別れ、巡り 5

愛が眠った後、僕は目が覚めた。
口の中で血の味がして、錆びた鉄の匂いが鼻を満たした。
気持ち悪くなって、その場で吐いた。
纏わり付く血が気持ち悪くてシャワーを浴びた。
愛に申し訳なさはあった。
小学生以来に見た愛の肌には傷があった。
服で簡単に隠せる二の腕や太ももに刃物で切ったような跡が。
真新しい傷もあった。
ついさっき切ったようで、血が滲み出ていた。
消毒して絆創膏を貼って、血のついてない服を着た。
電気をつけて改めて見るとひどい有様だった。
両親は腹から大量に血を流して死んでた。
あんなに嫌だったのに、逆らうのが怖かったのに、呆気ない。
二人の身体を近くに寄せた。
僕の臓器や骨、余った肉をなるべくバラバラにして家中にあるだけの油をまいて火をつけた。
愛が僕のことを生かしてくれた。
両親を殺して、僕を食べてくれた。
そうして一つになれた。
愛は僕のことを自分の妄想だと思ってるらしいけど、僕は愛の妄想なんかじゃない。
愛の中で生きられている。
愛が食べてくれたおかげで血肉として巡り続けられている。
僕たちは一緒に生まれたんだ。
だから、死ぬまでずっと一緒。
こうしていたらその約束も果たせるね。

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