小説秋季限定栗きんとん事件の「栗きんとん」

私の好きな小説のひとつに小市民シリーズというのがあります。
中学生のときに停滞失敗をして周りから浮いてしまったこばとくんとおさないさんは、高校では小市民として生きることを誓い、そのためにお互いがお互いを利用試合関係を結びます。
春季限定ではお互いの隠している本性が現れてしまい、夏季限定ではお互いの関係に破綻があると感じ、離れてしまいます。
秋季限定では二人が別々に生活しながら、お互いの存在を改めて見つめ直すことになります。
こうして書いてみると恋愛小説のようですが、日常のなっぞ系のミステリーだと私は思っています。
書いているだけでまた読みたくなるすごーく楽しいお話です。
楽しいといっても心がヒリヒリするようなシーンもいくつもあるんですけどね。

このお話の中で、栗きんとんはひとつ大きな役割を果たしています。
くりを何度も裏漉しして砂糖と煮詰めて茶巾絞りされるのがこの栗きんとんです。
対比として、甘いシロップに何度もつけて甘くなるマロングラッセ。
栗きんとん方式では小市民になれないと悟ったおさないさんあ、秋季限定の中でマロングラッセ方式で小市民を目指すのです。
それは違った、ということで、最後はこばとくんと二人で栗きんとんを食べるシーンで終わります。

私はこの小説を読むまで、このタイプの栗きんとんは知りませんでした。
きりきんとんといえばおせちによく入っている、さつまいもの海を栗が泳いでいる日日のものしか知りませんでした。
一度、むき栗を裏漉しして砂糖と一緒に鍋にかけ、茶巾しぼりで作ってみましたが、今回は本物の栗きんとんを知りたいと思い、お取り寄せしてみました。
9月からは新栗で作ったものが出荷されていました。

食べてみて、こんなになめらかで、ほっくりして濃厚なものなのかとびっくりしました。
かなり値がはるのですが、完成するまでの様々な工程を考えると納得です。
岐阜を中心としたこの郷土菓子、新しい正解をまたひとつ見ることができました。

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