【第14回】アフリカ歴訪の成果と意義は何か 政治情勢を常に注視せよ‼

 西村康稔経済産業相は8月6~13日の日程でナミビア、コンゴ民主共和国、ザンビア、マダガスカル、南アフリカ、アンゴラの6カ国を訪問したが、その成果は何か。また、日本がアフリカ支援をする意義とは何か。

 アフリカ経済の将来を占うときに気にかかるのが「資源の呪い」だ。これは、天然資源があるというが経済成長にとって祝福というより呪いだとする考え方だ。

 イギリスの経済学者リチャード・アウティは、豊富な資源が経済発展に結びつかない原因として、①資源に依存して他の産業が育たないこと、②資源確保の為過度な開発が進み、土地が荒廃すること、③資源確保を巡る内戦や政治腐敗が起こること、④資源の富が宗主国に吸収されることを挙げている。

 アフリカでは紛争の長期化及び深刻化がよく問題視されているが、その多くの要因は資源だ。例えば「紛争ダイヤモンド」という言い方もされるが、ダイヤモンドは国際市場で高価で取引されるため、しばしば代金が武器購入に充てられる。資源を目当てに紛争も起きやすくなるが、資源を支配する者は紛争を継続しやすいのである。

 今では「資源の呪い」を克服する手段も考えられている。例えば、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)がある。これは、他産業が育たない弊害を防ぐために、資源収入を別基金にすることだ。日本では、SWFが国家が財テクすることばかり取り上げられるが、「資源の呪い」を克服する手段でもあるのだ。

 世界を見るとSWFを設立している国はあるが、日本政府は行うべきではない。そもそも、政府が行うといっても、官僚は市場に関することに疎い。そのため、官は民間から専門家を持ってきて、官の組織で投資をする。これを官民ファンドという。

 しかし、投資に失敗した際の責任の取り方として、国民が納得する方法はまずない。このため、国がかなりの程度、関与せざるを得なくなる。となると、民間から来た人は不自由になって力が発揮できなくなり、結局失敗することになる。

 では、アフリカへの支援はどうしたら良いのか。それは、民間企業が投資しやすい環境を整備することだ。今回の西村経産相のアフリカ歴訪では、日本企業の代表者も同行して活発な意見交換が行われたので、その意味で成果を果たしたといえる。

 日本がアフリカ支援をする意義は、アフリカの経済発展を促し、その中で日本のアフリカ資源に対する国益を確保し、同時にアフリカの平和に貢献することだ。従って、アフリカ支援は継続していくべきである。

 ただし、注意しなければならないのはアフリカ諸国の政治情勢だ。例えば、コンゴ民主共和国は、電気自動車(EV)の電池に欠かせないコバルトを掘る時に子供の労働力を利用していることが国際問題となっている。今回の訪問でそれを改善することを現政権に求めたが、社会が混乱しているアフリカでは将来どうなるか分からないので、アフリカ国内の政治情勢を常に注視しておく必要があるだろう。

 

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