別れ、巡り 終

「愛だめだよ。怒られちゃう」
「いーの。怒られるのは私だけだから。これ。見つけたの。あげる」
「四つ葉の、クローバー?」
「今は一緒にいさせてもらえないけどいつかここ出よう。そして二人で生きるの。死ぬまで一緒!ね!」
「……うん!」
今日もまた両親に怒られる。
母さんは料理をしながら僕を呼びつけた。
もうすぐ愛が塾から帰ってくるから。
「いい加減死んでよ!愛だけでよかったのに!出来損ないのおまけなんて要らないの!せめて……せめて親孝行くらいしなさいよ」
「僕が死んだら親孝行できる?」
母さんは一瞬固まって、今までで一番大きな溜息をついた。
「……そうね。私たちが望んでたのは愛だけよ。私たちはあんたなんて大嫌い」
「……僕は好きだよ。母さん、父さん。愛を生んでくれてありがとう」
僕が両親に初めて言った本音だった。
僕の両親は素晴らしい人だった。
だって愛を産んだんだから。
僕は今までも僕なりにいろいろしてきたつもりだった。
初めてのテストで愛の点数が低いと、両親は愛にたくさんの勉強ドリルを買った。
愛は泣きながらやっていた。
愛は勉強が大嫌いだった。
好きになろうとはしていたようだけど。
次から僕が点数を落とすと、両親は今度は僕にお金を使った。
それはそれで嫌だった。
好きなことに使えば良いのに。
だから渡された問題集もしなかった。
「勉強しなさい」とか言われるけど勉強なんて教科書を読めばある程度できる。
趣味も特になかったし、学校と生活費以外でお金のかかることは特になかったと思ってる。
なのになんで両親が不機嫌なのか分からなかった。
小学生、中学生だしできることは限られてるから何をすれば親孝行になるか、僕に必要以上のお金を使わないか、考えても考えても答えは出なかった。
何をして欲しいか聞いてもできることしか、やってることしか言わないし。
でもようやく分かった。
なんだ簡単なことだった。
僕は包丁を取り出して首を掻き切った。
「ばいばい」
(ごめんね。約束守れなかった。)
あんなこと思ってたのにまさか生きられるとは思わなかった。

「僕はまだそっちには行かないよ」
愛に生きていて欲しいんでしょ?
死ぬまで生きて二人で逝くよ。
だから待っててよ。
地獄の底で

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