メイドカフェ


ラブホテルは高いな。
それでも安いホテルだったが、
もってたお金は全部なくなった。

お金が全部なくなっても、そんなことは心配にならなかった。


そんなこと気にならない程にびっくりしたんだ

静かさに。


キャリーバッグを適当に置いてすぐベッドに寝転んだ



天井を見上げながら、

静寂がある



罵倒も聞こえないし、誰にも怒られない‥!
奇跡みたいで1人、久しぶりに笑った

自由だ!

天国だとおもった

そんな天国も明日にはすぐ
モ○ゲーで知り合った女の子の紹介で、日給、食事付きのメイドカフェで働く生活になる。






店長は
ロリコンだった。


私は履歴書を書いて渡したがパットだけ目を通してニコっとした。

すぐ名前を決めて、渡されたメイド服に着替え
言われた通り店長の隣に座った。


「これを見ろ」
モニターを指差しながら、
こんなふうにメイドが並んで挨拶するんだと、


セリフ、歌、振り付け、を覚えるようにといわれた。


色んなメイドの先輩達がいた。

ピアスが口に空いていたり、髪が赤かったり、
何歳か分からない人だったり、年齢も幅広かった。

まだ16の私は店長に大分可愛がられた

大体はメイドカフェは18歳以上からが支流だが、店長は言わずもがなロリコンだからすぐ採用してくれた。

のちに中学生を雇って店は摘発される事になるんだけど


まぁその話はいいか。


そのメイドカフェは、外でビラ配りと称した客引きをする。

自分が声を掛けたお客さんが店に来ればポイントとなり、総計と人数ポイントが時給にいくらか反映される給与システム。


太いお客様を引いた子は、
1日3〜4万持って帰っていた。

まぁそんなのは稀で、
だいたい1日働いて平均10,000円くらい。

いろんな席について、アツい日は20,000円とか。


これだけ聞くとどんなやましい仕事なんだって
思うかもしれないけど、あくまでも健全だった。

ちょっと違うのは、
メイドはお客さんのソファー席に座る事ができ、

お触りはNG、カードゲームやジェンガをして、
メイド対お客さんで勝負をする。

お客さんが勝てば席についてるメイド全員のチェキが無料になる。


メイドが勝てば、まぁそれは高い
「ハッピーセット」と称したメイドへの食事が
おねだりされる。

あくまでも「おねだり」だが、
非日常の空間でゲームし盛り上がった後、
断るのもなかなかシラケる‥というのを上手く使った店長のシステム戦略だ。

大体の人はおねだりを聞いてくれた。


出勤さえしてればその日ホテルに泊まるには困らなかったんだけど、
自分の部屋を借りるために早くお金を貯めたかった。



元々女子と仲良くしてもらえるタイプではなかった私はメイドカフェでもはみごだった。

それでも頭の良い子は、店長のお気に入りだからって仲良くしてる風にしてくれたので、客席でハブられて困ることはなかった。


それでも
ボス猿みたいな先輩に目をつけられ、
呼び出された。


理由は、先輩の客引きの席で
5名客のうちの一人にメルアドを書いた紙を渡されていたのを目撃したというもの。


お客さんの見送りをした後、裏に戻るとすかさず捕まり、すごい剣幕で怒られ泣いた。

ボス猿先輩、それはそれは怖かったよ

だって口を開く間もなく怒鳴り続けるんだもん

キッチンに立っていた店長が声を聞いて、急いで止めに来てくれた。


わたしはまた
店長の隣に座っているだけの時給泥棒になった。

やりにくいんだよ、店長の近くにいると。
他のメイドと仲悪くなるし、
こんなに年上のおじさんと話すことなんて無い。


上手く店長に取り入ろうとする知能もなければ、おべっか使える程コミュニケーション能力もなかった。



特別可愛いわけではないが
メイド服は似合うのか
お客さんのウケはそこそこ良かった。

代償に着替え中にちょっと置いたケータイを隠されたり、
椅子に置いていたカバンの上に座られたりと
裏では散々だった。


わたしは全て、動じないフリをしていた。

そこで泣いても、
何も始まらないと思った。

「強くならなきゃ」

ただそれだけ思った。

稼いだお金を持ってキャリーケースを転がし、
今日泊まるホテルへ向かう。

観光客が増えてきていたので同じホテルには
泊まれず、だけど店長の案でもう少し安いビジネスホテルに泊まるようになった。

どうしても部屋の空きがない場合は
別のホテルを目指してキャリーケースを転がした。



「いつか部屋を借りる。
猫脚家具で揃えて、クローゼットには
お洋服でいっぱいにする。」



これだけを毎日ホテルの中で思ってた。

食事は毎日コンビニで、出来る限りサラダとか摂って過ごしていた。


かくいう私はまだ16歳そこらでビラ配りはしんどかった。

いかにもチェックのシャツをインし、
どデカ黒リュック(缶バッジ付き)オタクに
声を掛け、ビラを渡すも目の前でビラをビリビリに破かれ、頭から放たれる。

夕方暗くなってくると半グレみたいなのが怒鳴り散らしてきたり

対人に関する知能が著しく低かった私は
お店のシステム説明をするのが難しく、

自分で引いたお客さんは自分で
システム説明できなきゃいけなかったから、
その度やめたかった。

良いお客さんばかりじゃなく、
なめられて言った言ってないの問題になったり。


ホテルに帰ったらやっと泣いてた。



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