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卸業から小売へのシフトラッシュ

2020年の大晦日です。今年は誰にとっても変化が訪れた一年でした。年末はその年を振り返りながら次の年の事をあれこれと考え自問自答するのが習慣なのですが、大変な事というのは捉え方次第なので良い方向に動いていると信じて日々を過ごしています。

一歳を過ぎたロンロンは、身振り手振り色々な事を真似するようになり、目に入れても痛くないとか、男の子は3歳までに一生分の親孝行をするとか、世で言われる定説をしみじみと実感しております。じーじばーばが心の底から可愛がっているのを見ると良かったなあと思う毎日です。

さて、今日はこの一年を象徴するような一連の出来事の記憶を記して今年を振り返りたいと思います。

思い返せば年始一月にIJT (国際宝飾展) に行った時の事でした。お世話になっている業者さんのところで私の顧客様がルースを選んでいたんです。昨今はIJTも小売向けに広告を打って集客するようになっていたので解っていた事なのですが、それを目の前に私は話しかけることが出来ませんでした。

なぜならその業者さんから仕入れた石で仕立てたジュエリーを買ってくださった方だったからです。後から聞いたところ、他のデザイナーさんがIJTの買い付けをインスタに載せていたので、それを見て知って初めて来たそう。そのデザイナーが誰なのかも明確でした。業者名やブースも書いてあった訳ではないけれどその宝石だけを探して会場を歩き回ったそうです。

この顧客様は以前は SELSHA を含めて沢山ご購入いただいていましたが、その後すっかりご無沙汰となりました。実際は他にも様々な要素が重なっているのでしょうし、単にお客様の選択肢が増えただけですが、自分の感覚的には同業の方のSNSによって流される情報によってお客様が離れて行ってしまったと、いささかショックを感じるような出来事でした。

どこまでがトレーサビリティーと言えるんだろうか?お客様を喜ばせるためのコンテンツは、もしかしたら知らない誰かを困らせているんだろうか?そして何より選択肢が増えた時にも選んで貰える魅力が自分には足りなかったのだと痛感しました。

店主にそのお客様の話をしたら「何だ〜言ってくれたら値段変えたのに〜」と言われましたが、そんな会話は無かったかのように、数ヶ月後、今度はその業者さんが SNS を使って小売りを始めました。コロナで売り場や卸の売り上げを失ってしまったからでしょうか。もし自分が逆の立場でもそうしたかもしれません。事業をやっていたら背に腹は変えられない。沢山の新しい客層を得た一方で、きっと失ったお客様もいたでしょう。

これが今年の変化のスピードと、混沌とした過渡期を物語っている象徴的な出来事だったなと振り返っています。

タイとミャンマー、石流通の変化という記事を書いたのはちょうど2年前。その来るべき変化がコロナによって加速した一年でした。色々な点で遅れていると言われるジュエリー業界にとっては、お尻を叩かれるような良いきっかけだったとも思いますが、変化が早いと市場の透明性だけが先走ってモラルがついていかなかったり、D2Cブームのなかで卸業との境目が曖昧になってきたり、いろんなことが定まれずに渦巻いているような気がしています。

正直なところ、やっぱりそこからの仕入れを止めてしまいました。一度だけ客注の商品のために問い合わせをしましたが、「探してみます」と言ったきり連絡はなく、かと思えばSNS上でガツガツと売っている様子にすっかりと気持ちが冷めてしまって。元々国内での仕入れはあまりしない中での数少ない取引先でしたが、誰から買うかは私にとってとても大切です。

一方でこんな状況でも小売を選ばなかった業者さんもいて、なぜなら今までお取引きして来たデザイナーさんたちを大切にしたいからだと。実際その業者さんの石をSNSで見ない日はないほどデザイナーにも人気ですが、その気持ちもよくわかりました。

どちらが良いとは言えませんよね。未だに御徒町では”一見さんお断り”の張り紙を見ます。昔はそれを見てなんて時代遅れなんだと感じていました。そのころは海外仕入れしかしていなかったので日本の業者さんとのやりとりが無かったというものあり、今も若干そう思いますが、それでも今は彼らにも守っているものがあるんだ、と解るようになりました。さらに言えばこのコロナのような状況では顧客様以前に自分の会社を守らないといけないですからね。

日本に帰って来たばかりの時、個人のお客様が多いミネラルショーで作家がジュエリーを売り、その会場で仕入れもするというスタイルが不思議で仕方ありませんでした。誰から仕入れているのか、石の価格はどれくらいなのかがお客様にも一目瞭然だから。原価率が良いといわれ、付加価値が高いジュエリーは一般的にはコストをあまり見せたくないものです。

でも徐々にそれが ”透明性” でもあり、言ってみればフラットで健全なマーケットであると解釈出来るようになりました。好きな石を選んで好きな作家にオーダーすることを楽しんでいる方が沢山います。その時に選んでいただける理由を作れるかどうかが仕事。それがセンスや技術の人もいれば、信頼の人もいれば、人間性の人もいてそれぞれですが、ちゃんと理由がある。

翻弄される日々でその変化に対応できる答えを自分で見つけるのは至難の技ですが、変えてはいけない部分もあります。

そしてよく言われることですが、今の時代は買う側にも目利き力、自分自身の判断基準、本質の理解、が問われています。そんなことを考えていたら昨年の春の noteを思い出し、初心に返りました。

来年も新しいチャレンジが沢山あるので、ジュエリーと石を通して色々な問いかけが出来ればと思っています。今年お世話になった皆さまどうもありとうございました!

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2020.12.31  杉村 萌弥

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