不整脈専門医試験の受験資格を得るまで

不整脈専門医を取得しようと思う方へ受験資格の取得までを解説します。特に論文業績がまだないという方は読んでいただければ参考になると思います。
受験資格取得には(1)不整脈認定施設での研修期間(2)症例レポート(3)学術活動の3つの壁があるのでそれぞれ解説します。症例数についてはCVIT専門医と異なり非常に少なく、アブレーションやデバイスは助手でもよいためクリアできない方はいないと思います。このほかにも学会所属年数や推薦などの条件もありますが普通は問題にならないので省きます。

(1)不整脈認定施設での研修期間

初期研修を含まず循環器を専門にしてから5年ではなく、学会のQ&Aにも書いてある通り実は初期研修を含めて5年です。不整脈認定施設で初期研修をしていればあとは3年間研修施設で働くだけで要件をクリアできます。大学病院から派遣され不整脈研修施設以外で働く先生もいると思いますので、この条件は知っておいた方がいいです。

以下学会のホームページから引用
Q.現在の所属は学会認定不整脈専門医研修施設ではありませんが、過去に学会認定不整脈専門医認定施設で研修していれば受験資格はありますか?(2014年4月21日修正)
A.研修医時代も含めて合計5年間、学会認定不整脈専門医研修施設において条件を満たす研修をしていれば受験資格としてみなされます。また、この場合の学会認定不整脈専門医研修施設とは、現在日本不整脈心電学会が認定している研修施設、または、過去に両学会が認定していた研修施設(ただし、研修歴が受験資格とみなされるのは研修施設認定終了日までの期間です)を指します。

(2)研修レポート

特殊な症例は要求されませんが、考察が書ける症例は限られると思います。症例は少ないためそこまで気にする必要はありませんが、病院が変わるとレポートを書くのが大変になるため、転勤する場合は意識しておきましょう。
抗不整脈薬についてはガイドラインで適応外使用について言及してるように、レポートでも適応外使用の症例を出してもそれだけで落とされることはありません。きちんと考察してあれば大丈夫です。アブレーション、デバイスに関しては学会発表で使用した症例を使えば楽できるので、必ず発表データは残しておきましょう。
レポートで落ちたという人は聞いたことがありませんが、きちんと内容まで確認されているため、同じ疾患、治療薬を大量に書くなど極端なことはしないようにしましょう。

(3)学術活動

これが一番ハードルが高いと思います。虚血や心不全をメインでやっているけど不整脈専門医も取りたいという先生の多くはこの条件で引っかかります。また、不整脈を専門にしていても論文業績がなく受験できないという方もいると思います。
学会活動については5編以上とありますが、詳しくはfirst authorで1点、second authorで0.5点で合計5点以上あればクリアできます。書類審査は1次、2次、最終審査の3段階ありきちんと内容が確認されているため、重複した演題で水増しするのは止めましょう。症例発表でもよいため頑張ればクリアは難しくありません。不整脈系の学会は演題を出したらほぼ通ります。
不整脈学に関する論文発表が最も厄介ですが、筆頭著者でなくてもいいため大学病院やハイボリュームセンターで周りが論文を書いてくれればgift authorでクリア可能です(本当はgift authorは業績の水増しになるため禁止されています)。論文を投稿する場合はPeer-Review Journalであることは要求されますが、日本語、英語は問われないため不整脈学会の心電図や心臓財団の月間心臓に出すのも手です。
以下の内容はこれから原著論文を書こうという意欲を挫くような内容ですが、専門医試験を受けるのであれば出願までに確実に通す必要があるため知っておいた方がいいです。原著論文は以下に書くように非常に大変なため、原著論文を書くほどの意欲があるのであれば確実に通る日本語論文やcase reportも並行して書くことを勧めます。
一番の問題として原著論文を英語で書いても採択まで非常に時間がかかります。完成したら指導医に見てもらいそのあと部長や教授に見てもらいようやく校正に出すため、この時点で1週間以上かかります。さらに投稿しても査読に2週間程度は時間がかかりますが、そのままacceptされることはほとんどありません。普通はrevisonとなりますが、査読者の指摘には一つ一つ答える必要があり、場合によってはデータの再収集、統計のやり直しもありうるため簡単には訂正できないこともあります。訂正しても論文を再度指導医、教授に見てもらい、再び校正に出して投稿、査読になるため合計すると非常に時間がかかります。訂正が1回で終わらないこともよくありるため順調にいっても採択まで数か月かかります。impact factorがついている雑誌は採択率が高くないためrejectされることもよくありますが、同時に複数の雑誌に投稿することは厳禁とされているため、rejectになってから次の雑誌に投稿する必要があります。余裕をもって出願の1年前には論文が完成していることが望ましいです。revisionで直しても結局rejectになる可能性があるため、確実性を求めるなら並行して日本語雑誌に出しましょう。教授が日本語雑誌への投稿は許さないという医局もあるかもしれませんが、その場合はCirculation journalやJournal of cardiologyのcase reportにすると採択率が高く査読もあるため条件をクリアできます。英語の原著を書く場合は各大学が発行する雑誌も投稿先として考えておきましょう。査読がある上で採択率が高いです。ほとんどの大学雑誌ではimpact factorがありませんが掲載をあきらめるよりはましです。大学雑誌は部外者は投稿できず推薦を必要とするため、医局に属していない先生は早めに大学、医局とのつながりを作っておきましょう。
英語で論文を書けばどこか通るだろうという甘い考えは止めた方がいいです。ただの観察研究ではどこにも通らないということはよくあります。執筆しても大学教授や一部の病院の様に論文を何本も書いているような人に指導してもらわないと良い雑誌に通すことは極めて難しいです。
日本語雑誌の場合でも受験前年の秋までには投稿しておきたいです。採択さえ決まっていれば雑誌が発行されていなくても出願は可能です。

不整脈専門医はCVIT専門医よりも学術業績が必要とされ、一番大きな障壁になるので、参考にして頂ければ幸いです。

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