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所得税シリーズ〜不動産所得〜収入計上時期

 今日は不動産投資の確定申告をする上で最も重要な要素である収入の計上時期についてです。税務調査においても金額が大きい項目から調査をしていくため、どの業種であっても基本的に収益計上の適正性というのは最も重要なものと考えられます。

原則定められた支払日に収益計上

 収益計上日はいくつかありますが、多くの方は賃貸借契約を締結する際に、「毎月○○日に銀行から引き落とし」や、「月末までに翌月分を貸主の指定口座へ振り込むこと」等支払い日を定めているかと思います。
 したがって、これらの場合ならそれぞれ「引き落としがされるべき日」「月末」が収益計上日となります。
 注意しなければならない点として、定められた支払日なので、口座の残高不足で引き落としができなかったり、借主が振り込みを忘れていて入金がなかったとしても、その定められた支払日が収益計上日となります。
 なお、不動産の貸付を事業的規模で行なっていて、継続的に記帳を行なっている等の場合には前受未収経理という、期間に対応した収益(毎年12ヶ月分の家賃収入を計上する)計上を行うこともできますが、毎月を支払日と定めている場合であれば上記原則の方法とこの経理方法を採るか否かでほぼ収益計上額の差は生じません。
 他方、第三者間ではまずないかと思いますが、特に支払日を定めずに貸し付けているような場合には、実際に支払いを受けた日となります。

 以上のとおり、月々の家賃収入の計上時期については税法を読まずとも普通の感覚どおりのため、あまり悩むことはないかと思います。

 なお、所得税法の問題集に取り掛かると不動産所得の収入の論点として、家賃の増額について争いがある場合の計上時期というものをよく見るのですが、あまり出くわさないことでしょうからここでは割愛します。
 ちなみにその問題の設例として、「5万円の家賃から7万円に増額する旨を通知したことによって訴訟中で・・・」というような「そりゃいきなりそんだけ家賃を上げたらそうなるだろ!」と心の中でつっこんでしまうようなものが多いです^ ^

敷金・礼金・保証金の収益計上時期は?

 続いて賃貸借契約開始時に受領する各種金銭についてです。これらは、その名目によってどう処理するかではなく、「いついくら借主に返すか?(返さないか)」によって判断します。
 まず礼金は、賃貸借契約開始時に借主から貸主へ「部屋を貸してくれるお礼の意味合いで渡されているもの」ですから、借主へ返さないものです。そのため、賃貸借契約開始日の収益として計上します。

 一方、敷金、保証金についてはその契約による取り扱いで次のように処理します。
①賃貸借契約終了時に原状回復費用への充当分を差し引いて返還する契約の場合
 最も多いパターンかと思いますが、この場合返還を要しないことが確定した日にその原状回復費用相当額を収益計上します。この返還を要しないことが確定した日とは実際に敷金から賃借人が負担すべき原状回復費用が確定した日となるので、遅くとも工事業者から請求を受けた日がこれに当たるものと考えられます。

②貸付期間に応じて返還しない額が増加する契約の場合
 テナントの賃貸借に多いですが、1年経過ごとに敷金や保証金の3%を償却します(=返還しません)という契約がなされている場合は、その償却の都度償却分を収益計上します。

収益計上額は再確認を!!

 税理士を使わずに確定申告をされている方は特に収益計上額が適正かどうか提出前にもう一度よく確認しましょう。通帳への振り込み入金額で計算していたところ、よくよく後で見直したら「支払いが遅れて翌年入金になっていた」なんてことはよくある話です。
 たかが1ヶ月遅れただけでも、税務調査においてその収入計上漏れが把握された場合、その計上漏れによって納付すべき税額に過少申告加算税として+10%税負担が増加することになります。
 「私は税務署の職員に手伝ってもらいながら申告をしているから大丈夫!」と思っている方もいるかもしれませんが、税務署はあくまで提出してきた資料を基に申告書を作成する手伝いをするだけなので、わざわざ「12月の収入が1ヶ月分少ないですよ?」と親切に資料を吟味してくれることはまずありません。
 更に言うと誤指導を受けて申告してしまっても何も責任をとってくれません。この点については裁判例を見てみても税務署有利な判決が数多くされています。
 このテーマはまた税金雑学シリーズで取り上げてみたいと思います。

 今回は一般的な収益をテーマにしましたが、次回以降はもう少しマイナーな点も取り扱っっていこうと思いますので、是非ご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^


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