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竹富のジーマミー豆腐

ちょうど一年前の今頃。
わたしたちは、新婚旅行で竹富島を訪れた。

「一週間もいて、何するの!?」

旅行で竹富島に一週間行くと話すと、大抵の人にはそう驚かれた。

竹富島は、石垣島からフェリーで10分のところにある小さな島。
半日あれば十分に観光ができるような場所だ。

これといった観光する場所もない島での一週間。

島を自転車でまわったり、八重島そばを散々食べたり、石垣島まで足を延ばしてマングローブカヌーをしたり、プールに入ったり。

せっかくだから島でしかできないことをやってみよう!
と、元気に動いた日はほんの少しで、それ以外はひたすら「何もしない」をした。

早起きして、散歩して、ちょっとサイクリングしたら、戻ってきておやつを食べ、夜は早く寝る。

この島にしかないゆっくりとした時間の流れ方に、せわしなく過ぎる毎日の中でトゲトゲしていた気持ちも、だんだんと鎮まっていった。

竹富島でのおやつは、「ジーマミー豆腐」。
宿の人が15時になると、ストウブ鍋でコトコト豆腐を作り始める。
毎日出されるので、欠かさず食べていた。

“できたて”のジーマミー豆腐に、黒蜜ときな粉をかけてデザート風にしていただく。もちもちでつるりと食べられる、きな粉と黒蜜をまとった飲み物のようなお豆腐だった。

自然で健康的な味。ほっと安心する味。毎日でも食べられるやさしい味。

ジーマミー豆腐のおいしさに病みつきになったわたしは、石垣島のコンビニでジーマミー豆腐を買い占めて、我が家に戻った。

家で食べるジーマミー豆腐はもちろんおいしかったが、あの場所で食べた、できたてのそれにはとても敵わなかった。

どこまでも続く透明なブルーの海、真っ青な空、琥珀色の夕日、漆黒の夜、キラキラ光る星たち、からりとした空気、部屋から見えるブーゲンビリア。

きっと、おやつのジーマミー豆腐と一緒に、島のあたたかくのんびりした空気をまるごと味わっていたのだろう。

ああ、竹富島で食べたあのお豆腐が食べたい。

不安の多い今だからこそ、余計にそう思う。
こうしている今も、きっと島にはほっとした空気が流れているのだと思う。

島の思い出は、いつまでもわたしの心を温める。

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