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「キノの旅」1巻感想文

このシリーズはキノというとある美少女(?)が世界の国々を飄飄と巡りながら色んな人に出会い、自分を知っていくストーリーです。私がこのシリーズに興味を持ったきっかけはアニメ版を観たことです。アニメ版で描かれたやや哲学的な内容でどことなく物寂しい感じのする雰囲気が気に入って原作であるラノベを読むことにしました。自由に旅をするキノとエルメス(キノのバイク)の生き方にもちょっぴり憧れて本格的に原作を読み始めました。だって、近頃の人々は仕事や勉強といった責任で雁字搦めになっているじゃないですか。世間体など気にも留めず自由奔放な旅を楽しむキノとエルメスの生き方はとても素敵なものだと思いました。それとキノが訪れる国ごとに、いつも物議を醸しそうな、後味の悪い事件が起こりますが、私はこういうハッピーエンドばかりじゃないストーリーを好むので、とても楽しく読ませていただきました。そんな波乱万丈なキノの旅の話を、いくつか解説しながら感動したこと、もしくは疑問に思ったことを述べていきたいと思います。

「人の痛みが分かる国」— I See You. ー

この国では、家の外で人を見つけるのが困難です。その代わりに、入国審査からレストランの営業まで含む全ての仕事を担当してくれる機械たちが国を運営しています。キノは滞在3日目でようやく機械の修理をしていた人を見つけ、国で何があったか、どうして人が一人も出歩いていないのかについての詳しい話を伺いました。修理工から詳しい話を伺ってみたところ、数年前に全国民が脳を改造して他人の心が読めるようになる手術を受けることに賛成したということがわかりました。確かにこの手術は革新的でこの国の国民たちは進化を遂げましたが、それと同時に国に波紋を呼びました。最初の何日かはみんな自分たちが得た新たな能力に感嘆してましたが、時間が経つにつれ、国のあちこちで喧嘩が勃発し、挙句の果てはみんな家に引き籠ってしまう始末でした。

人の心を読む力を身につけたいという願望は誰もが一度は考えたことがあるでしょう。でも果たしてこれは人々にいい影響を与えるでしょうか、それとも悪用しようとする人が増えるでしょうか。この国の場合は、「他人に伝えたくない思い」まで他人に伝わってしまい、「進化」だと思い込んでた能力が却って人々の間に軋轢を来しました。私も他人の心が読める力は悪用する方法が多いと思うから人類には必要ない能力だと思います。ストーカーに頭ん中除かれて、住所もばれて神隠しでもされたら嫌ですからね。

「多数決の国」ー Ourselfish ー

昔、この国は一人の王様によって支配されていました。だがその王様は貪欲で、国民の福祉など一顧だにしなかったです。積もりに積もった国民たちの憤りはやがて最大限に達し、結局国ではクーデターが起こりました。王様は国民たちに捕まる前にそうそうと逃げる支度をしましたが、それも焼け石に水ですぐ見つかりました。その後、古くからのしきたりに従って王様は磔に逆さに吊るされて家族とともに処刑されることになりました。王様が処刑された後、一人に全ての権限を与えるのはリスクが高すぎると悟った国民たちは王制を廃止し、全てを投票で決めることに賛成しました。
民主国家になった国で人々は国の制度から子供たちの教育に至るまで、すべてのことを投票を通してともに選ぶようになりました。最初は順風満帆だったものの、多数決の意見に反対する者が出始め、国の脅威と見なされた彼らは磔刑に処されました。
過半数の意見に賛同できない人たちは次々と現れ、処刑されました。一万三千六十四回目の死刑が行われたとき、国にはもう二人の国民しか残っていませんでした。皮肉なことに、一人の王様の横暴を止めるために、大勢の国民が犠牲になったわけです。
どうせ国民全員を満足させるのは現実的じゃないし、多数決で物事を決めるより、投票で新たな王様を選んだ方が国のためだったかもしれないと私は思います。多数決で決めたことから少しずれたことを思ったからといって人を処刑にするのは過酷すぎて愚かだと言わざるを得ません。国民たちは前の勝手気ままに振舞ってた王様の二の舞を演じるのを極力避けたかったのでしょうね。

キノちん

「大人の国」ー Natural Rights ー

この章は過去編で、ミステリアスだったキノの素性の一部分が露になります。キノの本名がキノじゃなかったという事実も公表されます。この国(キノの母国)の子供たちは12歳の誕生日を迎える日に代々続いてきた不明の手術を受けることが決まりでした。手術の詳細は不明ですが、宗教的な儀礼であるかのようにこの国の国民たちはこの手術におかしいほど執着していました。過去のキノももちろん例外ではなく、この手術を受ける予定でしたが、キノという旅人が過去のキノの国に訪れて、彼女の未来は自分で決めるべきだということを彼女に吹き込みました。旅人(キノ)の影響で過去のキノは手術を受けずに自分の未来は自分で決めるという意志表明を両親にしました。でも彼女の話を聞いた両親は彼女を肯定してあげるどころか激怒し、他の国民たちと一緒に彼女を虐げました。旅人は身を挺して過去のキノが自分の母親から殺されるのを防ぎましたが、その場でナイフで刺され、死んでしまいました。異端者の烙印を押された過去のキノは旅人のモトラド(キノの現在のバイク)に乗って国民たちに殺される前に国から無事に出られました(危機一髪でした)。それを契機に過去のキノは旅人の名前だった「キノ」に名前を改名し、当てもない路上生活を始めました。

キノとエルメス

以上がキノが旅を始める前の人生の話の一部です。疑問に思ったことは多数ありますが、その中でも一番気になるのはキノの母国で行われていた「手術」の詳細です。大人になるために必要な手術っていったいなんなんだろう。どうして国民たちは手術に対して何の疑問も持たず自分の子供が殺せるほどその手術に執着しているんだろう。一つの仮説としては町長が子供の「大人になるための手術」の際に洗脳に必要なものを脳に入れるんです。それだと手術を受けた大人たちが手術を拒否する子供たちを平気で痛めつけられる点も納得がいきます。なんで手術を受け入れるように人々を洗脳しなくちゃいけないか訊かれたらそれまでなんですけどね。。

あともう一つ疑問に思ったことは現在のキノの高い戦闘能力です。まだろくに成長もできずに国から追い出されたキノが自給自足の生活で生き延びたという点も驚きですが、彼女の非常に高い戦闘能力もまた驚きです。多分彼女をここまで育て上げた師匠が存在するのでしょう。師匠の存在はまだ小説に登場しませんでしたが、「コロシアムー Avengers ー」章でのキノの戦いっぷりからして自分一人で習得した戦闘能力だとは思えません。今のキノのカリスマ性と貫禄を作った過去の話が楽しみです。

では、2巻を読み行きます。ばいばい

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