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ミッドサマー 感想


事前情報でさんざん脅されてたのでかなり覚悟して観た。心の準備があったからなんとか耐えられたけど、何の情報も無ければちょっとしたトラウマになるのは確実。

とにかく見たことないタイプのホラーで新鮮。陰鬱な雪の夜から始まるオープニングからホルガ村の白を基調とした画面の対比が美しい。ヘルシングアイランドへ入る車のカメラが反転してく不安感に車酔いしそう。


明るく神聖な感じがするのに厭な予感がみしみしと首をもたげてくるホラーのバランスが新しい。で、厭な予感がしてくわりにはクライマックスのシーンが大破局という風に映らなかったことに衝撃をうけた。成るべくして成った、神聖でおごそかなものに見えるのが素晴らしいと思う。

現代の感覚では残酷で異常な村人ということになるのだろうけど、異文化ということを加味すればこの村では普通の営みとして受け入れるのが可能かも、と思えそうなのは音楽や絵作りなど演出の凄さ。村人が直接的に何か危害を加えるシーンがないので、違和感を感じつつもどこか清潔で暴力の臭いがせず邪悪さを感じない。日本の土俗ミステリや民俗ホラーだと、演出上こうはいかないと思う。

むしろ村の人間そのものより壁画や絵の方に忌まわしい予感を感じる。野辺に差す白い陽光と花飾りで彩られた画面と併せて、この情報の見せ方はホラーとしてとても新鮮だった。ショッキングなシーンそのものよりも、予感やサブリミナルさせる長尺の方が何倍も怖い。ジェットコースターの上り坂のように。

いわゆる因習村ホラーを題材にしてるのに、全く新しい体験をさせてくれて感謝さえ感じる。まあかなりグロいけど。グロいけど、スプラッタ部分は一応事後のモノが多いのでなんとか耐えられた。飛び降りのシーンも「え?その部分はどうなってるの?」くらいの好奇心が湧く程度にはアップや直接的に映る秒数を絞ってるしね。

ショッキングなシーンではあるし、過激な絵ではあるけどそこまで下卑た悪意は感じないというか。悪趣味のおしつけにはならない程度に抑制が利いてて、スプラッタながら品は良くて好ましいと思う。覚悟なければトラウマになると思うけど。この省略は革命だと思うし、素晴らしいバランス感覚。

緻密に作り込まれた世界観といい、ストーリーやキャラクター造型、美術コンセプトといい傑作。鑑賞後に考察サイトを読むのが楽しい映画。


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