痛いよ」と言う場合):

男の子が猫を抱こうとして「痛いよ」と言った場合、彼の言葉が猫に影響を及ぼします。
たとえば、猫がその言葉を聞いて逃げるかもしれません。この場合、男の子の言葉は猫の行動に影響を与えるため、「言語行動」と考えられます。

・言語行動ではない例(男性が猫を抱く場合):

一方で、男性が道端にいる猫をただ抱き上げる行動は、言葉を使っていないので、言語行動ではありません。
この行動自体は猫に影響を与えるかもしれませんが、言語を使っていないため、言語行動の定義には当てはまりません。

言語行動は、話し手の意図により環境にどのような影響をもたらすかによって、さまざまに分類できます。
これにはマンド(要求)、タクト(観察に基づく命名)、エコーイック(模倣)、イントラバーバル(対話)などがあります。
これらは基礎的な言語行動と言えます。
(今後の投稿で触れていきます)

また、オートクリティック(自己評価)などの二次性の言語行動もあり、これらは言語行動が及ぼす効果を調整するものです。
例えば、文法的な正確さや言葉遣いなどがこれに該当します。

この他にも、ルール制御コード(行動を促したり抑えたりする言語刺激)や関係フレーム理論(シンボル間の関係性に基づく理解)など、行動理論の発展により、従来の理論の不足を補う道具が整ってきています。

次に、自閉症支援におけるABA(応用行動分析)の歴史について話したいと思います。
1930年代にスキナーによって発展された行動分析学は、多くの基礎研究により進展しました。
その後、人の行動変容に応用され始め、多くの研究者がこの分野に関心を示しました。

最初に実践を行ったのは、アイゼンとマイケルという研究者で、彼らは精神病院の患者に対してABAを適用しました。
ナースステーションに頻繁に訪れ、用もなくインターホンでベルを鳴らす患者に対し、行動分析の技術を使って改善を図りました。
これがABAの始まりと言われています。

その後、アメリカとカナダを中心にABAが広まり、中南米、日本、ヨーロッパなどでも普及しました。

1968年には「Journal of Applied Behavior Analysis」というABAの学術雑誌が創刊されました。
ABAの特徴には、応用的、行動的、分析的、技術的、系統的、効果的、汎化的などの要素があります。
これらの特徴を持つことが、ABAとしての基準となっています。

日本では、ABAは1960年代から発展し始めました。
当時、行動療法として知られていたABAは、スキナーの理論以外にも様々な心理学の成果を取り入れ、現在では認知行動療法とも関連づけられています。

ABAの発展には、多くの日本人研究者も関わっており、日本でも多様なABAの応用が行われています。
現在、ABAは地域生活における機能的スキルの習得に重点を置いており、生活の中で実用的な技術の獲得が目指されています。

2000年代以降、英米の潮流を受けて、個人から組織や集団を対象にする方向にABAが発展しました。
言語や認知の理論も進展し、さまざまな分野での臨床が発展しています。
多くの人々がアメリカで学び、日本に帰国して大学や企業で活動しています。

次回以降、内容を詳しくお伝えしていけたらと思います。
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