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探究学習のマインド形成 3

 主体的に行動するためには動機が必要です。
 生徒主役の学びの実践について教員側には動機があります。しかし、生徒さんにはありません。「先生に言われてやる生徒主役の学び」では…。

◆参考にしたもの
 小林先生、西川先生、本間先生の本を読んだり、セミナーに参加したりしました。ワークショップデザインやファシリテーションのあり方を学び、生徒主役の学びの概念をつかみ、その目的とするところの理解ですね。
 また、現場ではどのように実践しているかの情報も集めました。
 いろいろ調べていると「何のために学ぶか」の再確認から始めるパターンが多かったです。その中で参考になったのは、たとえば「古典を学ぶ意味とは」について、古典の担当教員が自分の言葉で生徒さんにプレゼンするというもの。これは私立の中高一貫校での実践でしたが、ここで気づいたのは「教員側の自己開示とそのことによる信頼関係の構築」ということ。
 後々勉強を進めてわかることですが、「問いの設定」を教員・生徒のどちらがどのレベルで行うかにもセオリーがあるわけで、「導入段階では教員が問いを示すこと」でよいのですね。そして「教員が、問いに対する答えを言語化し自己の主体性を導くものを明示する」というハードルを自らに課すことで、「あり方(be)」を再構築するという仕掛けになっていました。
 そういえば、西川先生も「教師の自身のあり方」を繰り返していました。確かに、「自身のあり方」が定まらない状態で「方法・手法(do)」だけを模倣した実践は、確実に行き詰ります。

◆マインド形成は教員側にこそ重要
 しばらく後になりますが、いわゆる探究学習への取り組みが職員室で議論になります。その際、「それでは大学受験に対応できない」「知識がない状況で対話・議論は進まない」などの反対意見には根強いものがありました。アクティブラーニングの負の側面も可視化されてきていましたし、生徒さん・保護者さんからの否定的意見も多かったです。
 21世紀型スキル・IB・思考コードなどの学習理論よりも、自らの経験則が発想の根拠になるのはやむを得ないですね。国公立に何人合格させるかがノルマとしてのしかかる現場の現実において、探究で偏差値あがるの?という不安を感じるのは私も同じです。
 また、一般入試至上主義のような発想も強く、入試は勉強で合格するが合言葉。国公立を増やすにはセンター試験の得点力を高めるのが効果的という現実もあります。推薦は逃げ、志望理由書・小論文は「それなりに書けていればよい」「担任と国語科の業務」というのがサイレントな価値観。
 そういう状況で「国語科」である私が探究学習に肯定的な意見を述べると、業務放棄・手抜きなどの冷たい視線を浴びることも。
 
◆とりあえず自分の力でできる範囲内のことをやってみる
 国語力という観点で生徒さんの課題を明確にと思いました。
 生徒さんの自覚は弱いが、実は大きな問題になっていることです。
 それは、やはり「文章を正確に読み取る・理解する・論点を把握する」という結論になりました。たとえば、小説の登場人物が読み取れない状況の生徒さんも少なくありません(一応進学校です)。評論も同じ。
 そこで、たとえば「羅生門」の内容について選択肢を20作り、選択肢個々の内容が本文に対して正しいか、誤っているかを問う問題を作りました。
 20分で本文を読み解答したら、ペアで解答を見せ合い、解答が異なる部分を見直してもらう。ペアで納得できなければ他のペアと相談しても、多人数のグループで相談してもよい。そして正解の発表~自己採点と進みその点数を平常点としました。本文を正しく理解する能力ですね。
 また「単元テスト」も実施しました。これは教科書準拠の定期テスト素材を活用。最初はクラス平均が50%程度でしたが、半年続けると80%近くに上がってきました。格好良く言えば「客観的な読み取り」「事実を根拠とした考察」の能力が高まったと言えます。ただ実態は「主観的な思い込みや、先入観に基づいた結論ありきの考察」を修正したにすぎません。

◆ところでこれは探究学習なのか??
 ここまでの実践は、それなりに効果がありました。
 しかし、議論~創造という道には進みません。
 要するに「正解のある問い」に対し、「みんなで正解を出すことで、個人の正解率も高まる」という状況に過ぎないのです。
 生徒主役でもなく、主体的な思考力の育成でも…ないですね。
 ただ、事実を正確に読み取る、事実を根拠として考察するという習慣は少し身に付いたようです。
 となると、次の段階をどうするかです。
 そろそろ、論理思考や構造化の段階に進んでもいいかもしれません。
 
 わかってきたのは、私自身のマインド形成が優先ということ。
 私の価値観を明確に言語化する、ただし私の価値観は押し付けない。
 そういう私自身のあり方を模索・構築するのが先。
 私自身のあり方が進めば、生徒さんの主役率・主体性も高まるということのようです。
                   もう少し続く

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