ジャニーズ事務所の終焉について思うこと。

今年は芸能界では自殺とか心中未遂とか物騒なことが立て続けに起こった。
おかげで気持ちが沈むような日々であったように思う。

先日行われた記者会見で事実上のジャニーズ事務所、終了が公となった。

一つの時代が終わったのだなぁ、と思った。

ここまでの騒ぎになったきっかけはイギリスのBBCが
「社長が未成年者への性加害してた」ってことで
国際的に問題が公になったことが、きっかけとされているが
実際にはもっと用意周到に追い込まれたように思っている。

いまにして思えば、今年の7月20日で
20年ちかくにわたり使用されてきた
JR東海道新幹線ではTOKIOの「アンビシャス ジャパン」
の車内放送が
使用終了となったあたりから、すでに

それなりに大手の会社らには
「ジャニーズ、つぶれるから」っていうのが
既定路線として周知されていたのではないか?
と個人的には思っている。

それにしても、たかだか半年前までは
キムタクとかキンキキッズが普通にマクドナルドのCMに出ていたのに
今回の騒動でマクドナルドですら「任期満了をもって契約更新しない」
旨を表明している。これには驚いた。

コンビニにいくと必ずある雑誌「週刊テレビジョン」も
1年を通してほぼほぼジャニーズ事務所のタレントが
表紙をかざっていたのに、それもなくなった。

どうしてこんなことになったのであろうか?

直接的なきっかけとしては、亡くなった前社長の
「ジャニー喜多川氏による未成年の性的虐待」が原因とされるが
それは単なる要因の一つにすぎないと私は考える。

こうなった原因は大きく3つ
1「売れる」タレントを発掘できる人がいなくなった
2タレントを養成できる人がいなくなった
3仕事をとってこれる有能なマネージャーがいなくなった

この3点につきるのではないかと思う。

1「売れる」タレントを発掘できる人がいなくなった

これは亡くなったジャニー喜多川氏を知る人らが皆、口をそろえて言っていることだが彼が人を見る選択眼というのは天才的なものがあったらしい。

芸能界にデビューしたところで3年たっても残ってるのは100人中2,3人というのが当たり前の世界において、彼が「この子は売れる」と指摘した子は本当に売れる、それも驚異的な的中率の高さで、というのがあった。

どんなにハンサムでも
どんなに歌がうまくても
どんなに踊りがうまくても

売れない人は売れない。

一方で、一見すると「なぜこの人が?」という人が大スターに化けることも
芸能界では多々起きる。

この違いは「もって生まれたスター性」、これに尽きるわけだが
これに関する目利きという点で、ジャニー喜多川氏は
やはり天才であったというしかない。

代わりになる人材がいない以上、彼が亡くなったら次世代の「売れる」アイドルを発掘していくのは、もう無理なのだ。この時点で、「あぁ、もうダメかもわからんね」という話となる。

2タレントを養成できる人がいなくなった

ジャニーズ事務所というのはジャニーズジュニア、というデビュー前の子たちが大勢いて、その子たちが歌や踊りのレッスンをしながら鍛えられて、さらにその中のえりすぐりの子たちがデビューするわけだが、

その育成能力がすでに崩壊してしまっている。

ジャニー喜多川氏が生前に後継者としてタッキーこと滝沢氏を指名したとき
正直「だいじょうぶか?」と思ったし、「なぜ彼なのか?」とも思った。

が、今にして思えばジャニー喜多川氏はタッキーの「育成能力の高さ」に期待していたのだろうな、とわかる。

事実上、解散となってしまうキンプリなんかは久々の正統派ジャニーズアイドルと呼べるグループであり、滝沢氏プロデュースのグループである。

あの路線で滝沢氏がジャニーズ事務所に残留していれば、一時的には低迷することがあったとしても次世代の人気アイドルグループがでてきていたであろうと推測される。

が、滝沢氏はジャニーズ事務所を去った。
では滝沢氏に代わって新人を育成できる人がいるのか?となると
居なかったわけである、この時点で芸能事務所として
ジャニーズ事務所は「詰んだ」わけである。

3仕事をとってこれる有能なマネージャーがいなくなった

これについてはスマップのマネージャーだった飯島氏の事に注視すればほとんどの問題が見えて来る。

実のところ、スマップが解散した時点で今のような状態になるのは時間の問題であった。

スマップといえば国民的アイドルグループと言ってよいと思うが、デビュー当初は全く売れていなかった。いつリストラされて解散させられてもおかしくない状態であった。

スマップのデビューより数年前にジャニーズ事務所には光GENJIというグループがいて、それはそれはもう売れていた。売れていた期間こそ短いが「瞬間最大風速」としてみた場合、ジャニーズ事務所で一番売れたのは光GENJIだったといっても良い。「正統派の王子様系アイドル」として爆発的な人気を誇っていた。

光GENJIとデビューまもないスマップとでジョイントコンサートが行われると、客席にいるほとんどは光GENJIのファンなわけで、せっかくの大舞台なのにスマップが出てくると拍手もしない、声援もおくらない、あげくの果てには客席から「かーえーれっ!かーえーれっ!」とブーイングされる始末であった。

その後のスマップの活躍ぶりを知ってる今の我々からしたら信じられない話だろうが、スマップにもそんな苦難の時代があったわけである。

マネージャーとして見た場合の飯島氏の凄いところは
大きくわけて3つ挙げられる

1ジャニーズなのにバラエティーもできる、という方向で売った
2関西のお客さんを味方につけることに成功した
3比較的年齢層が高めのファンをゲットした

これに尽きる。

1ジャニーズなのにバラエティーもできる、という方向で売った

ジャニーズのアイドル、というのはスマップ以前までは
「白馬に乗った王子様」系の二枚目、というのが当たり前であった。
とにかくカッコよくなければならなかった。

バラエティーというか、お笑いというのはジャニーズ事務所のタレントからしたら「汚れ仕事」であり「ダサくてカッコ悪い」という認識が暗黙の了解としてあった。いつでも「キリッ」としていて「カッコいい二枚目」というのがジャニーズのタレントの存在意義だったからである。

なのでスマップがバラエティー路線で出てきた時は衝撃的であった。

「ジャニーズのタレントなのにバラエティーもできる」というのは何より新鮮味があったし話題性もあった。

のちに彼らの代表的な番組となるスマスマことSMAP×SMAPなんかの采配は絶妙である。

ヘタをしたら「ヨゴレ仕事」というか「ダッサい」とレッテルを貼られかねない「お笑い」とか「バラエティー」のお仕事はリスクがあるけれども、それを逆手にとって「お笑いもできる親しみやすさ」という強みに変えていったのがスマップであった。

バラエティーで笑いを取って三枚目みたいなことをやっていても
歌のシーンになると、そこはトップアイドルとして
ビシっと二枚目としてのカッコよさをキメてくる、みたいなのが
すごく新鮮だったわけである。

今はもう番組が終了してしまったけれどもフジテレビの昼番組「笑っていいとも」で中居くん、香取くん、草薙くんが出ていたのは皆さんご存知かと思う。昼のバラエティー番組、しかも生放送にレギュラーで出るって本人らからしたら修羅場の連続だったとは思うのだけれども、見事にそれを乗り切って、お茶の間の人気者へスターダムを駆け上っていったのがスマップである。それまでのジャニーズ事務所のタレントとは全く異なる売り方であった。

2関西のお客さんを味方につけることに成功した

まずはこれを見てほしい


たしか、この曲でSMAPはオリコン初登場1位をはじめてゲットした、と記憶している。1994年なので、もうほぼほぼ30年前だな。

「へい へい おおきに まいどあり
商売 繁盛 ナニワの あきんどや」

という歌詞は当時、かなり衝撃的であった。

なぜならば、それまでのジャニーズ事務所のタレントというのは、たとえ関西出身であっても東京弁で話し、「東京のカッコいいお兄ちゃん」という売り方をするのが鉄則であったからである。大阪の方言で歌うだなんて言語道断の時代であった、といってもよい。

そういったこれまでの慣習をぶっ壊したのがこの曲であった。

実は関西と関東とでは客の求めるものが微妙に異なる。これはあらゆる業種に言えることだけれども。どっちが優れている、ではなくて「異なる」のである。

ジャニーズ事務所のタレントが「関西仕様」で「関西人向けのマーケティング」してきた、というのは当時の関西人たちからしたら良い意味で衝撃的であった。スマップのこういった戦略に対して関西の人々は熱烈に歓迎した。

なにより、関東人と関西人との違いとして
関東、特に東京の人は流行しているものに対して、流行っている間はワーっと飛びつくけども、それがいったんすたれてきたとなると、ワーっと引いていく、熱しやすく冷めやすいという性質がどうしてもある。

一方で
関西人、特に大阪人は義理人情に篤い人たちが多い。普段は排他的なんだけども、いったん、仲良くなって「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと言える間柄になると驚くほど面倒見の良い人が多い。

そして芸能という仕事で見た場合、これは固定客がつく、ということになる

「近寄りがたいようなシュッとした二枚目」ではなくて
「親しみやすくて、けど大事な時はカッコよくキメてくる」という
スマップの売り方はまさに関西のお客さんにとってはうってつけであった。

・関西のお客さんには東京とはちがう「関西仕様」で商売する必要がある
・関西のお客さんを固定客にもつとマジで強い

ということを初めて気づいて実践したのがスマップであった。

そのあとキンキキッズが出てきて大成功し、現在にいたるまでつづいてきてる関ジャニこと関西ジャニーズジュニアとかも、もとはといえばスマップがきっかけであった。

3比較的年齢層が高めのファンをゲットした

スマップ以前までの時代、ジャニーズ事務所のタレントのファン層は
小学生、中学生、高校生が中心であった。
一部のコアなファン層の人は別として大学生とか社会人になっても
ジャニーズ事務所のタレントの熱烈なファンです、とかなると
冷ややかな目で見られる時代であった。

実際、「キラキラした白馬の王子様系」のキャラでそれまでは売り出していたのでしかたのない部分もあるのだけれど。

スマップはこのやり方をぶっ壊した。

フジテレビのドラマで「ロングバケーション」という伝説的なドラマがある。

視聴率30%超えとか、驚異的というしかないドラマであった。

脇役に当時、旬の連中を根こそぎ捕まえてきて登用し
当時、一番、視聴率の取れる女を脚本家に登用し
そして、オバケ番組となった。

もう25年以上昔の話になるけども
バブルが崩壊したとはいえ、都内はまだ
バブルの残り香があった時代であった。

アラサーという言葉すらなかった時代
女で
around 30 つまり「30歳前後」
で独身というのは

「行き遅れ」とか
「負け組」とか
そういうレッテルを貼られる時代であった。

そういうアラサーで独身、仕事も行きづまっていて
いろんな意味で崖っぷちのオンナ、を
山口智子がヒロインとして演じ

才能は有るんだけど内気でイマイチなんか
はっちゃけきれていない年下の
イケメン、をキムタクが演じた。

これは時代の趨勢、あるいは要請に見事にこたえて
爆発的なヒットとなった。

話を繰り返すが、それまでは
ジャニーズ事務所のタレントのファンというのは
小学校、中学校、高校あたりまでが中心で
大学生とか社会人になっても
ジャニーズのタレントのファンです、というのは

正直、ドン引きされる対象でしかなかったのだけども

あのドラマあたりから
潮目が変わってきたように思う。

「30歳過ぎ、独身女ですけど、キムタクのファンです」
といっても
「あー、ロンバケよかったよねー、共感したわー」で
話が盛り上がる、みたいな感じになった。

同時並行で
「笑っていいとも」にレギュラー出演してるメンバーのおかげで
街の、大阪でいったら40歳すぎたお好み焼き屋のオバちゃんが
「香取くんのファンやねん」と公言しても
なんの違和感もないようになった。

この功績は大きい。

そうこうしてるうちに月日はたち、
「中学、高校時代はスマップのファンでした」という女性が
結婚適齢期に入り、結婚し、家庭を持ち、子供ができて

「今は娘と一緒に毎週、スマスマみてます」
「今度のスマップのライブ、娘と一緒にいきます」

という世代になってきた。
世代をまたいでここまで広範に
母娘で応援されるアイドルグループというのは
あとにもさきにもスマップだけであろう。

解散前のスマップの時代、
私の住んでいる場所の土地柄、近くに
大阪ドーム(京セラドーム)があるのだけども

スマップのライブ、

土曜日曜月曜の三連休
金曜の夜の部からスタートして
3日間ちょいで
32万人動員した

と聞いた時は度胆を抜かれた。

チケット代が約1万なので
32万人だとその売り上げだけで
32億円!である。

くわえて、ライブ会場限定のファングッズとか
売ってるから実際の
経済効果はそれ以上であろう。

まぁ、一番、スマップがイケイケだったとき
だったせいもあるんだろうけど
それにしても
あれは凄いと思った。

あれはスマップのメンバーらの努力と
マネージャーとしての飯島氏の
尽力によるものだと思う。

けど、そんなスマップも解散してしまった。

仕事とってこれるグループとマネージャーを
追い出してしまった時点で
ジャニーズ事務所というのは
命運が尽きた、と思っている。

一時期は
「事務所はスマップが稼いだカネで嵐を売り出してる」
とか陰口たたかれてた時代もあったけど、

その嵐も事実上、解散状態になってしまった。

男女ふくめて「アイドル」という商売は
日本国内だともうダメなのだと思い知らされた。

1975年生まれ、48歳の
私の学年はだいたい200万人ぐらいいる。

今の18歳人口は100万人を切ってる。

2022年度の出生数は80万人を切った。

つまり、
市場のパイとしてすでに半分以下に縮小していることになる。

仮に自分の通ってる小中学校で
クラスの全員が
どこかのアイドルのファンだったとして
それでクラスの全員が
そのアイドルのCDなり買ったとしても

それでも売り上げはおそらく
私の世代の半分以下
という世界である。

これが少なくともあと30年は続くのが
統計上わかっている。

そうなると、もうこれはビジネスとして成立しないんじゃないか?
と正直思う。

今回の一連の騒動で

「ジャニーズ事務所の性的虐待」というのは
確かにダメなことなんだけれども

これさいわいとばかりに
ジャニーズ事務所を糾弾して
正義の味方ヅラしてるマスコミ連中にも
ほとほと嫌気がさす。

「おまえら、むかしっから知ってて何もしなかったじゃん」
「忖度して見て見ぬフリしてた連中が何を偉そうに」

というのは正直ある。

韓国のことわざに

「川に落ちた犬は棒で叩け」
というのがあるそうだが

今おきていることはまさにこれであろう。

もうジャニーズ事務所のタレントをCM出演させること自体
地雷あつかいになってしまったので
これからジャニーズ事務所の解体は一気に進むであろう。

ひとつの時代が終わったのだと
ひしひしと感じた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?