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法人税シリーズ〜少額減価償却資産の損金算入で注意すべき4つのポイント!②

 今日は前回の続きで、少額減価償却資産の損金算入の適用に当たり注意すべき4点のうちの残り2点です。


注意点3:資本的支出には使えない

 「30万円未満の減価償却資産になら適用できるということは、20万円以上30万円未満の資本的支出(ソフトウェアの仕様の大幅変更、スタットレスタイヤへの履き替え、グレードアップしたカーナビ(埋め込み式)への交換等)も減価償却資産を新たに取得したことになるため、同じように適用できるだろう」と考えてしまうかもしれませんが、この点は通達で資本的支出は本特例の適用対象に含まれないことが明記されています。


(少額減価償却資産の取得等とされない資本的支出)措通67の5―3 
法人が行った資本的支出については,取得価額を区分する特例である令第55条第1項((資本的支出の取得価額の特例))の規定の適用を受けて新たに取得したものとされるものであっても,法人の既に有する減価償却資産につき改良,改造等のために行った支出であることから,原則として,措置法第67条の5第1項((中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例))に規定する「取得し,又は製作し,若しくは建設し,かつ,当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産」に当たらないのであるが,当該資本的支出の内容が,例えば,規模の拡張である場合や単独資産としての機能の付加である場合など,実質的に新たな資産を取得したと認められる場合には,当該資本的支出について,同項の規定を適用することができるものとする。


 この趣旨は、資本的支出は既存の資産の価値を膨らませるものである=既存の資産ありきの支出のため、要件である「取得したもの」には当たらないということです。そのため、後段においては実質的に新たな資産を取得したと認められる場合は除かれていますが、基本的に資本的支出は対象外となるため、特に車関係や内装関係への支出にはご注意ください。

注意点4:長期的に見てどちらがお得か?

 この特例を適用するにあたり、「今年は去年に比べて税金が増えてしまいそうだな〜。よし、少額減価償却資産の特例を使おう!」と、経営者自ら意識して適用する方と、無意識に適用されている方の2パターンがあると思います。後者は会計事務所に記帳も依頼しているような方だとその傾向が強いかと思いますが、いずれにしてもこの特例を適用する上で「本当にこれを適用した方がお得??」ということを考えるべきです。

 正直、会計事務所任せにしていても、30万未満の減価償却資産の適用がベストか否かというのことをわざわざ考えずに、10万以上30万未満なら一律この特例を適用してしまっている処理をよく目にしますが、この処理を行うにあたり少なくとも次の二つを意識した方が良いです。

①当期の所得金額
 本特例を適用しないでも当期の所得が欠損(赤字)である場合は、この特例を使うべきかどうか一度立ち止まって考えるべきです。たまたま当期赤字で来季以降再び黒字の予測が立つならそのまま適用してしまって問題ないですが、翌年以降もしばらく赤字の見込みであるような場合で当期に全額赤字を計上してしまうと、その赤字分はその年から10年間しか繰越しができないこととなってしまいます。そのため、このような場合には本特例を適用せず、通常の耐用年数で減価償却をしていく方が赤字の繰越をできる期間を延ばすことができるため、長い期間を考えればこの方がお得ということになります。

②10万円以上20万円未満の資産の場合
 かなり限られた金額の幅ですが、この金額の範囲内の減価償却資産を取得した場合には、その取得価額を3年間で償却(費用化)できる「一括償却資産の損金算入の特例」という別の特例との選択適用ができます。
 「3年間での費用化よりも全額費用にできた方が良いじゃないか!?」とも見えますが、実は3年間の償却の特例を適用した場合には、償却資産税がかからないですが、全額費用にできる特例を適用した場合には償却資産税がかかってしまうという差があります。

 3年間での費用化か、全額費用化か、の差というのは基本的に税金の支払いを”少し後回しにするか早めに支払うか”の差でしかないため、総額に影響はありません(税率の境目に差し当たっている場合は総額が変わりますが)が、償却資産税の対象になるかならないかによって、支払う税金の総額は当然変わってきます(更に償却資産税はその資産を保有している限り基本毎年かかり続ける税金です)。

 償却資産税の税率は1.4%なので、税負担としては極めて少額になりますが、誰しも無駄に税金は払いたくないですよね。

 そのため、この価格帯の減価償却資産を取得した場合には、まず当期の所得が税率の境目に差し掛かっているか否かを確認し、差し掛かっていないなら3年間での償却を選択することがベターです。


最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^




 

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